[2009年6月25日:公表]
体に良いとうたうゲルマニウム使用のブレスレット
ゲルマニウムは物質的特性が金属と非金属の中間に位置する亜金属であり、半導体の性質を示す物質である。市場には、高純度のゲルマニウムを使用していることをうたい、「こりの緩和」や「血行の改善」など、健康に対する何らかの効果をイメージさせるブレスレットが数多く販売されている。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、ゲルマニウムを使用したアクセサリーについての相談が2004年度からの5年間で2,309件(注)寄せられており、うち55%(1,267件)はブレスレットに関する相談であった。また、18%(412件)は「効果がない」、「効果があるか疑問」、「ゲルマニウム含有量が知りたい」等の「品質・機能」に関する相談であった。また、ゲルマニウムを使用したアクセサリーによって「皮膚がかぶれた」「赤くなった」等の皮膚障害が起きたという事例も59件寄せられていた。
そこで、高純度のゲルマニウムを使用した旨の表示があり、体に良いとイメージさせる販売価格15,000円未満のゲルマニウムブレスレット12銘柄を対象に、ゲルマニウムの含有量の他、長時間・長期間装用した場合に接触皮膚炎の原因物質となることがある金属や鉛等の溶出がないか等について調べた。また、表示されたうたい文句に関する科学的根拠の調査も併せて行い、消費者に情報提供することとした。
(注)2004年度以降受付、2009年4月30日までの登録分。件数は本調査のため特別に事例を精査したもの。
主な調査結果等
1.ゲルマニウム含有量
ベルト部分からはゲルマニウムは検出されず、12銘柄中8銘柄は黒色又は金属の粒部分にもゲルマニウムが微量しか含まれていなかった。うち1銘柄はゲルマニウムが検出されなかった。
2.ベルトの材質
5,000円未満のほとんどの銘柄はベルト部分の主成分が鉄であり、汗が付いたまま放置すると錆が発生してしまうものもあった。
3.接触皮膚炎の原因となる金属等の溶出
接触皮膚炎の発症頻度が高い金属の汗による溶出量を調べたところ、EUの指針値を超える量のニッケルが溶出する銘柄はなかった。
4.ゲルマニウムの効果等に関する表示調査
高純度のゲルマニウムを使用しているという表示で、ごくわずかな量しかゲルマニウムが含まれていない銘柄が8銘柄あった。8銘柄中6銘柄には、10名中8名以上のモニターがゲルマニウム含有量が多いと回答し、誤認を招くおそれがある表示・広告があった。
商品として効能・効果があると受け取れ、薬事法に抵触するおそれがあるインターネット上の広告がみられた。
全ての銘柄に、ゲルマニウムが健康に対する何らかの効果を示す旨の表示がみられたが、独立行政法人科学技術振興機構の科学技術文献データベースで検索したところ、科学的根拠を示す文献は確認できなかった。
5.ゲルマニウムの効果に関する事業者へのアンケート調査
ゲルマニウムのヒトに対する効果について、製造者又は販売者名が記載されていた5社に対してアンケート調査を行ったところ、回答があった2社中1社は根拠となる資料を所有していなかった。
インターネット通信販売業者の多くはゲルマニウムのヒトに対する効果についての科学的根拠を有しておらず、メーカーや仕入れ業者から入手した資料を基に表示を行っていた。
消費者へのアドバイス
テスト対象銘柄に表示されていたゲルマニウムの健康への効果は、文献調査及び製造・販売業者に対するアンケート調査を実施したところ、根拠となる科学的データが確認できなかった。ゲルマニウムブレスレットを購入する人は健康への効果を期待すべきではない。
業界への要望
ゲルマニウムのヒトに対する効果に関する表示について、明確な科学的根拠がなければ表示を取りやめるよう要望する。
インターネット上の広告について、薬事法に抵触するおそれがある表現がみられたため、改善を要望する。
ブレスレットは体に身に付けて使用する商品であることから、錆の生じにくい素材を使用するよう、要望する。
行政への要望
ゲルマニウムの健康への効果について、科学的根拠を示す文献が確認できなかった。景品表示法上問題があるおそれがあるため、監視・指導の徹底を要望する。
インターネット上の広告について、薬事法に抵触するおそれがある表現がみられたため、指導の徹底を要望する。
