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タウリンとビタミンAが角膜上皮幹細胞を酸化ストレスから保護するメカニズムを発見/ロート製薬

ロート製薬株式会社は、一般用点眼薬の有効成分として使われている「アミノ エチルスルホン酸(以下、タウリン)」、「レチノールパルミチン酸エステル(以下、ビタミンA、VA)」が角膜上皮幹細胞(以下、角膜幹細胞)に与える影響について基礎研究を行ってきました。研究の結果、タウリンとビタミンAが角膜幹細胞において、酸化ストレスから角膜幹細胞を保護し、そのメカニズムとしてアポトーシス(細胞死)を抑制するメカニズムを解明しました。本研究成果は、第70回日本酸化ストレス学会学術集会(2017年6月28日~29日、茨城県にて開催)で発表しました。角膜上皮再生の基盤となる本技術を応用し、今後も新しい点眼薬の開発に取り組んでまいります。

■研究の背景
一般用点眼薬の有効成分であるタウリンは代謝促進、ビタミンAは「角膜上皮細胞」の分化・増殖を促進させることが知られています。しかしながら、タウリン、ビタミンAのいずれの成分も「角膜幹細胞」における作用についてはこれまで十分に研究されておりませんでした。
角膜幹細胞は角膜上皮細胞に成長する(分化する)元になる細胞で、角膜と結膜の境界部(輪部)に存在しており、日々新しい角膜上皮細胞を生み出し、角膜上皮層の正常なターンオーバーや恒常性維持に重要な役割を果たしています。角膜幹細胞がダメージを受ける主な原因は外傷によるものですが、加齢とともに増える体内の酸化ストレスや抗酸化力の低下も原因の1つであると考えられています。
そこで同社は、加齢に伴う角膜幹細胞へのダメージに効果的な点眼薬の開発を目指して、角膜幹細胞に酸化ストレスを与えることで細胞死を起こす加齢を想定したモデルで、タウリンとビタミンAの作用について検討を行いました。

◎角膜幹細胞とは?

20170706_rohto01.png細胞がダメージを受けた際、新たな細胞を生みだす要となるのが「幹細胞」です。

肌と同様に、目の角膜にも幹細胞が存在し、角膜上皮細胞のターンオーバーに非常に重要な役割を果たしていますが、60代以降で激減する※1事が分かっています。
※1:参考文献 M. Notara, A. J. Shortt , et al., Age(Dordr), 2913 Apr, 35(2): 289-300.

■■研究の成果■■
◎結果1:タウリン1%とビタミンA 5万単位/100mLの組み合わせが角膜幹細胞を酸化ストレスから保護する

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酸化ストレスを与えると、角膜幹細胞はアポトーシス(細胞死)を起こします。一般用点眼薬において基準内最大量※2となるタウリン1%とビタミンA 5万単位/100mLの組み合わせは、酸化ストレスが原因となる角膜幹細胞の細胞死を有意に抑制し細胞保護効果を示しました。

試験方法:マウス角膜上皮前駆細胞(TKE2)に酸化剤(tBOOH)を添加すると、TKE2の細胞生存率が低下する(細胞死が起こる)。このモデルにおいて、TKE2にタウリン、ビタミンA及びその組み合わせで6時間処理した後tBOOHを添加し、4時間処理後の細胞生存率(%)を算出した。このとき、酸化剤を添加していないときの細胞生存率を100%とした。

※2:一般用眼科用薬製造販売承認基準の最大濃度
※3:酸化ストレス

◎結果2:タウリン、ビタミンAは活性酸素を直接消去する作用を有する

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酸化ストレスから角膜幹細胞を保護する作用メカニズムの一つとして、酸化ストレスの一つである活性酸素と直接反応し消去する作用が考えられます。そこで、タウリン、ビタミンAの活性酸素消去効果について確認した結果、いずれの成分も濃度依存的に活性酸素消去作用を示し、ビタミンAはタウリンよりも強い活性酸素消去作用を示しました。

試験方法:酸化剤(tBOOH)とタウリン又はビタミンAを混合し、化学発光法による測定方法にて、各成分の活性酸素消去作用を測定した。

◎結果3:タウリンは酸化ストレスで低下するアポトーシス抑制因子(活性化Akt)を増加させる

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アポトーシス(細胞死)を抑制する働きを持つ「活性化Akt」は、酸化ストレスによってその働きが低下するとの報告があります。今回、酸化ストレスを与えた角膜幹細胞においても、「活性化Akt」の量が低下することが確認されました。

そこで、タウリンを添加した上で酸化ストレスを与えたところ、酸化ストレスのみと比較して「活性化Akt」の発現が多いことが分かりました。タウリンが酸化ストレスから角膜幹細胞を保護する作用メカニズムの一つとして、細胞内のアポトーシス抑制経路を活性化すると考えられました。

試験方法:マウス角膜上皮前駆細胞(TKE2)をタウリンで6時間処理後、酸化剤(tBOOH)を添加し、2時間処理後に細胞内タンパク質を回収しリン酸化Akt(活性化Akt)の発現量をウェスタンブロットで確認した。バンドの濃淡は活性化Aktの発現量を表しており、それらを画像解析し数値化した。

■■考察■■
タウリンとビタミンAの組み合わせは、酸化ストレスから角膜幹細胞を保護する効果を示すことが明らかとなりました。角膜幹細胞を保護する主なメカニズムとしては、ビタミンAは活性酸素と直接作用することで消去する作用、タウリンはアポトーシス抑制因子の「活性化Akt」を増加させることが関係していると考えられました。これらの結果から、年齢を重ねて抗酸化力が低下しているような方において、タウリンとビタミンAは角膜幹細胞の機能低下を抑えることが期待できます。

角膜は、日常的にUVをはじめとし様々な酸化ストレスにさらされています。今回の研究から、タウリンとビタミンAが角膜上皮細胞の元となる角膜幹細胞の酸化ストレスから保護する作用を発見できたことは、将来的に角膜上皮再生の基盤となる技術になると考えており、今後も新しい点眼薬の開発に取り組んでまいります。

【詳細は下記URLをご参照下さい】
ロート製薬株式会社   2017年7月6日発表
ロート製薬株式会社   公式サイト(コーポ―レートサイト)

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2017年07月06日 12:31

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