東京都消費者被害救済委員会(会長 松本恒雄 一橋大学大学院法学研究科教授)から、「エステティック契約などの次々販売に係る紛争」(平成24年2月8日付託)の審議の経過と結果について、東京都知事に報告がありましたので、お知らせします。
■紛争の概要
申立人の主張による紛争の概要は、以下のとおりである。
•申立人は、平成21年12月、携帯電話に、痩身エステティック(以下「エステ」という。)の無料体験当選というメールを受け、無料エステを体験した後、岩盤浴・マッサージ等のエステコースの契約を締結した。
•その後、「併設のクリニックの治療コースの契約をすると3か月間はエステを何回受けてもよい。」「新たな契約をすれば現在受けている治療コースの既払金を返金する。」などと言われ、別の治療コースを次々に契約した。この他にも、エステティシャンから、「提携先の宝石を購入する場合、治療コースの既払金を返金する。」などと勧誘され、立て続けに2件の宝石の購入契約を締結した。
その結果、約4か月間で、合計6件、総額約240万円の契約を締結していた。
•申立人は、相手方に、約束の既払金を返金するよう何度も申し入れた。また、治療コースの契約であるにもかかわらず、受けたサービスはエステコースと同じ内容で、治療はほとんど行われなかったため、サービス内容に問題があると主張した。
これに対して、相手方は、既払金の返金手続を行わず、治療コースは医師の指導の下で行った施術であり問題はないので、解約を希望するなら、解約金を払うよう主張したため、紛争になった。
■解決内容
◎治療コースの契約は、実態としてはエステでありクーリング・オフが適用
治療コースの契約は、実態としてはエステの契約であり、特定商取引法第41条が適用され、法定書面不交付によるクーリング・オフが可能であるとして、治療コースの既払金約55万円を返還する内容であっせんし、合意した。
◎宝石の契約は、勧誘時の不実告知を認定し契約を取消
宝石の契約は、「治療コースの既払金を返金する。」という不実告知により締結させていることから契約の取消が可能であり、宝石代金など約41万円を返還するという内容であっせんし、合意した。
■主な審議内容
1 治療コースの契約の特定商取引法の適用について
治療コースの契約は、その名称にもかかわらず、実態はエステの契約であり、下記の理由から、特定商取引法第41条の特定継続的役務提供が適用され、法定書面不交付によるクーリング・オフが可能である。
(1) 治療コースの内容は、点滴のように純然たる医療行為の割合は非常に低く、大部分がエステコースの契約で提供されるサービス内容と同じものであった。
(2) エステコースに基づくサービスの提供と治療コースの一環で行われるエステ同様のサービスの提供は、その内容、提供の場所、施術者において同じ(施術者はクリニックでなくエステ業者)で、いずれの契約に基づくサービス提供であるか明瞭に区別して示されていなかった。
(3) 治療における通常の経過は、医師の問診の結果を踏まえて適切な治療内容を決定するものであるが、本件の契約では、契約締結後に一定期間を経て医師の問診が行われており、治療として選択がされたという実質を欠いていた。
2 勧誘時の不実告知等の問題について
(1) 宝石の契約について、治療コースの既払金を返金することで実質的に宝石の売買代金を減額すると告げたことは、売買代金の支払に係る条件についての不実の告知であり、契約締結の判断に影響を及ぼす重要な事項であるから、特定商取引法第6条1項3号、7号、第9条の3第1項1号により、また、消費者契約法第4条1項1号により、その意思表示を取り消すことができる。
(2) 宝石に係る2件目の契約は、クーリング・オフの処理が行われているが、申立人に解約手数料を負担させている。クーリング・オフが行使されると、消費者は一切の経済的負担を免れ、事業者は消費者に契約解除に伴う損害賠償や違約金を請求できない。
■同種・類似紛争の再発防止のために
1 事業者に対して
本件では,エステ業者とクリニックが同じフロアに同居し、従業員の区別もはっきりさせずに、エステと医療が混在した契約を次々に締結させている。エステと医療は区別して行うべきであり、本件のような営業方法は厳に慎むべきである。また、医療機関が治療の一環でエステサービスを提供する場合は、医師が主体的に関わるべきことは言うまでもないことである。さらに、事業者としては、理由もなく消費者に過量な契約を締結させることや誤認させることがないよう適正な勧誘を行うことが求められる。
宝石販売では、業務提携で関わったエステ業者の勧誘方法に不実告知がみられたにもかかわらず宝石販売会社はそのことを把握していなかった。業務提携する場合は、提携先の会社の販売方法などを予め調査し、その後も常に注意して、不適正な勧誘が行われないようにすべきである。
2 消費者に対して
継続的にサービスを受けるエステ契約の場合は、施術担当者から言われたことを拒否できない状況になって容易に過量な契約がなされることが起こりやすい。
消費者は、担当者の勧誘を鵜呑みにせず、その説明内容に不審な点はないか、また、自分にとって本当に必要な契約かどうかよく考えて、慎重に判断することが望まれる。
※別紙 東京都消費者被害救済委員会の概要
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/06/20m6i201.htm
※別紙 東京都消費者被害救済委員会委員名簿
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/06/20m6i202.htm
※別添 エステティック契約などの次々販売に係る紛争案件 報告書
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/06/DATA/20m6i200.pdf
お問い合わせ
東京都消費生活総合センター活動推進課
電話 03-3235-4155
※リリースの詳細は関連資料をご覧ください
【関連資料】
◎◎詳細情報URL/PDF
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/06/20m6i200.htm