(財)医療経済研究・社会保険福祉協会(東京都港区、幸田正孝理事長)は2010年10月15日、「『健康』の維持増進を目指した『食品機能』の総合戦略」と題した報告書を公開した。昨年9月に行った「食品機能と健康」に関するアンケートの結果などを踏まえ、専門家のヒアリングなどとあわせ、同協会が2008年9月に立ち上げた「食品機能と健康ビジョン研究会」がとりまとめた。
同報告書では、国家プロジェクトとすることも見据え、世界の中での日本が、今取り組むべきことなどを見極め、「機能性食品研究」、「健康表示制度の見直し」の2点について提言が行わている。
「機能性食品研究」については、7つの研究プロジェクトが提案された。(1)高齢者および胎児・乳幼児の栄養に関する研究(2)和食長寿研究(3)病態別スポーツ栄養に関する研究(4)人における食薬相互作用の研究(5)食品機能データベースの構築(6)先端技術開発の推進、(7)食品機能の経済効果。
(1)から(4)は、栄養学に関するもので、研究テーマをいまの日本にとって必要とされる項目に絞り込むことによる、集中化および効果的となること。(5)は研究結果などの共有化推進によるより高い意義付け。(6)は、エビデンスに対するより科学的なアプローチによる機能の裏づけ強化。(7)は、医療費削減への貢献の“可視化”による研究意義の明確化など、を期待しての提案といえる。
「健康表示制度の見直し」については、特定保健用食品制度における審査基準の明確化、保健の用途の拡大、虚偽・過大な表示や広告を持ついわゆる健康食品の抑制へ向けた検討項目を提起。「有効性と安全性の情報提供」、「審査内容の透明性の向上」、「消費者クレーム窓口、健康被害の届出制度の構築」、栄養機能食品においては、「栄養機能の範囲の拡大」、「摂取量」、「過剰摂取」など健康表示以外の表示内容のデータベースの作成などを具体案として提示した。
これら提案について同報告書に携わった『食品機能と健康ビジョン研究会』委員の木村毅氏は「現在、経産省、文科省、農水省の3省が地域産業育成の目的で実施する食品機能を含むテーマを支援する事業の合計は100億円に達するとも予測されている。しかしながら法的定義がない健康食品においてはなかなかその出口を見出しづらい。今回の提案で集中的かつ戦略的にそうした費用が使われることになれば国民の健康に寄与できる開発にもつながることが期待される」と期待を込めて補足した。
「食品機能と健康ビジョン研究会」は、社福協が2008年9月、国民の健康保持増進に寄与する機能性食品関連産業が、国際的制度とのハーモナイゼーションと科学的根拠を基本としつつ、将来にわたり健全に拡大発展するために食品機能と健康に関するビジョンを再構築する必要があると考え、産・学・官が参加する会として設立され、これまでに活発に活動を進めている。メンバーには、座長を務める名古屋文理大学健康生活学部フードビジネス学科教授の清水俊雄氏、健康と食品懇話会会長の木村氏、同相談役の太田明一氏、社福協理事の斎場仁氏、元厚労省の玉川淳氏などが名を連ねる。
日本の機能性食品は、トクホの制定(1991年)などで世界のパイオニアとしての実績を誇りながら、縦割り行政の弊害などで、現在はうまく機能していない現状がある。そうした状況を踏まえ、同研究会では、国家としての展望も見据えた今回の報告書が日本がそうした分野でしっかりと国際的イニシャティブを発揮する礎となることを期待している。