要望先
公正取引委員会事務総局 取引部 消費者取引課 景品表示監視室
厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課
社団法人日本通信販売協会
情報提供先
内閣府 国民生活局 総務課 国民生活情報室
厚生労働省 医薬食品局 審査管理課 医療機器審査管理室
社団法人日本ホームヘルス機器協会
社団法人日本ジュエリー協会
業界の意見 ※2009年7月21日 追加
「株式会社富士」(注)より
(注)商品に表示された製造者名は「FUJI.CO.LTD」であった(銘柄No.10)。
弊社のゲルマニウム商品は、今まで数十万人のお客様に支持され、ご愛用頂いております。また、お客様自ら、お喜びの声を頂戴しております。
そのような商品に対して、貴センターは、ゲルマニウムに関する情報が、学術文献に記載されていないという理由で、無効性を確信発表すると言われております。
そのような行為は、弊社の信用失墜と経済的損失に結びつき、多大な損害を被ります。貴センターには以下のことを考えて頂きたいと思っております。
世の中には、誠意を持ち、商売をしている企業もいる事
貴センターの立場や発言力の影響
有効性データにつきましては、本日、サーモグラフデータを郵送にて御送付しますので、ご確認ください。体温上昇と脳波の緊張緩和の有効性を示しています。
貴センターから頂いたテスト結果について回答させて頂きます。
1.弊社のゲルマニウムに対する取り組みについて
ゲルマニウムの特質について、10年にわたり、研究実証した結果、マグネット治療ブレスに比べ、有効性が高いという実験データと市場試着テストにより製品化を5年前より始めました。弊社が扱う商品は、テレビ等の特殊宣伝を一切せず、口コミにより効果が伝達されリピータへとつながっています。
2.貴センターから頂いたテスト結果について
貴センターの検証による、結果の通り、弊社の「ゲルマニーナ」に使われているゲルマチップの含有量は「99.999%」に偽りはありません。
また、ブレスレット部分に使用されている金属素材については、チタニウムを使用しています。
チタニウムは人工歯根や人工骨に使用されており、人体との適合性の最も良い金属とされています。
ゲルマニウムという金属は、特殊な半導体金属であり、極めて低温(体温程度)でも、電子移動が行われ、電流が流れることが確認されています。
例えば、ゲルマニウムラジオ(鉱石ラジオ)が電池なしで音が聞こえるのもその一例です。
通常金属は、高温にて液状化し、鋳型に流し込み、成型が可能であります。しかし、貴センターが問題視されている、ゲルマニウムに関しては、温度をかけることにより、飛散し、成型が不可能となっています。それほど、特殊な金属であることを認識して頂きたいです。
3.ゲルマニウム商品販売方法と「インターネット(WWW)に掲載されている文言の責任所在」について
弊社は「ゲルマニーナ」のメーカーです。
弊社の販売方法は、項目1でお伝えしたとおり、テレビ等の特殊宣伝を一切しておらず、口コミによる販売を行っております。
また、インターネット上での販売を禁止しております。
貴センターご指摘の「インターネット(WWW)に掲載されている文言」については、弊社と全く取引のない法人や個人、そして団体が弊社のパンフレット画像を流用し、改ざんデータで営業しているのではないかと、推測しております。
このことに関しては、弊社の関知するところではないと、考えております。
株式会社富士 代表取締役社長 小澤 茂
商品テスト部の見解
ゲルマニウムの人体に対する効果については、独立行政法人科学技術振興機構の科学技術文献データベースで検索したところ、科学的根拠を示す文献は確認できませんでした。テスト対象銘柄に表示された製造・販売業者及びインターネット通信販売業者を対象にアンケート調査も実施しましたが、回答があった中ではゲルマニウム自体の作用によって健康に対する何らかの効果を示すという明確な科学的根拠を示した事業者はありませんでした。科学的な根拠のない表示は消費者に誤解を与えるおそれがあります。公的に認知された科学的根拠に基づく表示を徹底していただきたいと考えます。
本件連絡先 商品テスト部
電話 042-758-3165
報告書(PDF) PDFファイルをご覧になるには
[詳細情報(475KB) ]