台湾の原料配合規制成分は日本に準じる (株)技術情報協会(本社東京都品川区、高薄一弘社長)は、11月28日に「アジア市場で勝ち残る!台湾・中国・韓国における化粧品規制と市場動向」と題したセミナーを行った。最初に、台湾と中国の化粧品規制と化粧品業界の現状と課題について、廣田博・廣田技術士事務所所長が講演を行った。 それによれば、台湾では1960年代頃から、日本の化粧品メーカーと台湾の業者間で、化粧品の製造・輸入が行われ、1970年代になり日本を始め欧米の化粧品メーカーと技術提携または合弁企業設立が相次いでいる。化粧品衛生管理条例は1972年に初めて施行された。従来の日本の化粧品品質基準に相当する規制と、日本の法定タール色素を参考にした一覧表も付随して公布された。 台湾で化粧品の製造(輸入)を行うには、県(市)の衛生主管機関に登録すればよく、化粧品の種類には一般化粧品のほかに含薬化粧品(医薬部外品に相当)がある。含薬化粧品を製造するには、製造管理者として薬剤師を常駐させる必要がある。効能効果をうたうためには含薬化粧品の認可を取らなければならない。またアイライナー、マスカラなどの眉目化粧品は品目許可が必要だが、その他の一般化粧品は1995年5月より許可申請が不要になった。 輸入は現地輸入業者が販売名、原料名及び量、用法を申請書に記載し、サンプル、ラベルと共に提出するだけで良い。また、日本のメーカーが台湾企業に委託加工させ、日本に輸入する際は申請が不要になった。 原料の配合規制成分は、日本に準じて規定している。許容限度成分のうち、防腐剤の配合限度は日本と同じである。含薬化粧品の薬品配合限度基準は、欧米の化粧品メーカーとの合弁や輸入増の影響で、日本では許可されていない成分も許可されている。タール色素に関しては、日本と全く同じと考えてよい。化粧品原料として用いられる原料は、従来の日本の化粧品原料基準を参考に、さらに漢方薬抽出物を追加し、「中華民国化粧品原料基準」が作成されている。 ほかに、日本のPL法に相当する消費者保護法も定められており、12条から成っている。内容は、警告表示を必ず行うことが定められているほか、輸入品の場合、輸入業者だけでなく、広告事業者なども連帯責任を負うこと、虚偽・誇大広告をしてはならないこと、疾病の治療・予防に関する表現の禁止、法規制に違反した時、メーカー名・輸入業者名・違反事項などを衛生署公告として毎月発表することなどが定められている。 また、台湾には化粧品のほか、石鹸・洗剤などの日用品を含む業界団体として「台湾日用化学衛生品工業同業公会」があり、業界をリードしている。台湾の女性が化粧品にかける金額は大きく、日本女性以上に舶来志向が強い。日本に来て資生堂やカネボウの化粧品を購入して帰る人も多いという。合弁企業の化粧品は、輸入品に押されて少なくなっている。台湾の現地メーカーは東南アジアに輸出し、今後は中近東などへの輸出も増える可能性がある。 中国の品質基準はEUを参考 次に中国について。1986年に化粧品生産管理条例が施行されたが間もなく廃止され、その後衛生や品質基準に関する条例が施行された。各地の人民政府が化粧品生産の工場を持っており、漢方薬が配合された化粧品には、医薬品まがいのコピーが書いてあることもあるという。 化粧品には、一般用化粧品と医薬部外品にあたる特殊用化粧品に分かれている。一般化粧品製造の認可を受けるには、発売後2ヶ月以内に化粧品生産企業衛生許可申請書を省、自治区、または直轄市の衛生行政部門に申請し、許可を受ける。化粧品を輸入する場合も同様に申請を行えばいい。許可証の有効期限はない。4年ごとに再審査が行われる。 化粧品の衛生標準(日本の品質基準にあたる)は、当初台湾を参考に作ったが、最近はEUを参考にしている。配合禁止成分は359品目あり、日本で使用されているものも禁止成分に入っている。今後増加する可能性もある。配合許容限度成分は防腐・殺菌剤が66品目、紫外線吸収剤は36品目許可されている。特殊用化粧品で日本と違うのは、硝酸銀が許可されている点だという。 また、有害物限度基準と微生物限度基準が設定されているが、廣田氏は「中国の人民政府直轄工場のほとんどは微生物限度基準を満たしていないのではないか」としている。認可された化粧品用着色料は、タール色素は45品目と少ないが、無機顔料、天然色素などを含めて67品目となっている。 