健康と美容のニュースなら健康美容EXPOニュース

ビールに含まれる「熟成ホップ由来苦味酸」が認知機能と気分状態を改善することを初めて確認/キリンHD、順天堂大

キリンホールディングス株式会社のキリン中央研究所は、順天堂大学医学部との共同研究で、物忘れの自覚症状を有する中高齢者対象の臨床試験においてビール苦味成分である「熟成ホップ由来苦味酸」が認知機能および気分状態を改善することを初めて確認しました。この成果は 2020 年 5 月 26 日(火)に国際学術誌「Journal of Alzheimer’s Disease」誌に掲載※1されました。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
■ これまでの取り組み
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
高齢化が進む国内において、認知症や認知機能低下は大きな社会課題となっています。また、ストレス社会においてメンタルヘルスに対するケアも大きな課題となっています。特に認知症は発症後の有効な治療方法が十分でないことから、日常生活における予防に注目が集まっています。

同社は 2017 年に東京大学との共同研究で、ビール苦味成分であるホップ苦味酸のアルツハイマー病予防効果を世界で初めて解明しました※2。さらに、多様な食品に展開可能な苦味質を抑えた独自素材の「熟成ホップエキス」を開発し、その中の成分である「熟成ホップ由来苦味酸」が脳腸相関を活性化することで認知機能改善および抑うつ改善作用を示すことを解明しました。また、「熟成ホップ」を起点として、ホップの力で健康課題を中心とする社会課題解決に取り組むために、2019 年に株式会社電通との合弁会社であるINHOP 株式会社を設立しました。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
■ 同研究の概要
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
同社は順天堂大学医学部と共同で、物忘れの自覚症状を有する健常中高年を対象にランダム化比較試験を実施し、「熟成ホップ由来苦味酸」の認知機能および気分状態への作用を評価しました。その結果、「熟成ホップ由来苦味酸」摂取群ではプラセボ摂取群と比較して、選択的注意機能およびストレスマーカーが改善することが確認されました。

<試験方法>
試験は、45 歳から 69 歳で認知機能低下の自覚症状(SCD)を有する健常中高齢 100 名を、「熟成ホップ由来苦味酸」を含むサプリメントを摂取する群(熟成ホップ群)およびプラセボ群にランダムに割り付け、12 週間摂取させる二重盲検化試験を行いました。摂取 0 週目および 12 週目に被験者の認知機能について、神経心理テストを用いて評価を行いました。ストレス状態については、唾液中のストレス指標を分析しました。

<試験結果>
熟成ホップ群では、摂取 12 週目の標準注意検査法※3 の選択的注意力※4 を評価する SDMT(Symbol DigitModalities Test)の正答率の結果が、プラセボ摂取群と比較して統計学的に有意に改善しました。(図 1)また、神経心理テスト後の唾液中に分泌されたストレス指標のβエンドルフィン濃度が熟成ホップ群ではプラセボ群と比較して 0 週目からの変化値が有意に低値を示しました。さらに、メタ記憶質問紙における不安感のスコアが熟成ホップ群ではプラセボ群と比較して低値の傾向を示しました。また、SCD 質問紙に基づく層別解析では、注意力以外にも、記憶力においても熟成ホップ群ではプラセボ群と比較して有意に改善しました。以上の結果から、「熟成ホップ由来苦味酸」の継続摂取は、中高齢者の認知機能の中で特に注意機能、ストレス状態や気分状態を改善することが明らかになりました。

※1
タイトル:
Supplementation with matured hop bitter acids improves cognitive performance and mood state in healthy older adults with subjective cognitive decline
タイトル(日本語訳):
ビール苦味成分である熟成ホップ苦味酸の摂取は、主観的認知機能低下の症状を有する中高齢者の認知機能および気分状態を改善する;ランダム化二重盲検比較試験
著者:福田隆文 1)、大沼徹 2)、小原有晶 1)、近藤澄夫 3)、新井平伊 2)、阿野泰久 1)
著者所属:1)キリン 、2)順天堂大学医学部、3)医療法人健昌会
DOI 番号:10.3233/JAD-200229

※2
タイトル:
Iso-α-acids, Bitter Components of Beer, Prevent Inflammation and Cognitive Decline Induced in a Mouse Model of Alzheimer’s Disease.
著者:阿野泰久、堂畑厚志、谷口慈将、星朱香、内田和幸、高島明彦、中山裕之
雑誌名:Journal of Biological Chemistry
DOI 番号:10.1074/jbc.M116.763813.

※3 日本高次脳機能障害学会が作成した、言語性の記憶機能を評価するための

【詳細は下記URLをご参照ください】
キリンホールディングス株式会社  2020年6月2日【PDF】発表
キリンホールディングス株式会社  公式サイト
順天堂大学  公式サイト

2020年06月03日 16:50

関連記事