平成22年3月9日
消費者庁
消費者庁では、トランス脂肪酸の表示に向けた今後の取組について、以下のとおり取りまとめましたのでお知らせいたします。
1.背景
トランス脂肪酸の摂取に関しては、国際的に、
① WHOの「食事、運動と健康に関する世界戦略」(2004年)において、「脂肪由来のエネルギー摂取量を抑え、脂肪消費の内容を飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸に変え、トランス脂肪酸の除去を目指す」とされ、
② 食事、栄養および慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合の報告書(2003年)では、「一日当たりの総エネルギー摂取量の1%未満とする」という目標が示されている。
一方、日本人一日当たりの摂取量は、食品安全委員会の調査結果によると、総エネルギー摂取量の1%未満となっている。ただし、脂質の多い菓子類や食品の食べすぎなどの偏った食事をしている場合では、平均値を大きく上回る摂取量となる可能性があるとされている。
2.これまでの取組
消費者庁では、昨年12月以来、関係省庁とともに「トランス脂肪酸に係る情報の収集・提供に関する関係省庁等担当課長会議」を開催し、トランス脂肪酸の摂取量や健康への影響等に関する情報収集等を行ってきた。
この中で、多くの食品事業者が、トランス脂肪酸の含有量を低減する取組を進めており、また、自社ホームページ等を通じて、その情報開示に努めている事例もあることがわかった。
一方で、①トランス脂肪酸の定義や分析法等の表示ルールが定まっていない、②同じく心血管系疾患等のリスクを高める飽和脂肪酸やコレステロールと一体的に捉える必要があるといった問題意識から、積極的な表示に踏み切れないでいる事業者も多いことが明らかとなった。
3.今後の取組方針
上記のような状況を踏まえ、今後、以下のとおり取組を進めていくこととする。
(1)消費者に対する情報提供の充実
① 栄養バランスのとれた食生活の大切さやトランス脂肪酸など脂質に関する情報が正しく伝わるよう、関係省庁と協力して消費者に対し普及啓発を図る。
② 食品事業者がトランス脂肪酸の低減策を進め、消費者に情報開示する取組を促進するため、関係省庁と協力して以下の措置を講ずる。
ⅰ)油脂関係の技術者、専門家等の協力を得て技術作業チームを構成し、トランス脂肪酸の定義や分析法、認められる誤差等のルールや、飽和脂肪酸、コレステロールの表示ルールについての技術的な課題を整理した上で、事業者が情報開示を行う際の指針となる「トランス脂肪酸の情報開示に関するガイドライン」(仮称)の策定を検討し、本年夏を目途に取りまとめる。
ⅱ)ⅰ)の取組と並行して、食品事業者に対し、容器包装や自社ホームページ、商品紹介の機会等、様々な場面を通じて、トランス脂肪酸に関する自主的な情報開示の取組を進めるよう要請する。併せて、飽和脂肪酸やコレステロールについての情報も開示するよう要請する。
(2)表示の制度化に向けた検討
トランス脂肪酸の表示の制度化に向けて、関係省庁の協力を得つつ、引き続き検討を進める。
具体的には、上記の技術作業チームにおいて、国内外の事例の調査・分析等を行い、議論のための基礎データを作成した上で、有識者等で組織する検討の場を設けて制度設計に向けた検討を進める。
(参考1)
トランス脂肪酸に関する技術作業チームの進め方について
1.作業内容
(1) トランス脂肪酸の定義や公定法、認められる誤差等のルールや、飽和脂肪酸、コレステロールの表示ルールについての技術的な課題を整理するために必要な作業を行い、「トランス脂肪酸の情報開示に関するガイドライン」(仮称)の策定の基礎となるデータを作成する。
(2)想定される具体的な作業は、以下のとおり。
① 情報開示の対象とするトランス脂肪酸の定義
・天然由来のトランス脂肪酸の取扱い
② トランス脂肪酸の測定に係る公定法
③ トランス脂肪酸の含有量を示す際の誤差の許容範囲
・誤差を認める場合の上限値、下限値
・ゼロ表示を認める場合の上限値
④ 飽和脂肪酸、コレステロールに係る①~③の事項
(3)上記の各事項について、国際機関及び諸外国における事例調査、我が国における食品製造現場の状況把握等を行い、本年夏を目途に、技術的な課題を整理する。
2.構成メンバー
油脂関係の技術者、専門家等で構成し、必要に応じて他分野の技術者にも協力を求める。
(参考2)
「トランス脂肪酸に係る情報の収集・提供に関する関係省庁等担当課長会議」
これまでの開催状況
【趣旨】
トランス脂肪酸に係る情報を収集し、消費者へ提供するため、「トランス脂肪酸に係る情報の収集・提供に関する関係省庁等担当課長会議」を開催。
【構成員】
厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室長
農林水産省総合食料局食品産業振興課長
食品安全委員会事務局情報・緊急時対応課長
消費者委員会事務局参事官
消費者庁政策調整課長
消費者庁食品表示課長
【検討事項】
●トランス脂肪酸の摂取量や健康への影響等に関する情報収集
●トランス脂肪酸に関する食品企業等の取組状況の情報収集
●トランス脂肪酸に係る情報を消費者にわかりやすく提供する方法
【開催経緯】 《第1回会合》 H21.12.4(金)
トランス脂肪酸に関する情報の各省庁における収集・提供状況の報告
《第2回会合》 H22.1.26(火)
有識者及び事業者からのヒアリング
(1)日本人のトランス脂肪酸の摂取量の現状等について
女子栄養大学 川端 輝江 教授
(2)事業者の取組状況について
日本マーガリン工業会 植田 勉 専務理事
株式会社ADEKA 板垣 和雄 食品開発研究所長
《第3回会合》 H22.2.15(月)
有識者及び事業者からのヒアリング
(1)トランス脂肪酸のリスク分析の現状
国立医薬品食品衛生研究所 畝山 智香子 主任研究官
(2)日本生活協同組合連合会の取組
日本生活協同組合連合会
組織推進本部 鬼武 一夫 安全政策推進室長