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第1回「日本トキシコロジー学会技術賞」を受賞/資生堂

資生堂は、動物実験に替わる新たな皮膚アレルギー試験法を東北大学と共同で開発するとともに、今回開発した試験法と、既に花王と共同開発した試験法を組み合わせることでアレルギー陽性物質の検出をさらに高感度化できることも合わせて確認した。この研究成果は、物質等による生物や環境への影響を研究する毒性学(トキシコロジー)の領域で権威のある日本トキシコロジー学会で評価され、7月12日、第38回学術年会(横浜、7月11日~13日)にて「第1回 トキシコロジー学会技術賞」を受賞した。なお、受賞者は、同社リサーチセンターの廣田衞彦研究員(品質評価センター)で、受賞テーマは「細胞表面―SH基を指標とした感作性試験代替法(SH test)」だった。

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従来、皮膚アレルギーを調べる試験法(皮膚感作性試験)では、皮膚アレルギーが極めて複雑な生体プロセスを経て発生するため、1つの試験法だけでアレルギーの有無を判別することが難しく、複数の異なった試験法を組み合せることが必要だった。

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そこで今回、これまでに花王とともに研究開発してきた皮膚感作性試験代替法(in vitro)を組み合わせ、従来法より格段に精度の高いh―CLAT(エイチクラット)法を共同開発した。このh―CLAT法は、国内外の研究機関より高く評価され、公的な国際標準の代替法として認証を受けるべく、現在、他の研究機関による検証試験(プレバリデーション)段階へと進行している。しかしながら、h―CLAT法を含め生体反応を完全に再現できる完璧な皮膚感作性試験代替法は確立されていないのが実情であったため、同社はh―CLAT法と組み合わせることによって、より感度の高い代替法を開発すべく、東北大学大学院医学系研究科皮膚科学講座(相場節也教授)と共同研究を進めた。

その結果、h―CLAT法と同じ培養細胞表面の特定部位(細胞表面タンパク質由来のチオール基)は、アレルギー物質で変化することを新たに見出した。この変化について、これまでアレルギーの有無が一般的に知られている50種を超える物質で検証したところ、今回開発した代替法(SH test)の検出感度は、h―CLAT法と同レベルの高さだった。さらに、h―CLAT法と組み合わせると、アレルギー陽性物質の検出感度は、さらに向上することを確認した。

今回の成果は、皮膚感作性試験代替法において「重要かつ有効な役割を担えるもの」(同社)であるため、今後、アレルギー陽性物質の検出感度向上とともに、アレルギー陰性物質を含めた評価全般の精度向上を図るべく研究を推進していく。

同社は、商品の安全性を保証する試験として、1980年代後半から動物実験代替法の研究開発に取り組んできた。これまで開発した代替法は、広く活用されるよう、国内外の専門学会で公表している。また、同社が保有する皮膚感作性試験代替法の特許については、代替法の研究の進展に役立ててもらうべく、2010年6月より国内でのロイヤリティ収入を日本動物実験代替法学会に全額寄付している。

今後も国内外の産官学と連携し、代替法の開発に取り組み、動物実験の廃止と安全性の両立をめざしていく。

2011年08月02日 15:47