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温州(うんしゅう)みかん由来β-クリプトキサンチンの尿酸値低下作用を学会で発表/ユニチカ

ユニチカ(株)中央研究所は、温州(うんしゅう)みかん搾汁残さから抽出したβ-クリプトキサンチンの摂取によって、食餌性の高尿酸モデルラットおよび軽度高尿酸血症のヒトにおいて、血中尿酸値の低下作用があることを見出す結果が得られました。この結果につきましては、3月24日から開催されます日本農芸化学会2013年度大会(東北大学)にて「高尿酸モデルラットと軽度高尿酸血症患者においてβ-クリプトキサンチン摂取は尿酸値を低下させる」として発表し、トピックス賞として選出されました。

1.開発の経緯
β-クリプトキサンチン(図1)は、温州みかん・パパイアなどに多く含まれる橙色の色素で、ニンジンに多く含まれるβ-カロテンや、トマトのリコペンなどと同じカロテノイド※1の1種です。β-クリプトキサンチンは、日本固有種である温州みかんに特異的に多く含まれ、その含有量と生産量から考えて、温州みかんが唯一の供給源であるといっても過言ではありません。
 一方、尿酸は食物から取り込まれる他に、遺伝情報であるDNAを構成するプリン体を体外に排出するために変化した物質で、腎臓で濾過され、尿とともに体外に排出されます。また、アルコールが体内で分解される際にも尿酸が産生することがわかっています。血中尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が長く続くと、尿酸が関節などで結晶化し、痛風を発症します。高尿酸血症はその他にも、心疾患、脳血管疾患などを引き起こす生活習慣病のリスク因子になることが近年わかっています。高尿酸血症の患者は500万人以上にのぼり、増加傾向にあるため、簡単に摂取でき、尿酸値を低下できる安全な食品素材の開発が求められていました。今回、β-クリプトキサンチン(粉末タイプと乳化タイプ)(図2)を用いて血中尿酸値への影響を確認したところ、尿酸値低下作用が認められました。20130327_n01_001.jpg
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2.食餌性高尿酸モデルラットにおけるβ-クリプトキサンチンの尿酸値低下作用
 ラットに対してプリン体の1種であるイノシン酸を添加した飼料を20日間摂取させて食餌性高尿酸モデルラットを作製しました。イノシン酸を通常飼料に1%添加することによって、通常飼料を摂取させたラットに比べ、血中尿酸値が有意に上昇しました。一方、イノシン酸と同時にβ-クリプトキサンチン(粉末タイプ)をβ-クリプトキサンチンとして0.02%となるように通常飼料に配合し、摂取させたところ、尿酸値の上昇抑制が観察され、通常飼料を摂取しているラットと同程度まで血清尿酸値が低下することが分かりました。(図3) 20130327_n01_02.jpg
 次に、尿酸値低下作用の作用機序を解明するために、ラット腎臓における尿酸の排出・再吸収に関与している遺伝子の発現量解析を実施しました。その結果、尿酸の再吸収に関与していると考えられるURAT-1※2の発現量がβ-クリプトキサンチンの摂取によって通常飼料摂取のラットと同程度まで正常化することが明らかとなりました(図4)。20130327_n01_004.jpg尿酸は血中より腎臓の糸球体でほとんどが濾過され、尿中へと排出されますが、URAT-1など尿酸トランスポーターの働きで血中へ再吸収されます。イノシン酸投与により過剰発現したURAT-1の発現量を、β-クリプトキサンチンは正常化し、尿酸の尿中への排出を促進することにより血中尿酸値を低下することが示唆されました。
 
 3.軽度高尿酸血症患者におけるβ-クリプトキサンチン(乳化タイプ)の尿酸値低下作用
 臨床試験の趣旨、方法などについて十分な説明を行ったうえで、試験に参加することに同意した血中尿酸値が7.0mg/dl以上で、現在治療などで薬剤を摂取していない成人男性(9名、42.9±6.7歳、BMI=23.9±1.8)を対象として臨床試験を実施しました。試験はβ-クリプトキサンチン(乳化タイプ)を配合した100ml の試験ドリンク(β-クリプトキサンチンとして0.2mg/100ml)を1日1本、6カ月間摂取するものであり、開始前と試験ドリンク摂取2カ月毎に、血清β-クリプトキサンチン、血清尿酸値、肝機能マーカー(γ-GTPなど)、心血管マーカー(CPK、LDH)、血清脂質(T-Cho、TGなど)の測定と、アンケートを実施しました。また、本試験への影響を避けるため、試験期間内はβ-クリプトキサンチンを多く含む食品やビタミンAが意図的に配合された食品・サプリメントなどの摂取は禁止しました。
 その結果、β-クリプトキサンチン配合ドリンクを摂取することで血清β-クリプトキサンチンは上昇しました。それに対して、図5に示すように尿酸値はβ-クリプトキサンチン配合ドリンクの摂取とともに徐々に低下し、4カ月以降は有意に尿酸値の低下が認められました。この尿酸値低下作用は、元々の尿酸値が高い被験者ほど顕著でした。

 前述のとおり、痛風やその他生活習慣病のリスク因子の1つでもある高尿酸血症に対して、β-クリプトキサンチンは、尿酸値を低下する作用を有していることを初めてヒトで確認しました。また、各種生化学マーカーなどには全く影響を及ぼしておらず、β-クリプトキサンチン配合ドリンクを毎日1本、継続摂取するだけで、尿酸値の低下が達成できたことになります。
 また、β-クリプトキサンチンの作用機序としては、腎臓において尿酸の再吸収に関わるトランスポーターであるURAT-1の過剰発現を抑制して、尿酸の再吸収を正常化することにより、尿中への尿酸の排出を促進することが示唆されています。このメカニズムを簡単に図6に図示しています。
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 一方、高尿酸血症は肥満者に発症しやすく、高血圧、高インスリン血症、脂質代謝異常などの心疾患リスクの合併頻度が高いことでも知られています。別の検討によって我々はβ-クリプトキサンチンを含む試験ドリンク(β-クリプトキサンチンとして0.25mg/100ml×2本/日)の12週間摂取によって、メタボリックシンドロームの発症因子である内臓脂肪の低減作用があることを明らかにしています※3。本報告の尿酸値低下作用と合わせ、β-クリプトキサンチンには総合的なメタボリックシンドローム予防・改善作用が期待できます。

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※1 カロテノイド
天然に存在する色素の一群の総称。炭素数40からなる直鎖型の化合物で、非常に抗酸化性作用が強い物質です。カロテノイドの一種であるβ-カロテン、β-クリプトキサンチンなどは摂取するとビタミンAへと変換されます。
※2 URAT-1
血中の有機酸と尿中の尿酸を交換することで、腎臓の糸球体で尿へと排出された尿酸を血中に再度取り込む作用(再吸収)を持つ尿酸トランスポーター。
※3 参考文献
土田隆ほか:薬理と治療、36、247-253(2008)

【お問合せ】
ユニチカ株式会社 中央研究所
TEL:0774-25-2249
FAX:0774-25-2263

2013年03月27日 12:24