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「たかがヒザ痛」の意識が招く、なりたくない老後

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「ひざが痛い」。中高年以降の方なら一度は、そう感じたことがあるのではないだろうか。実際、有症レベルで780万人、X線レベルでの変形性膝関節症ではその患者数は2,350万人にも及ぶ。もはや国民病といいっていい状況である。年齢とともに増加することも調査で分かっており、40歳をターニングポイントにその数は急上昇する。

研究開発型の製薬企業、生化学工業(東京都千代田区、水谷建社長)がひざの痛み悩む40歳以上の男女1,034人を対象に「ひざの痛みへの対処法・満足度実態調査」を実施している。それによると「痛くても病院にはいかない」と応えた人が80.2%。その多くが「我慢する」、「市販の湿布を貼る」など、自分なりの対処法で済ませていることが判明。さらにその対処法を選んだ理由について「なんとなく」が60.8%を占めた。

調査では、階段の上り下りや立ち上がりに不便を感じる(79.9%)ものの、生命の危険があるわけではないこともあり、軽視されている傾向が浮き彫りになっている。しかし、たかが「ヒザ痛」と軽くみていると、後で大きなしっぺ返しを食うことになる。高齢社会で問題となる介護の主要な原因のひとつとして「骨折・転倒」、「関節疾患」の割合が21.5%にも及ぶというデータが、厚労省の調査で判明しているのだ。

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内臓疾患などについては、誰もが大病を心配してかナーバスになる。一方「ヒザが痛い」ことで自分の身を案じる人はあまりいない。上記アンケートのように「我慢」できるからだ。一般的なヒザ痛では、動いたときに痛みが生ずる。従って、ヒザ痛になった人は、徐々に痛みを回避すべく運動量が減っていく。実は、この運動量の減少が、「ヒザ痛」をさらに加速させていくことになる。

ヒザ痛が起こる主な原因は、年齢、肥満、性、運動不足など。中高年ほど増加するのは、年を重ねるほどに筋力が落ち、運動量が減り、体重が増加し、ひざに負担がかかる、という悪循環に陥りやすいからだ。一度なってしまうとそうしたサイクルから逃れるのは困難となるため、軽いうち、出来れば発症前からキチンと食事管理や定期的に運動を行うなどの、自己管理が重要となる。

日本大学総合科学研究所・龍順之助教授は「ヒザ痛は進行すると歩行に障害が出て介護が必要となる疾患。この疾患は、ヒザの軟骨が磨り減り、ヒザに炎症が起こるもの。一度磨り減った軟骨は復元しません。早期であれば、筋力トレーニングや日常生活の改善で症状回復が期待できます。より充実した生活を送るためにも、ひざに痛みを感じたら専門医の診断と治療を受けることが重要です」とアドバイスする。

専門医によるひざの治療には、いくつかの種類がある。軽症の場合は、内服や外用の消炎鎮痛薬、温熱や運動、装具による理学療法がある。そうした中で注目されているのが、ヒアルロン酸注射による治療だ。簡単にいえば、変形性膝関節症時に関節液中で減少するヒアルロン酸の分子量・濃度を注射により補うことで、低下したひざの潤滑機能を補い、炎症を鎮め、痛みを緩和する。

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近畿大学医学部奈良病院整形外科・リウマチ科の宗圓聰教授は「自己対処で進行してしまった患者をみると“なぜココまで我慢したんだろう”と残念でなりません。市販の湿布や飲み薬などで症状の緩和も出来ますが、ヒアルロン酸の関節内注射にはヒザ関節の軟骨を保護し、病気の進行を遅らせる効果も期待できます。ひざが痛いと感じたら自己対処で済まさず、初期の段階から医師と一緒に症状に合わせた適切な治療を行っていく気持ちが大切です」と専門医による治療の重要性を説く。

「たかがヒザ痛」の考えは、重大な認識不足。それくらいの意識の見直しを行い、「ヒザ痛」=「生活習慣改善のサイン」という心構えで、専門医の声にも積極的に耳を傾け、ヒザが悲鳴を上げない体作り・健康づくりに取り組む姿勢が、健康長寿への確実な“処方箋”といえそうだ。

2011年02月28日 17:53