2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故によって原子炉から漏出した放射性物質による環境、農作物、食肉、水等への汚染の広がりから、個人による放射線測定ならびに放射線測定器への関心と需要が高まっている。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には2011年3月11日の震災以降2011年7月末までに「放射線測定器」に関連すると考えられる相談が391件寄せられており、急増している。そこで、比較的安価な放射線測定器が放射性セシウムを正しく測定できるかについてテストし、情報提供することとした。
テスト対象銘柄は、国内で販売されている1万円以上10万円未満で購入できる9銘柄と、校正済の参考品1銘柄。
主なテスト結果
自然放射線の測定試験
参考品を除く9銘柄は通常の環境程度以下の自然放射線を正確に測定できなかった。
セシウム137由来のガンマ線測定試験
参考品を除く9銘柄は、照射線量率と測定値に相関がみられたが、総じて正味値が低く、ばらつきも誤差も大きいため、正確な測定はできなかった。
表示
販売サイトの広告には汚染検査に使用できることを期待させる表示が見られたが、取扱説明書等には、放射線に関連する業務での仕様を目的としているものが多かった。
インターネット通信販売サイトには、放射線を正確に測定できる旨の表示が見られたが、4銘柄は仕様に記載のある誤差範囲を超えていた。
PSEマーク
2銘柄で充電器にPSEマークの表示がなく、プラグの栓刃に穴がなかったため電気用品安全法に抵触するおそれがあると考えられた。
消費者へのアドバイス
今回テストを実施した放射線測定器では、食品・飲料水等が暫定規制値以下かどうかの測定はできないので、こうした目的で購入・使用することは避ける。
環境中の放射線を測定する場合、公表されているデータ等を参考にし、測定器の示す値を直ちに信頼することは避ける。
事業者への要望
環境中の微量の放射線や、食品・飲料水等が暫定規制値以下であるかどうかの判定はできないことを明記するよう要望する。
放射線を正確に測定できない銘柄があったので、製品の改善を要望する。
充電器にPSEマークの表示と、プラグの栓刃に穴がないものがあった。電気用品安全法に抵触するおそれがあるため、商品の改善を要望する。
販売サイトには放射線を正確に測定できる旨の広告が見られたが、実際には仕様に記載のある誤差範囲を満たしていなかったので、消費者に測定器の性能を過信させるような表示・広告をしないよう要望する。
行政への要望
比較的安価な放射線測定器では、食品や飲料水等が暫定規制値以下かどうかの判定はできないことを周知徹底するよう要望する。
一部の銘柄で景品表示法上問題となるおそれがあったので、適切な広告・表示がされるよう指導を要望する。
充電器にPSEマークの表示と、プラグの栓刃に穴がなかった。電気用品安全法に抵触するおそれがあるため監視・指導の徹底を要望する。
要望先
消費者庁 消費者政策課
情報提供先
経済産業省 商務情報政策局 商務流通グループ 製品安全課
消費者庁 表示対策課
厚生労働省 医薬食品局 食品安全部 監視安全課
農林水産省 消費・安全局 消費・安全政策課
文部科学省 原子力災害対策支援本部
社団法人日本通信販売協会