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季節性インフルエンザを高感度測定できる簡易診断法を開発/東京都

東京都インフルエンザ特別研究として、(公財)東京都医学総合研究所・芝崎太参事研究員らは、従来の方法と比較し、季節性インフルエンザA型およびB型ウイルスを同時にしかも簡易・高感度で検出できる2種類のイムノクロマトの開発に成功しました。

一つは高感度蛍光イムノクロマトキットとその測定機器で、従来よりも100倍以上の高感度を達成し、鼻咽頭ぬぐい液ならば発症3時間以内でも検出可能になりました。二つ目は、感度が従来よりも10倍の高感度でありながら測定機器を使わず2種類の検出をカラーの色合いで識別できるカラーイムノクロマトです。屋外や電気設備場ない場所、価格の問題で測定機器導入が難しい場合などでは、蛍光イムノクロマトよりは感度が落ちるものの、A型、B型の判定をカラーで同時に目視判定できるカラーイムノクロマトの使用が考えられます。

今回開発した2つイムノクロマト法では、A型、B型の両方を同時に高感度で検出でき、しかもA型の検出においては、鳥インフルエンザを起こすH5N1ウイルスの他にもH2、H3、H7、H9など、これまでアジア各国で発生しているウイルス亜型株や、今後発生する可能性のある亜型株のすべて検出できるため、一次スクリーニングには大きな威力を発揮することが期待されます。また、これらのイムノクロマトは、検出する抗体を代えるだけで、他の感染症にも容易に応用できるため、国内だけでなく発生地区や、空港など感染症が侵入する第一線現場での使用が可能となります。

なお、この開発は東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合(TOBIRA、理事長:田中啓二)の組合員であるシンセラ・テクノロジーズ株式会社(東京本社、代表取締役 村口和孝)、コニカミノルタ株式会社(東京本社、代表執行役社長:松崎正年)、アドテック株式会社(大分本社、代表取締役:渡辺幹雄)、および北海道大学・大学院獣医学研究科(迫田義博教授)の産学連携によるものであり、2つのイムノクロマトは、すでに2014年6月には厚労省の認可を得ており、カラーイムノクロマトは2014年12月からすでに販売されています。また、高感度蛍光イムノクロマトは早期販売に向けた製造が進められているところです。

この研究成果は、蛍光イムノクロマト法が米国科学雑誌「PLOS One(プロスワン)」の2015年2月4日(米国東部時間)付オンライン版で発表されました。カラーイムノクロマトは、米国科学雑誌「Journal of Virological Methods」に2014年9月10日に発表されました。

■研究の背景
H1N1ウイルスによるA型やB型の季節性のインフルエンザは最近では毎年発症し、さらには新型インフルエンザとして、2009年に発生したパンデミック(世界的流行)を起こしたブタ由来新型インフルエンザ(H1N1)に加え、家禽や渡り鳥の間で流行している鳥インフルエンザではH5N1ウイルスおよびH5N2ウイルス、さらには今年中国で発生したH7N9ウイルスによる感染例が報告されています。
季節性インフルエンザ(A型、B型)では、現在、簡易型のイムノクロマト法により10-15分程度で診断が可能ですが、検出感度が余り良くないため、発症直後(1~2日以内)などの早期には陰性になる事が多く、24時間以内の早期の治療薬の投与が難しいことが指摘されております。
また、今年発症が確認された中国でのH7N9ウイルスでは、鳥での発症だけでなく人から人への感染例が報告され、今後大流行する可能性も指摘されています。さらに以前から問題になっています鳥インフルエンザ(H5N1)では、全世界で500名以上の感染例があり、60%近い致死率を示すなど高病原性を持つことが報告されており、今後世界的な大流行の危険性も危惧されています。このため高感度で、H変異株すべてを検査可能な高感度で簡易な検査法の確立が望まれていました。

