「第8回日本補完代替医療学会学術集会」が12、13日の2日間にわたり、東京・TFTホールにて開催された。今回のテーマは「EvidenceBasedCAMからNarrative-orientedCAMへ」。 「身体生理機能を補完する代替医療とその評価法」と題して行われたシンポジウムでは、国立循環器病センター・萬代隆医師が質問表に基づくQOL評価の取組みを紹介。健康状態のみならず、生きがいなどの生活や精神面を含めた質問表でQOLをスコア化する取組みを20年近く進めており、「病気の回復と QOLの改善は必ずしも一致しない」とした。 同時に、不一致の原因が主観と客観のズレである可能性も指摘、「もともとQOLの高かった人は、低かった人の場合に比べ、健康は改善したのにQOL が低下する例が見られる」と、精神面などが含まれ、全く同一の条件下で評価すことが不可能なQOL評価の難しさを述べた。しかし、「薬や健康食品を売るために、QOLという言葉だけが独り歩きをし、利用されている傾向もある。精神面をスコア化することには当然のように批判があるが、きちんとした評価方法を作るべき」と、スコア化による統一的なQOL評価手法確立の必要性を訴えた。 また、金沢医科大学大学院代替基礎医学講座・山口宣夫教授が、「補完代替医療が世界的に注目され、重要性を増す中で、評価手法として西洋医学的なパラメータを取り入れる必要がある」とし、下流球やリンパ球を免疫力の測定パラメータに使用することを提案した。 また、シンポジウム「アレルギーと代替医療」では、大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー・感染内科学講座・田中敏郎助教授と(独)農業・生物系特定産業技術研究機構野菜茶業研究所・山本万理研究室長が、実際の研究成果を発表した。 田中教授は野菜などの摂取によるアトピー性皮膚炎に対する効果として、ルテオリン、アピゲニン、フィセチンに強い抗アレルギー作用があることがわかったとした。玉ネギなどに多く含まれ、比較的摂取量を確保しやすいケルセチンやケンフェロールはやや劣るとした。作用としてはヒスタミン産生の抑制のみでなく、サイトカインの産生抑制やCD40リガンドの発現を抑制しているという。 また、山本室長は「茶葉研究とアレルギーの接点」と題した講演の中で「べにふうき」茶葉に特異的に含まれるメチル化カテキンを摂取することで、体内でのヒスタミン遊離を抑制することができ、花粉症の軽減につながることを示唆する試験を紹介した。熊本大学での実験ではダブルブラインドで、443例のスギ花粉症症状を有する人に「べにふうき」茶とメチル化カテキンを含まない「やぶきた」緑茶を摂取させた。実験期間中、症状がひどい場合には被験者が任意で薬剤を併用することは許可した。結果として、「べにふうき」緑茶群は対照群に比べて症状の緩和では有意差が出なかったものの、薬の使用量は有意に減少していた。そのため、効果があることが示唆されたとする。 べにふうき茶はアサヒ飲料が商品化し、来年より販売を開始する予定。 福島県立医科大学皮膚科・中村晃一郎医師は、皮膚科におけるアトピー性皮膚炎治療のガイドラインではステロイド剤などの抗生物質と保湿剤が治療の基本とされていることを紹介。しかし、オックスフォード大学EBMセンターのような研究機関でも代替医療の有効性は認められつつあり、今後、EBMの確立が必要とした。 これを受け、座長を務めた日本アレルギー学会・冨岡玖夫理事長は、「ステロイド剤使用を全面的に否定することはできないにしても、やはり、その他の方法を積極的に探らないのは医師側の怠慢と言えるかもしれない。様々な情報を患者に伝えていく行為そのものも、大きく見れば補完代替医療の一つといえるだろう」と、述べた。 その他、学会期間中には作家の五木寛之氏や日本大学生物資源科学部食品化学工学科食品機能性化学研究室・上野川修一教授の特別講演等も行われた。
補完代替医療学会を東京で開催
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