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米原料の新規ゲル状食品素材の製造法を開発/独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

 農研機構(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)は、高アミロース米1)(水稲品種モミロマン等)を製粉せずに粒のまま水を加えて炊飯・糊化させ、温度制御と高速撹拌等の操作でゲル状の新規食品素材を製造する技術を開発しました。

   本技術により製造されるゲル2)状の食品素材は、水分量等を調整することで、やわらかいゼリーから、高弾性のゴム状のものまで、幅広く物性の制御が可能であるため、プリン、ムース、クリーム、パイ等の多様な食品の製造ができ、シュークリームのシューとクリームの原料の小麦粉をすべて米に置き換えることも可能です。また、様々に物性を制御できることから、卵、油脂等の使用量を減らした洋菓子類が製造できるので、低カロリー食品の開発が可能となり、小麦・卵を使わない食品への利用も期待されます。さらに、もちもち感のある米麺、餅様食品を作ることもできます。

   高アミロース米は粘りが少なく炊飯米には不向きとされてきましたが、本技術の適用により用途拡大が期待されます。また、地域産の米を利用した高付加価値商品の開発等を通じて、農業の6次産業化の推進への貢献も期待されます。

◎詳細情報
背景と経緯
1.わが国の食料自給率が低下した要因の一つに、主食としての炊飯米(ご飯)の消費が減少し、輸入穀物を主原料とする食品(パン、麺等)が増加したことがあります。これに対し、国内で生産可能な米をパン、麺等の食品に活用することで食料自給率の向上を図る施策に則った研究開発が行われ、米粉を使用したパンの普及等が進展しています。
2.農研機構は、米の利用拡大のための研究を進める中で、米の効率的なゲル加工技術を見出し、平成24年度より、実用技術開発事業24008「高アミロース米のダイレクト糊化による低コスト高付加価値食品の開発」において、1洋菓子・和菓子、2パン、3麺などの低コスト・高付加価値の米加工食品の技術開発に取り組んでいます。

成果の内容・意義
1.本技術により製造されるゲル状の食品素材は、物性を様々に調整できるため、パン、麺のみならず多様な菓子への利用が可能です。これにより米の新規需要創出が期待されます。また、卵、油脂等の代替素材として使うことにより、低カロリー食品等の新たな食品開発が期待されます。
2.製粉工程が不要となり、また、最終的な加工食品までの作業工程も簡略化できる可能性があります。
3.本技術は、モミロマンだけではなく、他の高アミロース米品種にも適用できる可能性があり、高アミロース米の新用途開発が期待されます。
4.本技術は、バッチ生産3)であれば、中小の事業者が実施することも可能であり、地域産の米を利用した高付加価値商品の開発などを通じて、農業の6次産業化の推進への貢献が期待されます。5.本技術はFOOMA  JAPAN 2013(国際食品工業展2013、一般社団法人 日本食品機械工業会主催 平成25年6月11~14日開催)においてアカデミックプラザ賞、グランプリ(最優秀賞)を受賞しました。

今後の予定
農研機構は今後、ゲル化現象の機構の解明に向けての研究を進めるとともに、民間企業と連携し、大量生産技術、物性制御技術の高度化、民間企業での商品開発を促進することとしています。

用語解説
1)高アミロース米
コメの主成分である澱粉はアミロースとアミロペクチンとで構成され、アミロースの比率が高い米を指す。アミロース含量が高い米は、粘りが少ないため炊飯米には不適であるが、カレーやピラフ、米粉麺などに利用される。代表的な日本の高アミロース品種としては、「モミロマン」、「夢十色」、「北瑞穂」、「越のかおり」等がある。

2)ゲル
柔らかい個体状の物質。例として、ゼリー、寒天、豆腐等があげられる。

3)バッチ生産
ある一定量をまとめて一度に生産する方式。これと対になる連続生産は、切れ目なく生産する方式。

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【お問合せ】
研究推進責任者
農研機構食品総合研究所
食品素材科学研究領域長 門間美千子

研究担当者
農研機構食品総合研究所
食品工学研究領域 計測情報工学ユニット長 杉山純一

広報担当者
農研機構食品総合研究所
情報広報課長 濱野保文
Tel 029-838-7992 Fax 029-838-7996

◎独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構  2013年10月22日発表
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nfri/048823.html

2013年10月23日 10:38

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