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折れ曲がった形の糖鎖を可視化-糖鎖構造の揺らぎの理解へ一歩前進-/理化学研究所(理研)

鎖とは、最も単純な糖である単糖が数個、ときには数百個以上も枝分かれしながら連なった生体分子です。単糖の種類や数、並び方、枝分かれの違いによって、糖鎖にはとても多くの種類があります。生体内で、糖鎖はシグナル伝達、タンパク質の機能調節など、重要な役割を果たしています。

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図 バイセクト型糖鎖のモデル(左)、2種のレクチン糖鎖複合体の結晶構造(中)、折れ曲がり構造の模式図(右)

特徴の1つとして、糖鎖は柔軟な構造をしており、1つの糖鎖がいくつもの形をとることが知られています。つまり、形に“揺らぎ”があるのです。糖鎖の形は非常に速い時間スケールで相互変換しているため、これまで糖鎖の個々の形を実験的に正確に捉えることは困難でした。

理化学研究所を中心とする共同研究グループは、揺らぎのある糖鎖を「レクチン」と呼ばれるタンパク質と結合させることにより、揺らぎを止めて、折れ曲がった状態の糖鎖の形を可視化しようと考えました。糖鎖のモデルとして、タンパク質に結合する分岐型糖鎖の「バイセクト型糖鎖」を選びました。バイセクト型糖鎖は、タンパク質のアスパラギン側鎖に結合する分岐型糖鎖の1つで、2本の枝の分岐部分のマンノースにN-アセチルグルコサミンが結合しています。

バイセクト型糖鎖に特異的に結合するレクチンには、「Calsepaレクチン」と「E4-PHAレクチン」を使用しました。バイセクト型糖鎖を、それぞれのレクチンに結合させて複合体を作製しました。各複合体のX線結晶構造解析とNMR(核磁気共鳴)解析を行い、構造を調べました。その結果、どちらの糖鎖-レクチン複合体も、糖鎖の2本の枝のうちの1本の1-6アームと1-3アームが反対の向きを向いた折れ曲がった構造をしていることが分かり、原子レベルでの可視化に成功しました。

本成果は、形の揺らぎが糖鎖の機能に果たす役割を理解するための重要な知見になります。また、糖鎖がタンパク質の機能を調節するメカニズムの理解につながり、将来的には糖タンパク質を利用した医薬品開発に貢献すると期待できます。

【詳細は下記URLをご参照下さい】
理化学研究所(理研) 2016年3月23日発表
 理化学研究所(理研)ホームページ

2016年03月24日 12:51

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