オリザ油化株式会社（愛知県一宮市）は、女性ホルモン様作用を訴求点とした素材であるアグアヘエキスを2018 年に上市し、採用実績を増やしている。アグアヘ（Maurutia flexuosa）はペルー、ブラジルなどの南米のアマゾン川流域で栽培されているヤシ科植物の果実である。その果肉はカロテノイドを含み黄色からオレンジ色をしており、現地では菓子やジュース、氷菓にも加工され、嗜好品として親しまれている。生理活性としては、コレステロール低下作用、抗酸化作用などが知られている。また現地では豊胸作用があるといわれており、日本のテレビでも紹介されている。当社では、現地の伝承に着目し、アグアヘエキスにマイルドな女性ホルモン様作用があることを学術的に証明し、報告してきた。さらに、一般に女性ホルモンには抗男性ホルモン作用があると認知されている 1)ため、当社はその作用に着目し、アグアヘエキスの新規機能性として抗男性ホルモン作用を検討した結果、新規に前立腺肥大抑制作用を見出した。
参考文献
1) 内山成人、大豆由来の新規成分”エクオールの最新知見”、日本食品科学工学会誌、62、P36-43 （2015）．近年、日本は高齢化が進んでおり、超高齢化社会へ突入している。高齢化に伴って罹患率が増加する病の一つとして前立腺肥大症が挙げられる。前立腺肥大は、30 歳代から始まり、50 歳で 30％、60 歳で 60％、70 歳で80％、80 歳では 90％の罹患率である。前立腺は尿道および膀胱を取り巻く組織であるため、肥大すると膀胱の平滑筋が緊張してしまい、これが原因で、残尿感、頻尿が増え、夜ぐっすり眠ることができないなどの患者のQOL の低下を招くことになる。
今回、アグアヘエキスが前立腺肥大モデルマウスに対して前立腺重量の減少が確認された（図 1）。さらに、摘出したマウス前立腺中の前立腺炎症マーカーである前立腺特異的抗原（PSA）の遺伝子発現量も減少していることからアグアヘエキスによる前立腺肥大抑制作用を確証づける結果となった（図 2）。さらに、前立腺肥大抑制作用の活性成分を明らかにするために、ヒト前立腺由来癌細胞である LNCaP 細胞を用いてアグアヘエキスから単離された成分を評価した結果、メトキシフラバン類に PSA タンパク質および遺伝子発現量の減少が確認された。よって、アグアヘエキスによる前立腺肥大抑制作用はメトキシフラバン化合物が寄与していることが示唆された。
前立腺肥大の原因としては、ジヒドロテストステロン（DHT）による前立腺細胞の増殖が原因として認知されている。この DHT は、テストステロンが体内酵素の 5α-レダクターゼによって生成される物質である。そこで、アグアヘエキスの前立腺肥大抑制作用の作用機序を確認するために、前述した 5α-レダクターゼ阻害作用の評価試験を実施した。その結果、アグアヘエキス濃度依存的に 5α-レダクターゼ阻害作用を有し（図3）、含有成分についても評価した結果、 in vitro にて前立腺肥大抑制作用が確認された４種のメトキシフラバン類に 5α-レダクターゼ阻害作用を見出した（図 4）。これらの 5α-レダクターゼ阻害率は、5α-レダクターゼ阻害作用を有すると報告されている(S)-Equol（エクオール）よりも IC50 値（阻害率が 50%である濃度）が低い結果となった（表 1）。よって、アグアヘエキスより単離された４種のメトキシフラバン化合物はエクオールよりも強い阻害活性であることが認められた。
これらの結果をまとめると、アグアヘエキスに前立腺肥大モデルマウスにおいて前立腺肥大抑制作用を見出し、その作用機序は 5α-レダクターゼ阻害作用であることを明らかにした。尚、男性ホルモン受容体（AR）のタンパク発現量には影響を与えないことも確認しているため、テストステロンによる作用（筋肉・骨量の増加作用）は損なわれず、前立腺肥大抑制作用を主作用とする効果であることが示唆された。尚、この結果は特許申請中である。
アグアヘエキスには、女性に対して不定愁訴の改善およびバストアップなどの効果が臨床試験でも明らかになっており、男性に対しても高齢化に伴って発症する前立腺肥大の抑制作用が期待できる。よって、アグアヘエキスは女性のみならず男性にもおすすめできる製品である。さらに、弊社製品である過活動膀胱抑制作用を持つ「シーベリーエキス」との併用によって男女の悩める頻尿対策処方として PR していきたい。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・オリザ油化株式会社 （発表記事）
・オリザ油化株式会社 公式サイト
