この度、森永乳業株式会社 は、静岡県公立大学法人静岡県立大学 食品栄養科学部 との共同研究により、黄色ブドウ球菌由来膜小胞が誘導する炎症・アレルギー反応を微酸性電解水 (次亜塩素酸水) が抑制することを明らかにしました。
この研究成果を、日本食品科学工学会 第 68 回大会 (8 月 26 日~28 日 ・オンライン開催) にて発表しました。
森永乳業は、2019 年 10 月に、多くの人々の働く環境、それぞれの生活、そして健康を継続的に安全・清潔に維持できる社会の実現を目指す取り組みの一環として、微酸性電解水 (次亜塩素酸水) を活用し、「水」「衛生」「安全」「健康」「環境」等に関わる社会の様々な課題を解決する研究テーマを広く公募しました。この度、発表する静岡県立大学の当該研究を進めるにあたり、森永乳業より研究費の補助と、同社開発の電解水を提供しました。
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1.研究の背景と目的
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アトピー性皮膚炎患者の皮膚では、黄色ブドウ球菌が異常増殖し、本菌由来膜小胞 (以下、MVs) (図 1) により、その症状が誘導されることが報告されています。海外では、次亜塩素酸ナトリウムを溶かしたお風呂に入浴するアトピー性皮膚炎の治療法 (ブリーチバス療法) が治療指針に掲載されていますが、国内では研究段階です。そこで、次亜塩素酸ナトリウムと同様の殺菌剤であり、食品添加物に指定されている微酸性電解水 (以下電解水) に着目しました。
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2.研究の概要
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電解水を添加した培地で黄色ブドウ球菌を培養したところ、黄色ブドウ球菌の毒素 (エンテロトキシン A、以下 SEA) 産生量および病原因子関連遺伝子の発現量が減少しました。また、電解水を添加した培地で黄色ブドウ球菌を培養して得られた MVs 中の SEA 含有量は有意に減少し(図 2)、溶血活性や遊離鉄の取り込みに関わる複数のタンパク質の減少も認められました。さらに、MVs が誘導するアレルギー関連遺伝子の発現量を有意に減少させることが明らかになりました(図 3)。
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3.まとめ
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同研究の知見は、黄色ブドウ球菌由来 MVs を標的とした新しい制御メカニズムによるアトピー性皮膚炎の抑制法の開発につながることが期待されます。
演題: 黄色ブドウ球菌由来膜小胞が誘導する炎症 ・アレルギー反応に対する微酸性電解水の作用
発表者: 大浦由起乃 1,土屋まどか 1,山梨佑花 1,2,島村裕子 1,2,岩佐氏智 3,二階堂勝 3,山内恒治 3,鴨志田真弓 3,増田修一 1,2
1 静岡県立大 食品栄養科学部,
2 静岡県立大大学院 薬食生命科学総合学府,
3 森永乳業 (株 )
微酸性電解水は、生鮮品、飲料、酒類などの食品製造にとどまらず、外食産業、福祉施設などに利用が広がっています。森永乳業は、今後も“自然環境”、“衛生環境”、“職場環境”など様々なシーンにおける活用を模索し、サステナブルな社会実現に貢献するために、オープンイノベーションを推進します。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・森永乳業株式会社 2021年8月30日【PDF】発表
・森永乳業株式会社 公式サイト
・静岡県立大学 公式サイト