「水道水における放射性物質対策検討会」の第一回会合が2011年4月25日、厚労省で行われた。同検討会は、2011年3月11日の福島第一原発事故発生による周辺環境からの放射能検出が、今後も当面続くことが予想されることから、中長期的な水道水の安全性確保に万全を期すべく、有識者による今後の課題を検討するため、設けられた。
参加メンバーは、浅見真理氏(国立保健医療科学院生活環境研究部水管理研究分野上席主任研究官)、大原利眞氏(国立環境研究所アジア自然共生研究グループ広域大気モデリング研究室長)、橡田尚樹氏(国立保健医療科学院生活環境研究部長)、朝長万左男氏(日本赤十字社長崎原爆病院長)、古米弘明氏(東京大学大学院工学研究科教授)、眞柄泰基氏(トキワ松学園理事長)、桝本和義氏(高エネルギー加速器研究機構放射線科学センター放射線管理室室長)、森口祐一氏(東京大大学大学院工学研究科教授)の8人。
検討事項は、(1)水道水への放射性物質の影響メカニズムの検証(2)水道水の摂取制限の要請や解除に関する考え方(3)水道水中の放射性物質の低減方策(4)モニタリング結果を踏まえた中長期的な取り組み、の4項目。
この日はまず、橡田氏が放射性物質について、放射線被爆によるリスク・影響やその捉え方、放射線防護の線量の基準の考え方などについて解説した。
次に大原氏が、放射性物質の大気中の挙動について説明。まずは放出源から風などにより(1)移流・拡散し、(2)物理・化学的変化の後(3)除去(乾性・湿性沈着)の流れで、挙動が進むとした。そうしたことを踏まえ、原発事故発生からの放射性物質の大気中の挙動で大きな3回の大きなイベントについて、3月15日、16日の関東圏への流入は、北北東の風に乗り、直接流入し、一部は乾性沈着によって蓄積。3月21日には原発から北北東の風による新たな流入に加え、まとまった降雨があり、3月22日、23日付近の水道水中の濃度がピークとなったと推測した。
今後実施すべき取り組みとしては、ステップ1として、原発の放出情報、周辺の空間線量モニタリング情報の収集。ステップ2として、万一原発から大規模放出があった場合、風・降水データを解析し、要注意エリアを判断。そうした地域での監視を強め、水道水のモニタリングの強化を図ることを提言した。
最後に古米氏が、降雨による大気降下物の汚濁負荷について解説。汚染負荷は、湿性沈着(降雨負荷)と乾性沈着(降下塵負荷)を主たる負荷源とし、沈着した負荷は雨天時流出分と土壌蓄積分に分けられ、土壌蓄積分の流出や溶出は、放射性物質により異なることなどを説明した。
その後の参加メンバー全員による議論では「モニタリングと将来予測が混同されている場合がある。そうしたことにならないよう役割分担を明確にすべき」、「報道で空間線量などの扱いについて誤認されているケースがあるがキチンと発表する必要がある」などの意見が交わされた。最後に厚労省・大塚耕平副大臣が「放射能に関する発表は行政発表に加え、科学的裏づけも求められている。今後も専門家の方にこの場でしっかり議論をいただき対策を検討したい」と要望し、幕を閉じた。
第2回目の会合は引き続き、水道水への放射性物質の影響メカニズムを検討事項とし、さらに水道水中の放射性物質の低減方策、水道水モニタリング結果の評価および今後の取り組みなどについて議論する。5月中旬を予定する。