ニベア花王は、 薬用植物として知られる甘草からつくられる自然由来の成分であるβ―グリチルレチン酸が、 腋臭の原因菌のひとつと考えられているコリネバクテリウムキセロシスに対して、 有意な殺菌作用を持つことを発見した。
腋臭・汗臭は、 汗の成分が皮膚常在菌によって分解されることで発生し、 腋臭の発生に関与する菌としてはコリネバクテリウムキセロシス、 汗臭に関与する菌としては黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などが知られている。 そのため従来の制汗防臭剤には、 イソプロピルメチルフェノールなどが殺菌成分として配合されている。 一方、 消費者の腋臭・汗臭への意識は高く、 62%が 「自分のニオイが気になる」、 54%が 「制汗剤の防臭効果を重視」 などと制汗防臭剤への期待が高まっている。
また、 86%が 「制汗剤は効果が同じであれば自然由来の成分のものを選びたい」 というように、 自然嗜好の傾向がある。 そこで同社は今回、 自然由来の成分を中心に、 腋臭・汗臭の原因菌に対し殺菌作用や防臭作用のあるものを探索した。 その結果、 甘草からつくられる自然由来の成分であるβ―グリチルレチン酸に、 従来の殺菌成分であるイソプロピルメチルフェノールと同等以上の、 コリネバクテリウムキセロシスなどに対する殺菌効果が認められたという。
β―グリチルレチン酸は、 これまでも抗炎症作用が知られており化粧品の基剤として使われているが、 制汗防臭剤の殺菌成分として利用できることがわかった。
研究では、 β―グリチルレチン酸 (以下、 BGA) とイソプロピルメチルフェノール (以下、 IPMP) の希釈液と皮膚常在菌を混合して、 培養後にその発育の有無を肉眼で観察した。 その結果、 コリネバクテリウムキセロシス (以下、 コリネ菌) に対してBGAは、 IPMPと同等以上の殺菌効果が得られることが判明。 同時に黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌などに対しても、 BGAの抗菌作用が認められた。
また、 皮膚での殺菌効果を確認するための実験を実施し、 制汗防臭剤の有効成分である制汗成分クロルヒドロキシアルミニウムとBGAを配合したスプレー製剤を用いて、 スプレー噴霧前後での腋の下の菌数を測定した。 測定では、 10名の被験者を発汗させたあとに左右の腋の下から菌を採取し、 そのあとで片腋のみにBGA配合スプレーを噴霧し、 6時間後に再び両腋から菌を採取。 採取したスタンプ培地を35℃・18時間培養して、 コロニー数をカウントしたところ、 BGA配合のパウダースプレーは、 塗布6時間後の皮膚常在菌数を有意に低下させていた。
さらに、 制汗防臭剤の腋臭防止効果を確認した。 方法としては、 15名の被験者の両腋にパッドをつけた状態で発汗させ、 回収したパッドを半分にカットして、 スプレー (制汗成分として汎用されるクロルヒドロキシアルミニウムに殺菌作用のある防臭成分BGAを配合したパウダースプレー製剤) 噴霧群、 未塗布群に分けて、 スプレー前後の臭い強度比較と、 35℃・6時間保存したあとの臭い強度比較を行った。 その結果、 未塗布群では、 臭い強度が有意に上昇したのに対して、 BGA配合のスプレー塗布群では、 臭い強度の増加が抑制。 また、 このうち特に臭いの強い被験者5名を抽出して比較し、 6時間後の臭い強度は、 未塗布群に比べて、 BGA配合のスプレー塗布群で有意に低いという結果が得られた。
国内の制汗防臭剤が登場したのは、 今から約40年前のこと。 以来1980年代までは、 さまざまな香りの付与が求められ、 その後の1990年代までは、 使用部位や場面の拡大が求められた。 それに伴って剤型は、 従来のパウダースプレーやロールオン以外にシートタイプやウォータータイプ、 スティックタイプなどが開発され、 さらに男性用の制汗防臭剤も登場。 そして2000年代までには、 「ひんやり感」 や 「さらさら感」 などのより高い機能や効果が求められてきた。
一方こうした製品開発に伴って消費者の制汗防臭剤使用率も増加し、 同社が首都圏在住の女性 (12~59歳) を対象に行なった調査では、 1980年代の45%から2009年には75%以上の女性が使用していることが判明している。 また臭い意識にも変化が見られ、 2004年8月と2009年8月の調査では 「自分のニオイが気になる」 人が、 2004年の56%から2009年には62%に増加している。 また制汗防臭剤の 「防臭効果」 を重視する傾向も年々強くなり、 やはり2004年に45%だったものが、 2009年には54%となっている。