「第8回 健康食品の表示に関する検討会」が2010年4月14日、都内で行われた。論点整理へ向けた意見交換の最終ラウンドとなったこの日は、これまでの議論を踏まえ、各委員がそれぞれの立場からポイントを整理した形で健康食品の表示について、意見を出し合った。
最初に、消費者庁が前回の検討会で議題に上がった“レベル別表示”の事例を紹介。WHOが2003年に発表したテクニカルレポートに記述された科学的根拠の強さの分類例を示した。分類は4段階で「確実な根拠」、「おそらく確実な根拠」、「可能性がある根拠」、「不十分な根拠」となっている。根拠の強度が高いものは、曝露と疾患の間に一致する相関関係があることを疫学研究などにより示されているもので、「不十分な根拠」では相関関係を示すのに不十分で調査がさらに必要なもの、となっている。
続いて、太田委員が健康食品を選択する上で分かりやすい表示、として意見を提示。「目が疲れる方に」「関節が気になる方に」「血管機能の維持」など摂取対象者とその対象成分を表示し、商品へはこれらのほかに医薬品ではない旨を明記し、摂取目安量、注意喚起表示を表記する案を示した。対象成分については、一定レベルの有効性があるものとし、そうしたことを担保するものとして、第三者機関等による認証マークなどの採用を条件とした。その上で、摂取対象者表示例は薬事法の解釈で問題になることから、行政側への協議を要望した。
宗林委員は、健康食品表示の規制のあり方と機能性表示について提言。インターネットでの監視については、定期的・継続的なものとすることを要望し、違反広告の一定の抑止力になるとして、事業者名公表の基準の改定を訴えた。また、特に健康食品に多い苦情情報について、国民生活センター、市民団体、医師会等で把握している苦情情報の集約の必要性をアピールした。機能性表示については、トクホにおける試験のあり方の見直しや、摂取における条件、対象者等の表示方法や情報提供の徹底を求めた。さらに規格・基準型の拡張も提案した。
現行法の機能の最大化を見据えた意見が飛び交う中、弁護士の中下委員は、抜本的な部分へ向けた意見を提示。「トクホ制度により健康食品問題は解決すると思われたが、一向に改善されない。原因は健康食品に対する規制が不十分なため。従って健康食品を対象にした新しい法律を制定することが必要。仮に出来ないなら構造的欠陥のある現行法制度下では現行の健康増進法を改正し、栄養機能食品、トクホを除くいわゆる健康食品の一切の健康にかかる表示・広告を禁止すべき」との見解を示した。
あいまいな健康食品の定義を明確化するアイディアとしては、神山委員から有機JASの事例が参考になる、との提案もあった。そのほかにも各委員からさまざまな意見が飛び交ったが、全体としては現状を踏まえつつも「消費者にいかに分かりやすく」、「薬事法に抵触しないか」をポイントに、位置付けがあいまいな健康食品を意義あるモノとして活用できる表記、その周辺の仕組みづくりが、次回からの論点整理へ向けた大きなテーマとしてあぶりだされた。
その大きな柱のひとつとして浮上した“レベル別表示”については、田中座長から浜野委員と林委員に「レベルそのものの基準づくり」が次回検討会での課題として託された。次の検討会は5月18日に行われ、いよいよ論点整理へ入り、3度の会合を経て、意見を集約する。
【出席者】
(委員)
太田明一 健康と食品懇話会相談役
神山美智子 食の安全・監視市民委員会代表・弁護士
神田敏子 前全国消費者団体連絡会事務局長
佐々木敏 東京大学大学院医学系研究科教授(座長代理)
宗林さおり (独)国民生活センター調査役
田中平三 甲子園大学学長(座長)
徳留信寛 (独)国立健康・栄養研究所理事長
中下裕子 中央大学法科大学院客員教授・弁護士
浜野弘昭 NPO法人国際生命科学研究機構事務局長
林裕造 (財)日本健康・栄養食品協会理事長
山根香織 主婦連合会会長
(事務局)
内田俊一 消費者庁長官
田中孝文 消費者庁次長
原敏弘 消費者庁審議官
相本浩志 消費者庁食品表示課長
平中隆司 消費者庁食品表示課長補佐
芳賀めぐみ 消費者庁食品表示課衛生調査官