日経BP社Biotechnology japanは12日、全国町村会館(東京都千代田区)にて「『食の安全・安心ブランド調査2006』発表記念セミナー 健康食品のリスクコミュニケーションはどこまで可能か」を開催した。 これは同社が運営するウェブサイト「FOOD・SCIENCE」が、食関連の企業名や製品名など200ブランドに対する消費者の意識を調査してまとめたもので、今年で2回目となる。9月27日から10月11日の2週間、女性ウェブユーザーを対象にインターネット調査を行った。対象者の平均年齢は 36.5歳、専業主婦が56.3%を占め、1万4910通の回収数のうち、有効回答は1万602通だった。方法は「味がよい」「原材料にこだわりがある」「顧客への情報開示に熱心である」などの17項目を設定しイメージ得点として算出して、ランキングしている。 今年の総合得点1位はサントリーで、2位アサヒビール、3位キユーピーとなった。ジャンル別ランキングの健康食品・製品では、1位エコナ、2位ヘルシア緑茶、3位ヘルシーリセッタで、健康食品・企業では1位ファンケル、2位DHC、3位キューサイとなった。日経BP社「FOOD・SCIENCE」の中野栄子ウェブマスターは、「ランキング上位ブランドは昨年より得点を伸ばした企業が多く、日本の企業への信頼が回復しつつあるように感じられる。一方で、下位ブランドは得点を下げていることから、信頼性を回復しつつあるブランドとそうでないブランドの2極化が進んでいる」と述べた。 また、健康食品の安全性の確認をどのように行っているかの問いに対し、「新聞・雑誌・テレビの記事や内容を見て」が最も多く66.4%だった。ただ、月に購入金額が5000円以上のヘビーユーザーでは「研究者や学識経験者のネット発信情報」「企業の発行する冊子や企業サイト」を見てという回答が多く、これらの層には40代から50代が多かったという。 セミナーでは、調査結果の発表に加え、パネルディスカッションが行われた。この中で、中野氏は「リスク管理とリスク評価は企業として当然で、その先にあるリスクコミュニケーションの必要性を感じている。意見交換会では一部の消費者団体の代表者がそれぞれの意見を主張するだけの場になっていることがあるが、これでは大多数の消費者の意向が見えない」と述べ、リスクコミュニケーションとはフードシステムの川上から川下まで、消費者を含め関係者が一堂に会してリスクに関する情報や意見を交換し、互いの理解を深めるプロセスと定義した。 一方で、司会を務めたFOOD・SCIENCE科学ライターの松永和紀氏が「前提条件となるリスク管理、リスク評価と、その先にある情報提供としてのリスクコミュニケーションは分けて考えるべきかもしれないが、企業側の立場からすれば資金がなければ、または売上につながらなければきちんとしたエビデンスを取得できないという状況で、前提条件さえクリアするのが難しい場合がある。情報提供を行っていくためにはどうしたらいいのか」と問いかけたのに対し、日本コエンザイムQ協会理事長でもある東京工科大学バイオニクス学部・山本順寛学部長は「今後、エビデンスは必ず必要になってくるが、新素材に関して消費者に訴求したければ特定保健用食品の認定を受けるより他、道はなくなるだろう。ただ、新トクホのほうに基準を緩めても申請がないのが現状で、企業間の格差が見受けられる」との見解を示した。ただ、山本理事長自身はコエンザイムQ10を特定保健用食品とすることはないだろうと述べ、「コエンザイムQ10 は、100年に1度の素材と考えており、消費者の認知も高い。機能も多岐にわたるため、最終的にトクホにするかどうかはメーカーの裁量に任せざるを得ないが、効果を1つに限定してしまうトクホの枠内に収まる素材ではないと考えている」とした。 また、武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科食品衛生学研究室・松浦寿喜助教授も、効能効果を訴求するためには特定保健用食品にするしかないと一致した意見を示した。「大学や研究所などをもっと活用し、研究を外に出せばよい」とし、同時に、学術的データを読み解く能力の高い人材を社内に確保することは絶対に必要だと述べた。松浦助教授は消費者への講演などを行ってきた経験から、「特に高齢の方々は値段が高いものを好む傾向にあり、食品の分類を理解している人は少ないという印象がある。情報がなく困惑しているのではないか」と話した。
食の安全・安心ブランド調査、結果を発表
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