広告・宣伝の規制は衛生・監督条例で(1)他社の名称を使ってはいけない、(2)誇大ではいけない、(3)医療作用の宣伝はしてはならないことになっているが、人民工場直轄のメーカーは「クリームを塗ると痛みが軽減される」など、違反しているのが現状という。また、舶来品と間違うように外国文字で表示する企業もある。 市場の現状としては、都市部と農村部の貧困の差が激しく、農村部では化粧をしたことがない人が多い。人気なのは、日米の合弁会社のものや輸入品。しかし、合弁会社は地域により以前は生産量のうち、30~60%を輸出しなくてはならないという規定があり、輸出税がかかった。 市場の問題点としては、(1)化粧品は輸入品の高価格帯のものが中心で、低価格帯~中価格帯がないこと、(2)包装コストが高すぎること、(3)特殊化粧品の多くは、効果が少なく副作用がある、(4)広告の文言が過剰である、(5)国産品なのに海外の文字を採用し、外国製品に見せかけている、(6)粗悪品、密輸品が充満している、(7)人口は多いが化粧品を使用しているのは20%程度なのに、化粧品メーカーが多い、(8)中国市場は広大で北と南では気候、生活習慣などが違いすぎて売れるものが違う――などがある。輸入品市場は拡大するかもしれないが、国内生産高は拡大しないのではないかと結論付けた。 韓国では男性化粧品市場も活発 次に韓国の化粧品市場動向について、日本コルマー(株)柏原研究所第五部マネジャー、東野功氏が講演した。韓国の化粧品市場は、日本の約1/3程度だが、人口も同程度なので個人消費率はほぼ同額と見ることができる。物価が日本の約半額ということを考えると、日本人の約2倍程度の化粧品を購入している。個人消費が高い理由は、男性も化粧品を利用すること、全体的に安価な化粧品が販売されていないことが挙げられる。 チャネルは店頭販売が主流だが、近年、外資系マルチ販売企業も台頭し、一定のシェアを占めているほか、ネット販売も拡大している。また、数年前より百貨店における海外ブランドの化粧品売り上げが高くなっている。全体的に化粧品市場が下降傾向にある中、昨年からMISSHA、 THE FACE SHOPなど約1000円以下の低価格化粧品が流行している。ほかに、大手化粧品メーカーが自社製品だけでなく、国内外の製品も合わせて販売するブレンドショップという形態もある。百貨店での販売は、欧米の外資系化粧品メーカーによって占有されている。 新しいところでは、ネット販売、テレビショッピングが人気を集めている。その背景には、韓国国内のインターネット普及率の高さやクーリングオフ期間が30日と長期間であることも影響している。また、薬局・薬店で薬剤師に肌の相談をした上で購入する人が徐々に増えている。ドラッグストアの展開も始まったが、日本と違って店内の装飾にもこだわった高級感ある店舗作りをしている。 化粧品トレンドとしては、外国製品を好む傾向にあり、コピー商品も多かった。数年前までは2~3年前に日本で流行したものが韓国に渡り、同じようなものが流行するといわれていたが、最近では日本の化粧品市場とは異なるトレンドが増えている。 最も流行しているトレンドは、「Well-being」と称するナチュラル志向の製品。一昨年はヨーグルトパックが韓国国内で大ヒットとなり、食系化粧品が続々発売された。配合成分においても、フルーツ関係や大豆など原料を応用している。また、韓国漢方薬学の考えを基本にした「韓方化粧品」は高価格帯で売られ、これが日本でいうドクターズコスメに当たっている。韓国独自の化粧品カテゴリーとしては、医薬部外品と化粧品の中間に「機能性化粧品」があり、美白・シワ改善・日焼け止めがそれに当たる。韓国メーカーは機能性化粧品による差別化を明確にするためにも、開発を積極化しており、2つ以上の効能を組み合わせたものも見られる。男性化粧品の市場も活発で、女性なみにバリエーションのある製品が開発されると思われる。 今後は、ドラッグストアの拡大や積極的な海外進出などが進み、皮膚科医とコラボレーションした新しいドクターズコスメの開発やサプリメントの併用などが注目すべきカテゴリーと結論付けた。
技術情報協会が台湾・中国・韓国のセミナー開催
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