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圧力が肌の再生能力を覚醒することを発見―リザーバーに眠る幹細胞へのアプローチ 美容法は肌再生の時代へ―/資生堂

株式会社資生堂は国際医療福祉大学医学部形成外科学 松﨑恭一主任教授と、自治医科大学、生理学研究所の共同研究により、肌に圧力を加えることは、幹細胞リザーバー※1 に貯蔵されている幹細胞の増殖を促し、肌を再生する可能性を明らかにしました。見た目の老化の改善に繋がるこの知見を活用し、美容法やサービスの開発を進めていきます。

同研究成果の一部は、化粧品技術者の世界大会「国際化粧品技術者会連盟ミュンヘン大会 2018(IFSCC※2Congress 2018)」で口頭発表し、最優秀賞を受賞しました。

※1 幹細胞リザーバー: 本共同研究で見出した、幹細胞が貯えられている部位。
2018 年:肌内部で起きる「老化の伝播」を解明 https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002569

※2 IFSCC (The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists): 世界中の化粧品技術者が集い、より高機能で安全な化粧品技術の開発へ向けて取り組む国際機関

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■ 肌再生のブレイクスルー「幹細胞リザーバー」に対するアプローチの探求
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加齢と共に肌は弾力を失い、シワやたるみ等の見た目の老化が進みます。これは、肌の弾力をコントロールする細胞(真皮の線維芽細胞)が加齢と共に衰えるためと考えられています。これまで本共同研究では、肌内部の皮脂腺の周囲に、この線維芽細胞の基となる幹細胞が貯えられていることを発見し、「幹細胞リザーバー」と名付けました。この肌再生の切り札となる幹細胞リザーバーをターゲットとして、有用な薬剤の開発を進めてきました。これに加え、資生堂が長年培ってきた美容法にも肌再生に繋がる力があると考え、研究を進めました。

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■ 圧力は幹細胞リザーバーからの幹細胞の増殖を促す
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美容法は「押す」「叩く」「捻る」「伸ばす」等、様々な要素とその組み合わせからできています。美容法の肌への有用性は知られていますが、どの要素が何に対して作用するのか等、詳細なメカニズムは解明されていませんでした。これを明らかにすることは、より高い効果を持つ美容法の開発に繋がります。そこで皮膚を培養し(器官培養)、これに美容法の各要素を模倣した様々な刺激を加え、その効果を観察しました。 その結果、皮膚に圧力を加えることで、幹細胞リザーバーに存在する幹細胞(幹細胞マーカー陽性の細胞)が増殖することが確認されました(図 1)。そこで、美容法の中から「圧力」の持つ力に着目し、さらに研究を進めました。

a) 圧力を加えずに静置して培養した皮膚。皮脂腺の周囲に幹細胞マーカー陽性細胞が僅かに認められる(矢印で示した茶色い部分)。これは培養前の状態と同様で、幹細胞の増殖は認められない。b) これに対して一定の圧力を加えて培養した皮膚では、幹細胞マーカー陽性細胞が顕著に増加している。

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■ 圧力により増殖した細胞はネットワークを構築する
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次に、圧力で増加した細胞が、実際に真皮中で機能し得るのかを検討しました。真皮の細胞が良好な状態で機能するには、細胞同士が繋がり、ネットワークを構築することが重要です※3。そのため、このネットワークを観察できる「デジタル 3D スキン TM ※4」技術で、3 次元的に細胞の状態を観察しました(図 2)。その結果、圧力を加えた皮膚では、増殖した細胞が互いに繋がり、ネットワークを構築することが確認されました。このことから、圧力は幹細胞の増殖を促し、それが機能する状態へと導くことが示されました。

※3 2020 年:真皮の細胞が織りなす『線維芽細胞ネットワーク』を解明 https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002898

※4 2020 年:AI を活用した皮膚解析の新技術『デジタル 3D スキン TM』を開発https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002897

培養前後の皮膚を、デジタル 3D スキンで 3 次元的に観察。a) 圧力を加える前の皮膚。b) 一定の圧力を加えて培養した皮膚。皮脂腺の周囲に顕著な細胞の増加が認められる(細胞核の増加で確認できる)。さらに増殖した細胞では、ネットワーク構造(矢印)も確認できる(視認性向上のため色分けして表示)。

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■ 圧力によりネットワークを構築した細胞はコラーゲンを産生する
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さらに、圧力により増殖してネットワークを構築した細胞が、真皮を再生する可能性を検討しました。加齢により肌のコラーゲンが著しく減少することで、肌の弾力が低下します。一方で、ネットワークを構築した細胞は、コラーゲンを産生します。コラーゲンが生み出されることで、真皮は再び弾力を取り戻すことが可能となります。そこで、圧力を加えた皮膚のコラーゲンを観察したところ、新たにコラーゲンが生み出されていることが確認されました(図 3)。そのため、圧力は真皮の再生を誘導すると考えられました。

培養した皮膚で、新たに生み出されたコラーゲンを観察。a) 圧力を加える前の皮膚では、新たなコラーゲン(矢印で示した茶色い部分)は僅かに認められる程度である。これに対して、b) 一定の圧力を加えて培養した皮膚では、新たに生み出されたコラーゲンが顕著に確認される。

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■ 肌の再生力を引き出す圧力の可能性
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今回の一連の研究から、圧力は幹細胞リザーバーからの幹細胞の増殖を促し、これが細胞のネットワークを構築することで、コラーゲンを生み出し、肌を再生すると考えられます(図 4)。これは同時に、美容法が肌の再生に繋がる新たな可能性を示しました。この知見を活用し、美容法や美容器具をはじめ、様々なサービスの開発を進めていきます。

肌に圧力を加えると、幹細胞リザーバー(皮脂腺周囲)から幹細胞マーカー陽性細胞が増加し、周囲に細胞を供給する。これがネットワーク構造を構築し、コラーゲンを産生することで真皮を再生し、肌の弾力や見た目の老化改善に繋がる

【詳細は下記URLをご参照ください】
株式会社資生堂  2020年5月27日【PDF】発表
株式会社資生堂  公式サイト

2020年05月28日 12:19

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