
腎神経を不活性化させるカテーテル治療(腎除神経renal denervationと呼ばれる処置)が、治療難治性の高血圧患者に有用であることが、新しい研究によって示唆された。研究は、米オーランドで開かれた米国心臓病学会(ACC)年次集会で発表されるとともに、医学誌「Lancet」オンライン版に3月30日に掲載された(印刷版にも掲載予定)。
高血圧症患者は世界人口の約30~40%を占め、うち約5~10%が治療抵抗性といわれる。腎臓を支配する交感神経系の活性亢進は、慢性腎疾患や心不全と同様、高血圧の進行と関連している。オーストラリア、モナッシュMonash大学(メルボルン)のHenry Krum氏らは今回、治療抵抗性高血圧患者45人を対象に研究を実施した。
治療抵抗性高血圧は、利尿薬を含む降圧薬を3種類以上服用しても、収縮期血圧(最大血圧)が160 mmHg以上の場合と定義。患者の一部に"経皮的高周波カテーテル法"を施行し、最長1年間の追跡調査を実施した。治療では、大腿動脈(腹部/大腿部)からカテーテルを挿入し、腎動脈に誘導し、腎神経がある位置まで前進させた後、高周波エネルギーを用いて神経を分断(焼灼)する。
研究の結果、治療前の平均血圧177/101mmHgは、治療後1、3、6、9、12カ月においてそれぞれ、-14/10、-21/-10、-22/-11、-24/-11、-27/-17mmHg降下した。非治療群の血圧上昇の平均は1、3、6、9カ月でそれぞれ+3/-2、+2/+3、+14/+9、+26/+17mmHgであった。
Krum氏らは「優れた安全性のプロファイルが示された。長期の有害事象(イベント)はみられず、既存の複数の降圧薬に抵抗性を示す患者の血圧が大幅かつ持続的に降下した。血圧降下は1カ月ほどでみられ、3カ月後にはさらに降下し、その後、評価期間中それが持続した」と述べている。
Lancet誌の論説著者である米ジョージ・ワシントン大学(ワシントンD.C.)のMichael Doumas博士とギリシャ、アリストテレス大学(テッサロニキ)のStella Douma博士は「さらに研究を重ね、この治療の価値が証明されれば、薬物療法が失敗した場合や忍容性の低い場合において、これら真の抵抗性高血圧患者のためにこの治療を残しておく必要がある」としている。(HealthDay News 3月30日)
http://www.healthday.com/Article.asp?AID=625526