シンクタンクの富士経済は、国内の化粧品市場(メーカー出荷額)を百貨店、ドラッグストア、通信販売など販売チャネル別に調査した。この調査では、化粧品店・薬局・薬店、ドラッグストア、量販店、百貨店、バラエティショップ、コンビニエンスストアの店舗販売6チャネルと、訪問販売(訪販)、通信販売(通販)の無店舗販売2チャネルについて、各市場の現状を分析し今後を予測している。
それによると、2010年の国内化粧品市場は、前年比1・4%減の2兆1503億円となった。販売形態別では、店舗販売が前年比2・1%減の1兆6682億円、無店舗販売が1・6%増の4821億円、チャネル別では、ドラッグストアが0・5%減の5989億円、通信販売が5・1%増の2838億円、量販店が2・3%減の2780億円、化粧品店・薬局・薬店が5・0%減の2526億円、訪問販売が3・0%減の1983億円、百貨店が4・2%減の1829億円となっている。
2010年は、景気の先行き不透明感から消費マインドの冷え込みは続いており、化粧品市場全体は3年連続で縮小。店舗販売は各チャネルとも厳しい環境にあり、2年連続で市場が縮小する見通しである。無店舗販売は引き続き通販が牽引していくものの、上位ブランドの一部が苦戦しており成長の鈍化が見込まれる。
ドラッグストアは、09年に続き10年も市場の縮小が見込まれる。カウンセリングにおいて近年、値引き販売が訴求できないNPP商品が増加したことがマイナス要因となっている。低価格ながらも高機能化が進むセルフセレクションブランドやトイレタリーブランドへ需要が流れており、購入単価の低下が見られる。また、使用量・アイテム数の節約・削減による買い控えも進んでいる。
通販は、インターネット/モバイル通販が急成長しているほか、カタログ通販やテレビ通販も好調に推移しており、09年は前年比13・2%増と全チャネルで唯一増加し、化粧品店・薬局・薬店を抜き量販店に次いで3番目に大きい市場規模を持つチャネルとなった。
近年、1本で化粧水・乳液・美容液などの役割を果たすアイテムや「茶のしずく石鹸」(悠香)などの洗顔用石鹸、「スカルプD」(アンファー)などスカルプケア関連でヒット商品が相次いでおり、通販市場の拡大を牽引している。10年には量販店を抜き2番目に大きなチャネルになると見込まれる。
しかし、ヒット商品の需要が一巡しつつあることや上位ブランドの苦戦で10年は前年比5・1%増にとどまる見込みで、成長が鈍化していくと考えられる。
化粧品店・薬局・薬店は、ドラッグストアへの需要流出が進み、インターネット通販などとも競合し新客獲得が困難になっている。店主の高齢化・後継者不足による廃業も相次ぎ、市場の縮小が続いている。
訪販は、女性の社会進出が進み戸別訪問による販売が難しくなっている中、営業拠点の店舗化やインターネットによる情報提供などでコミュニケーションを図る取り組みが見られるものの、新規開拓は難しく市場の縮小が長期化している。
百貨店は、百貨店ならではの高級感やきめ細やかなカウンセリング、明確な機能訴求で化粧品への関心が高い層の需要を取り込み堅調に推移してきたが、百貨店という業態自体の集客力が低下していることや、不採算店舗の閉店も影響し、09年、10年と3年連続の減少が見込まれ、厳しい市場環境にある。