■開発の内容
東京都は平成20年よりこれらの危険なインフルエンザへの対応として、診断法、治療薬の開発を進めてきました。この度、(公財)東京都医学総合研究所の芝崎等は、東京バイオマーカー・イノベーション技術研究組合の各社、各大学、都立病院などの臨床病院との産学医連携にて、従来のイムノクロマト法の100倍以上の高感度で季節性A型およびB型インフルエンザウイルスを検出できる高感度蛍光イムノクロマトとその検出機器の開発に成功しました。この方法では、従来の金コロイドを使用する方法に代え、蛍光色素を抗体に結合させた蛍光イムノクロマト法を独自に開発し、さらにこの蛍光色素を高感度に測定できる小型検出機器を開発することで高感度化に成功しました。

(1)高感度蛍光イムノクロマト法では、蛍光イムノクロマトリーダー(測定機器)を用いることで、通常の鼻咽頭ぬぐい液にて、最長15分以内にA型、B型の両方を同時に100倍以上の高感度で検出できます。この方法は鼻咽頭拭い液を用いて、従来法と同じ手順、同じ時間内(最長15分以内)で高感度に測定可能です。臨床試験では通常の鼻咽頭ぬぐい液を用いたA型判定の場合、発症12時間以内に97%の患者さんで陽性判定が可能でした。中には発症3時間以内の患者さんでも検出可能であることが実証されたため、発症早期の診断による治療開始が可能となります。

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(2)カラーイムノクトマトは、従来よりも10倍の高感度ですが、測定機器が不要でカラーによる識別のために読み違いがなく診断できます。蛍光イムノクロマトよりは感度が落ちるものの、屋外や電気設備場ない場所、価格の問題で測定機器導入が難しい場合に有用です。

C:コントロールライン(緑):イムノクロマトが正常に働いている場合は常に染まる
A:A型インフルエンザウイルスが陽性の時、赤のバンドが出現
B:B型インフルエンザウイルスが陽性の時、青のバンドが出現

■今後の展望
今回開発した高感度蛍光イムノクロマトでは、100倍の高感度化が達成されたため、患者さんによっては発症3時間以内に診断できることも実証されました。これにより従来では発症早期(特に12時間以内)に陰性で処方できなかった薬剤を処方できるようになることや、将来的には簡便な咽頭のぬぐい液を用いて薬局などで診断が可能なることが予想されます。一方、カラーイムノクロマトは、従来品より10倍の感度でありながら、測定機器が不要なため、小さなクリニックでも容易に導入できます。将来的には製造価格も安く抑えられるため、アジア各国などインフルエンザ発生地区において、初期診断やサーベイランスにも用いることが期待されます。

今回、北海道大学・迫田義博教授との共同研究にて行った自然分離株での検定では、両方のイムノクロマトでも、A型判定で、H1N1(2009年の新型インフルエンザも含む)を始めとするH2、H3、H5N1(高病原性トリインフルエンザ株)H7、H9の各亜型株すべてを検出できることが判明しました。季節性インフルエンザA型、B型以外は保険点数外になりますが、高病原性トリインフルエンザのパンデミックや新しいタイプのインフルエンザ発生の際には、空港、クリニックなどでも使用可能であり、診断の補助手段として早期の発見だけでなく、ワクチンや治療薬の準備、囲い込みの効率化におおきく寄与できることが期待されます。
さらに、これらのイムノクロマトは、検出する抗体を代えるだけで、他の感染症にも応用できるため、現在問題となっているデング熱、エボラなどの新興感染症の際のウイルス検出への応用も可能です。

【問い合わせ先】
(公財)東京都医学総合研究所分子医療プロジェクト
電話 03-5316-3299
(公財)東京都医学総合研究所事務局研究推進課
電話 03-5316-3109

◎東京都 2015年2月5日発表
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2015/02/20p25100.htm

◎東京都
http://www.metro.tokyo.jp/

2015年02月06日 17:35