温泉入浴がストレスホルモンの濃度を下げることを解明/京都大学 【プレスリリース】

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温泉入浴がストレスホルモンの濃度を下げることを解明/京都大学

温泉に入るニホンザルは、海外でもスノーモンキーの名前でよく知られています。長野県の地獄谷野猿公苑は、そのユニークな行動がみられる唯一の場所として、国内外から多くの観光客をひきつけています。

京都大学霊長類研究所 Rafaela Takeshita 研究員らの研究チームは、この地獄谷野猿公苑におけるニホンザルの温泉入浴の効果について科学的に検証しました。

その結果、この地域のニホンザルは、冬期により頻繁に温泉に入浴し、ストレスホルモンであるグルココルチコイドの体内濃度を下げていることが明らかになりました。

同研究により、ニホンザルはその柔軟な行動によって冬の寒さによるストレスを緩和し、繁殖や生存の可能性を高めていることが示唆されました。

※同研究成果は、2018 年 4 月 3 日に日本

1.背景
ニホンザル (学名 Macaca fuscata) は、世界で最も北に住むサルで、日本の寒い冬にも適応しています。彼らは、長くて密な冬毛に守られて、極寒の冬でも体温を保持していると考えられています。

長野県・地獄谷野猿公苑に住むニホンザルは、温泉に入るニホンザルとして世界的に知られていますが、この行動はこの地域に住むサルたちにのみ見られる珍しい行動です。ニホンザルの温泉入浴は、1963 年のある雪の日に初めて観察されました。餌付けをしていた地域の旅館「後楽館」の露天風呂で、雌の子ザルが温泉に入ったのが目撃されたのです。その後、この行動はほかのサルにも広がっていき、やがて衛生上の理由により、サル専用の温泉が野猿公苑内に設置されました。

2003 年までに、この群れの雌の 3 頭に 1 頭が定期的に温泉を楽しむまでになりました。なお、大人の雄はあまり温泉には入らないことが分かっています。この地域のニホンザルが冬により頻繁に温泉に入ることから、体を温めることがその目的であると推測されてはきたものの、それを裏付ける生理学的なデータは得られていませんでした。

2.研究手法・成果
同研究チームは、12 頭の大人の雌ニホンザルを対象として、4 月から 6 月の春の出産シーズン、および 10月から 12 月の交尾シーズンに、温泉入浴について検証を行いました。

それぞれのサルが温泉に浸かっている時間を調べ、どのサルがより長く温泉に浸かるかを確認しました。次に、冬の最も寒い時期に糞を採取し、糞に含まれるグルココルチコイドと呼ばれるストレスホルモンの代謝産物の濃度を調べました。これは、体温調節によるストレスが、グルココルチコイドの濃度に影響を及ぼすことが知られているためです。

その結果、雌のニホンザルは、春よりも冬、特に寒さの厳しい時期に、より頻繁に温泉に入っていることが確認されました。さらに、入浴行動とグルココルチコイド濃度との関連性を比較したところ、入浴が観察されなかった週よりも観察された週の濃度が低いことが分かりました。

この濃度の違いは、冬期のみに有意な差がみられ、春期は入浴の有無によるグルココルチコイド濃度の違いはみられませんでした。このことから、冬期においては、温泉入浴行動によってグルココルチコイド濃度が下がり、エネルギー消費とそれによる体温低下を緩和する働きがあることが示唆されました。

また、ニホンザルの社会性と入浴時間の関係についても検証を行いました。その結果、高順位の雌は、より長時間温泉に入ることができるためストレスホルモン(グルココルチコイド)のレベルが下がるものの、同時に、より頻繁に攻撃的な争いに関わることも多いために、順位の低い雌よりもストレスホルモンのレベルが高いことが明らかになりました。つまり、高順位の雌では、高順位にあることのコストと、温泉入浴から得られるプラスの効果とのトレードオフがみられるのです。

なお、地獄谷には毎日平均 500 人程度の観光客が訪れ、温泉に入るサルの観察を楽しんでいます。同研究チームが、観光客がサルのストレスレベルに与える影響についても研究を行ったところ、ストレスホルモンの上昇は見られませんでした。

3.波及効果、今後の予定
今回の研究により、ニホンザルでは、ヒトの場合と同様に、温泉によるストレス緩和効果があることが示唆されました。行動の柔軟性が、寒さへの適応、さらには繁殖や生存率を高めていると考えることができます。今後は、血清や唾液を用いた解析を行うことで、ストレスレベルのより詳細な変化を検出できると期待しています。

<論文タイトルと著者>
タイトル:Beneficial effect of hot spring bathing on stress levels in Japanese macaques
著者:Takeshita, R.S.C.; Bercovitch, F.B.; Kinoshita, K.; Huffman, M.A.
掲載誌:Primates DOI:10.1007/s10329-018-0655-x


【詳細は下記URLをご参照ください】
京都大学  2018年4月4日【PDF】発表
京都大学  ホームページ

2018年4月 4日 18:41 [研究報告]
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