高齢者を集め「がんが治る」などと宣伝していた電位治療器の販売業者
解約交渉をする相談者や国民生活センターの相談員を脅す卑劣な販売業者の事例を紹介する。
相談内容
高血圧とその薬の副作用に悩んでおり、友人に誘われて、電位治療器の体験会場に行った。会場ではビデオが放映されており、その中で「機械が熟成して知力が 付き、病気を100%見つける。1カ月この機械を使うと20歳若返る。免疫力が上がり、がんも再発しない」などと社長が言っていた。この機械はすばらしい ものだと思って購入したが、機械を使い始めて2カ月ほどたった頃、体調が悪くなり、使用をやめると元に戻った。結局、機械を使っても血圧は下がらず、機械 の効果について不審に思ったので、解約したい。
(60歳代 女性 無職)
処理結果
国民生活センター(以下、当センター)は、相談者に契約の経緯を手紙に書き、解約を申し出るよう助言した。そして、相談者より勧誘の際に見たビデオを送付してもらい、内容を確認したところ、
命にかかわる病気を先に見つけ、電子がその部分に移動し集中的に治療する
病気になっている神経や細胞の波長を100%キャッチする
今まで治療不可能といわれた病気もどんどん治る
などの説明がなされていた。
当センターより業者に電話したところ、販売員は「相談者は無料で機械を体験し、相談者が自ら買うと言ってきた。強引に勧めてはいない。血圧が下がると言っ た覚えもない」と主張した。機械の効果について尋ねたところ、販売員は「この機械の効果は100%とは限らない。しかし相談者の血圧は上下を繰り返しなが ら下がっていくはずだ」と回答した。当センターより、「機械の効果があると言うためには、確かなデータを取ることが必要ではないか。高血圧が治ったと言う ためには、正常値まで血圧が下がることが必要で、10や20下がったからといって高血圧が治るかのような説明をすることは言い過ぎではないか」と指摘した ところ、販売員は「それはそうかもしれない。今後気をつける」と回答した。しかし、解約については「所長が権限を持っているので自分は応じられない」との ことだった。
当センターが信販会社にも連絡すると、業者とは現在も取引があるため、事実確認を行うとのことだった。
数日後、当センターへ電話があり、販売員は「相談者とセンターの相談員を業務妨害と名誉毀損(きそん)で訴える」と言い出した。
その後、販売員より、相談者および当センター理事長あてに「詫び状を提出しなければ告訴する」という主旨の手紙が届いた。
当センターは、信販会社に本件の進捗(しんちょく)状況と販売員からの手紙の件を説明し、手紙のコピーを送付した。
また、業者の本社には主体的な対応を要請し、電位治療器のメーカーに対しても販売方法の問題点を伝えた。さらに、業者の所在地の所管課および厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課へ文書にて情報提供を行った。
しかも、同時期、当該業者に関する同種の相談が別途、寄せられたため併せて処理することとした。
最初の相談については、業者が問題点をまったく認めなかったため、信販会社に対して調査を依頼したところ、商品の返品に応じ既払金も全額返金した。
もう1件の相談に関しては、改めて業者の所長に対して販売員の言動について指摘したところ、しばらくしてから、相談者より、所長が相談者宅を訪れ治療器代金の全額が返金されたと連絡があった。
問題点
本件業者は、体験会場へ大勢の高齢者を集めて、「血圧を正常値に戻す」「がんが治る」などの効能・効果をうたい電位治療器を販売していた。会場でビデオを 見、病気が回復したという人の話や業者のもっともらしい説明を聞き、病気を抱える高齢者は効果を信用し契約した。当該治療器は医療機器承認番号を取得して いたが、効果として表示できるのは「頭痛・肩こり・不眠・便秘」のみであった。
消費者契約法や薬事法に抵触する販売方法と思われることから、当センターは、信販会社に、加盟店の指導を十分行うよう申し入れた。
また、本件のようなケースでは、仮に、業者が消費生活センターの相談員や相談者を訴えたとしても、逆に、業者に対して不法行為による損害賠償請求の訴えを提起することが可能であろう。