CIDESCO―NIPPON (CIDESCO日本支部)は、 9月12日~14日の3日間、 国立京都国際会館で第58回CIDESCO世界会議を開催した。日本では28年ぶりの開催ということも相まって会場には全国各地から現役エステティシャンが集まった。 エステティックに関する研究発表、機器用具用材の展示会や、 各種コンテストも行われ、 国際的な知識・技術のレベルアップのための情報交換や交流が図られた。
ゆっくり単調なリズムでリンパドレナージュ実演
13日午後のセッションではCIDESCOオランダ支部広報担当で、 美容専門家のコンスタンス・ベッティング氏が 「マニュアルリンパドレナージュ」 について講義した。
はじめに、 ベッティング氏は自己紹介とマニュアルリンパドレナージュを知ったきっかけについて 「私自身は1967年エステティシャンの資格を取得し、 マッサージに関する技術を色々なところへ出向き学びんだ。 本も執筆している。 その中で今日お話するマニュアルリンパトレナージュと出会った。 マニュアルリンパドレナージュは柔らかいタッチでマッサージする。 まるで、 瞑想のようなもの。 私が一番好きなマッサージ」 と語った。
続いて、 マニュアルリンパドレナージュの理論や背景を説明した。
「現代女性はストレスや疲労で悩んでいるが、 その主な症状として、 肩こり、 むくみと冷え症が挙げられる。 これはリンパの流れが悪くなっているのが原因であり健康を保つためには循環をよくすることが重要だ。
リンパは血液の一部でリンパの流れは筋肉の収縮と弛緩により引き起こされる。 身体には800ものリンパ節があり、 そこで抗体やリンパ球が作られ異物が侵入するのを防いでいる。 リンパは各細胞に酸素と栄養素を運び、 各細胞から細胞の老廃物を回収する役割を持つ。 例えるならば、 身の周りの世話をしてくれる家政婦のようなもので、 身体を健康な状態に保ってくれる。
デンマーク人のエミール・ヴォデール博士は、 1936年にこのマッサージを開発し、 彼は妻のエストリッド・ヴォデール夫人と生涯をかけてリンパドレナージュの研究を行った。 そして、 リンパ浮腫と免疫力の向上に効果があることを遂に突き止めた。
マニュアルリンパドレナージュはリンパの循環が高まり身体の機能を高めるだけでなく、 エステティックのトリートメントとしても利点がある。 皮膚の再生や酒さ (しゅさ、 顔面が赤くなる症状)、 クープローズ、 浮腫、 フェイスリフトなどをした後の血腫や、 毛細血管拡張状態などに有効だ。 一方、 ガンなどの悪性疾患や感染を伴う急性炎症、 急性アレルギー症状の時は絶対に避けなければならない」
最後に、 浴槽の例を挙げながら実際のマッサージ方法やその目的について講義した。
「浮腫は浴槽の排水口がつまり浴槽の水が溢れた状態に例えることができる。 このマッサージの目指すところは、 その排水口のつまりを解消し平衡状態を保つところにある。
技術としては皮膚の上をこするのではなく、 皮膚と一緒に動かして円を描くようにマッサージするとよい。 リンパは最終的に鎖骨の下の静脈に辿りつくため、 リンパの流れを良くするためにはこの部分を流すことが重要。 早すぎるマッサージはむしろ逆効果になる。 ゆっくり、 ゆっくりと、 単調なリズムで行うようにして欲しい」
会場は学生や現役エステティシャンなどで、 1階はほぼ満席の状態となり、 熱気に溢れた。 会場中央でベッティング氏の施術が始まると受講者は熟練したハンドテクニックを食い入るように見つめていた。
「陰陽五行セラピー」講演日本ボディーケア谷口学院長
13日午後のメインホールでは、 日本ボディーケア学院の谷口光利学院長が 「陰陽五行セラピー」 をテーマに講演を行った。
はじめに谷口氏は陰陽五行セラピーにいきつくまでの経緯を話した。
「18歳で関西医療学園専門学校に入学し在学当時からペインクリニックや鍼灸院等で臨床経験を積んできた。 卒業後は整形外科で働いていたが 『どうせやるなら一番になりたい』 と思い中国広州中医葯大学に1988年に入学した。 当初、 2年間留学の予定だったが1989年に天安門事件で一時大学で学べなくなった。
『さてどうしようか?』 と思っていた時に、 ベルギー人の友人が、 病院の働き口を見つけてくれベルギーで働くことになった。 その後、 整骨院やエステサロンなどで働いているうちに自分のやっていることが美容にも使えるということがわかった。 自分が学んだことを美容に生かすといったことを実践するうちに、 エステの協会や化粧品メーカーなどから講演の依頼もくるようになった。 今から10年前に日本ボディーケア学院も設立した。
しかし、 自分自身で色々と学びながら教鞭をとり、 多くの生徒達を送りだす中で、 常に心の中で 『これでいいのか』 という葛藤があった。 そこで学び直したのが陰陽五行説だった。 学び直していくうちに学生の時には気付かなかったことに色々と気付き陰陽五行セラピーとしてまとめた」
そして谷口氏は 「この陰陽五行セラピーのもとにある中医学はアロマの理論に非常に近い。 例を挙げると、 アロマの理論でサンダルウッドは老化した肌に良いといわれているが、 サンダルウッドは日本名ではビャクダンという。 ビャクダンは日本でいうところの漢方、 つまり中医薬の理論では冷えからくる痛みにいいといわれる。 実は、 中医学を学ぶとアロマを違う形で応用することができる」 と話し、 陰陽五行セラピーを学べば東洋医学とエステティックの融合、 コリ・疲労・冷えの解消、 お客に対して 「なぜ効果がでるのか」 を明確に説明すること、 体のラインを整えること、 新しいフェーシャルの創造、 正しい足の使い方を知ることができると語った。
続いて、 その背景にある 「陰陽説」 「五行説」 をそれぞれ説明した。
「陰陽説というのは森羅万象を陰と陽の2つに分けるという考え方だ。 この陰陽のバランスが何事においても重要になってくる。 例えば天地で例えると天は陽、 地は陰となる。 この均衡を保つことが、 施術をしていく上でポイントとなる。 五行説というのは木、 水、 火、 土、 金の5つの要素のバランスが整っていることをいう。 この理論は身体にもあてはめられる」
その後、 陰陽五行説に基づいた実際のボディーケアの方法について、 ステージ上で実演を行ってみせた。
最後に、 谷口氏は 「皆さんもぜひ明日から今日学んだことを生かして欲しい」 と話した。
※CIDESCO とは……
エステティック、 メークアップ、 化粧品学などに関する知識と技術、 器具・用材などの各国間の格差是正、 国際的なレベルの向上、 および世界的なエステティックの普及と促進を目的として、 1946年にベルギーで設立されたエステティック団体。 関係技術者、 学識経験者などによって構成され、 現在34カ国が加盟している。 CIDESCO世界大会は世界各国で開催されており、 世界会議には世界中から多数のエステティシャンが参加し、 加盟各国代表による総会が行われている。