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(研究成果) 多収でβ-グルカンが多い “もち性大麦(もち麦)”新品種「きはだもち」/農研機構

農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)は、「機能性成分」である水溶性食物繊維β-グルカン1)を多く含むもち性大麦(もち麦)2)の新品種「きはだもち」を育成しました。関東から東海地域向けの皮性3)の六条大麦4)です。多収で、オオムギ縞萎縮病5)に強い、穂発芽6)しにくい、倒伏しにくいという特徴があります。またもち性で食感も良好です。国産もち性大麦の生産拡大に貢献するとともに、もち性大麦を活用した町興しや、6次産業化によるもち性大麦の生産、加工、販売を中心とした地域農業の活性化に貢献すると期待されます。


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■ 概要
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食感が良く、水溶性食物繊維のβ-グルカンを多く含むもち性大麦(もち麦)の需要が急増しています。しかし、需要の急増に対して国内でのもち性大麦の生産量が圧倒的に不足しているため、現在、需要量の約9割が外国からの輸入麦で賄われています。消費者の根強い国産志向に応え、もち性大麦の国内生産の拡大を図るためには、病害に強く、従来の一般的なうるち性大麦と同等以上の収量を持つもち性大麦品種の育成が重要です。

農研機構次世代作物開発研究センターが育成したもち性大麦の新品種「きはだもち」は、大麦の重要病害であるオオムギ縞萎縮病に抵抗性を持つとともに、穂発芽しにくく、耐倒伏性に優れており、既存のもち性大麦品種と比べて多収です。また、もち性大麦品種の中でもβ-グルカン含量が高く、食感も良好です。

栽培適地は主に関東から東海地域の無雪地帯で、千葉県と栃木県内で栽培が始まっています。もち性大麦を原料とした各種製品の開発による町興しや6次産業化による地域農業の活性化に貢献することが期待されます。

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■ 用語の解説
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1)β-グルカン
直鎖状に連なったぶどう糖(グルコース)が規則的に分岐する構造を持つ多糖で、食後血糖値を上げにくくする、血液中のコレステロールの量を適正化する、内臓脂肪を減らす、便秘を改善するなどの機能性を持つことが、ヒトでの試験で実証されています。欧米などでは、1日当たり3グラムの摂取で効果があるとする健康強調表示(ヘルスクレーム)が認められています。日本でも大麦のβ-グルカンを関与成分とする機能性表示食品が市販されています。

2)もち性大麦
米と同じように、大麦にもうるち性ともち性があります。もち性大麦は、うるち性大麦に比べて、炊飯すると柔らかくて粘りがあって食感が優れており、β-グルカンもうるち性大麦の1.5倍程度多く含むという特徴があります。もち性大麦は日本でも古くから栽培されていましたが、数年前まではあまり注目されず、生産量もごく限られていました。

3)皮性
大麦には、穀皮が種子に貼り付いていて脱穀しても外れない皮麦と、貼り付いていないため脱穀時に容易に外れる裸麦があります。前者を皮性、後者を裸性と呼びます。「きはだもち」は皮性で、現在、関東地域でもち性品種として最も普及している「キラリモチ」は裸性です。皮麦・裸麦とも、麦ご飯などに利用されます。

4)六条大麦
大麦には、穂の形態によって六条大麦と二条大麦があります。穂の軸の片側に3つの穀粒が実るものが六条大麦、2つが退化し中央の1つのみ実るのが二条大麦で、穀粒は穂の軸に対して左右両側に実るため、穂を上から見ると、六条大麦では六列、二条大麦では二列が実っているように見えます。「きはだもち」は六条大麦で、現在、関東地域でもち性品種として最も普及している「キラリモチ」は二条大麦です。

5)オオムギ縞萎縮病
大麦の重要病害の一つで、土壌中に生息する原生動物ポリミキサ菌が媒介するウイルス病です。これに冒されると、葉にモザイク状の黄色い病斑が現れ、株が萎縮し、収量が大幅に減ります。土壌消毒では抑えることが難しいため、抵抗性品種を栽培するのが現実的で最も効果的な対策です。

6)穂発芽
穀粒が収穫前で穂に付いた状態のままで発芽してしまう現象のことで、穀粒の完熟後に穂が雨で濡れてしまうことで発生します。穂発芽のしやすさには品種によって差があります。穂発芽を起こした穀粒はでん粉が分解され、胚乳がもろくなり、搗精時に砕けやすくなるため、精麦原料として使用できなくなります。また、農産物検査では穂発芽した穀粒は被害粒に分類され、被害粒の混入が一定の割合を超えると、一等・二等に格付けされず、規格外になります。

7)精麦
大麦を食用とする場合、穀皮や糠を取り除くための精白が必要になります。大麦を精白することを搗精、搗精した大麦穀粒のことを精麦と呼称しています。大麦の穀粒は、皮麦の場合は穀皮が種子に貼り付いていることと、大麦の種皮は米に比べるとずっと硬いので、精米機では搗精することができず、やすりを回転させて穀粒を削る搗精機が必要です。

8)硝子率
大麦の硝子質粒、半硝子質粒、粉状質粒の割合のことです。粒を切断し、切断面を観察することで判定します。半透明で硝子状の部分が切断面の70%を超える粒を硝子質粒、30%以上 70%以下の粒を半硝子質粒、30%を下回る粒は粉状質粒です。硝子率(%)=(硝子質粒数+半硝子質粒数×0.5)/供試粒数×100で計算されます。硝子率が多いと精麦品質の低下につながると言われています。また経営所得安定対策における品質評価基準が定められており、一定以上になると生産者の所得に影響がありますので重要な項目です。

【詳細は下記URLをご参照ください】
農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構) 2019年11月11日発表
農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構) ホームページ

2019年11月12日 11:04

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