消費者が申し込んでいないのに、「商品を送る」と強引な電話をかけ、受け取りを拒否されても再度電話で勧誘し、商品を送りつけて代金を請求する健康食品販売業者の事例を紹介する。
■相談内容
知らない業者から、突然「以前申し込まれた健康食品を配達してよいか」と電話があった。心当たりがないと伝えたところ、「先月末に申し込まれている。商品は半年分送る」と言われた。そんなに要らないと伝えると、「それなら3カ月分にする。値下げもする」と言われた。数日後、代金引換配達で健康食品が届いたが、家族も申し込んでいないと分かったので受け取りを拒否した。その数時間後に業者から電話があり、「自分で申し込んだのだから支払え」と怖い口調で言われた。その後、再配達され、しかたなく代金を支払って受け取ったが、中には商品が1カ月分しか入っていなかった。そもそも自分は健康食品など注文していないので返金してほしい。
(80歳代 男性 無職)
■結果概要
相談を受けた国民生活センター(以下、当センター)が健康食品販売業者(以下、業者)へ連絡したところ、業者は理由を一切説明することなく「クーリング・オフに応じ、返金する。商品は開封してしまうと売り物にならないので、返送は不要である」と回答した。このため、当センターは相談者にクーリング・オフの通知方法を助言した。その後、相談者からクーリング・オフの通知を業者に発送し、業者からの返金が確認できたことから、相談を終了した。
■問題点
本件相談においては業者がすぐに解約に応じたため大きなトラブルにならなかったものの、業者の販売方法については、特定商取引法(以下、特商法)に定める「ネガティブオプション*1」に該当するのか、「電話勧誘販売*2」に該当するのかによって具体的な対応が異なるため、検討が必要である。
商品を申し込んだ覚えがなく業者からかかってきた電話でも断っているのに商品を送付してきた場合は、ネガティブオプションとなるが、業者からの電話で商品の購入を承諾してしまった場合には電話勧誘販売になると考えられる。
本件では、相談者は商品を申し込んだ覚えがなく、一度は受け取り拒否をしたものの、その後業者からの電話で強引に勧誘され商品の購入を承諾してしまっているため、電話勧誘販売に該当すると考えられた。
業者の販売方法や交付書面には問題があり、全国的に同種の相談が急増していたことから、業者に当センターへの来訪を求めた。その際、業者は、当センターに対し、健康食品の電話勧誘販売ではなく通信販売を行っていると主張した。しかし、業者が発行した書面には特商法に定めるクーリング・オフについての記載があった。その一方で、「お客様都合による返品・交換は原則として受けない」旨の記載もあるなど、業者は特商法を十分に理解していないと思われた。このため、当センターは、専門家にも相談したうえで書面の内容などを検討するよう、業者に強く求めた。その後、業者は書面を修正したが、なお特商法の規定を満たした書面とはいえないものであったため、さらにトラブルが減るよう努力を求め、引き続き注視を続けることとした。
一方、業者が代金引換配達サービスを利用して消費者から商品代金を回収していることから、当センターは、業者と代金引換配達のサービス加盟店契約をしている配送業者に対し、業者に関するトラブルについて情報提供した。すると、配送業者からトラブルの解決に対しての協力が得られた。
あたかも以前に商品購入の申し込みを受けたかのような電話を消費者にかけることによって、消費者を誤認させて健康食品を購入させるという、同様の手口は全国で増加している。当センターは、トラブルの未然防止・拡大防止のため消費者へ注意喚起を行っており*3、また消費者庁などは複数の業者を特商法に基づき行政処分している。
※詳細は下記URLをご参照ください
◎申し込んでいない商品を強引に送りつける健康食品販売業者
国民生活センター 2013年5月28日発表
http://www.kokusen.go.jp/jirei/data/201305_1.html