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ヒト体細胞がiPS細胞に変わる瞬間の可視化に成功/京都大学

新たに樹立した、ヒトiRS細胞は、ヒト体細胞からiPS細胞へ再プログラム化される中間段階にある幹細胞株である。特性として、1)培養条件を変えることで、iPS細胞への再プログラム化を効率よく再開する、2)単一細胞からの増殖が可能で、ゲノム編集などの遺伝子操作技術の応用が容易である、などがある。ゲノム編集技術を応用し、ヒトiRS細胞の内在性OCT4遺伝子の下流にGFPレポーター遺伝子を挿入することで、ヒトiRS細胞がOCT4陽性の幹細胞(iPS細胞)に変化する瞬間を生きた細胞で可視化する事に成功した。

1.背景
ヒト体細胞のiPS細胞への再プログラム化は1万分の1以下の頻度でおこる再現性の低い現象であるため、分子機構の解明は難しい課題として残されている。また、iPS細胞は単一細胞からのクローニングが困難であり、ゲノム編集を含む遺伝子改変技術応用による疾患モデル細胞の作製や病因解明の検証の障害になっている。

2.研究手法・成果
我々は、ヒト体細胞とiPS細胞の再プログラム化の中間段階にある幹細胞株の樹立に成功した。この幹細胞株をiRS(intermediatelyReprogrammedStem)細胞と名付けた。ヒトiRS細胞は、培養条件を変えることで、iPS細胞への再プログラム化を再開する特性を持つ(図1)。ヒトiRS細胞は、単一細胞からのクローニングが可能である。ゲノム編集により、内在性OCT4遺伝子の下流にGFPレポーター遺伝子を挿入することで、ヒトiRS細胞(OCT4発現オフ)がiPS細胞(OCT4発現オン)に変化する様子を生きた細胞で可視化する事に成功した(図2)。また、OCT4の活性化はiPS細胞化に必要であるが十分ではない事も明らかにした。

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3.波及効果
ゲノム編集を含む遺伝子改変されたiPS細胞の作製が簡易になり、遺伝性疾患の病因解明や創薬開発に貢献する(図3)。ヒト再プログラム化機構の解析を再現性良く行う事が可能になり、結果としてiPS細胞の品質の安定化に貢献する。

4.今後の予定
ヒトiRS細胞がiPS細胞に再プログラム化される過程での遺伝子発現やエピジェネティクスの変化を解明する。ヒトiRS細胞のゲノム編集により、新たな遺伝子改変iPS細胞を作製する。

<論文タイトルと著者>
OCT4activityduringconversionofhumanintermediatelyreprogrammedstemcellstoiPSCsthrough
mesenchymalepithelialtransition.
著者;勅使河原利香、平野邦生、長田翔伍、JustinAinscough、多田高

<用語解説>
・クローニング;細胞培養条件下で、一個の細胞由来のクローンを選別する作業
・再プログラム化;体細胞がiPS細胞等の幹細胞に変化する現象
・OCT4;多能性幹細胞でのみ発現する鍵遺伝子。iPS細胞やES細胞のマーカー遺伝子として使われる。
・GFP;蛍光照射によりグリーンに光るタンパク質。遺伝子活性の追跡に用いられる。

【詳細は下記URLをご参照ください】
京都大学2016年1月6日発表
京都大学ホームページ

2016年01月07日 14:21

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