健康と美容のニュースなら健康美容EXPOニュース

より安全で、効果的に皮膚へ浸透するアンチエイジング素材を開発

1022-rz.jpg

株式会社ファンケル(本社:横浜市中区、代表取締役社長執行役員:成松義文)は、総合研究所での基礎研究を通じ、皮膚老化抑制成分であるシリビン※1を配糖体 ※2化した「シリビンマルトシド」を化粧品原料として新開発しました。また、新成分は水への溶解性が高く、幅広い処方配合が可能なことに加え、抗酸化作用などのアンチエイジング効果を維持しながら、皮膚浸透性が高まることを確認いたしました。 

同社では本研究の成果を、2010年 9月 20日から23日にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された国際化粧品技術者会、第 26回 IFSCC Congress ※3( International Federation of Societies of Cosmetic Chemists)で発表いたしました。また、新開発成分は、今後新たなアンチエイジング化粧品の製品開発などに応用する予定です。

以下に、研究の概要および結果をお知らせいたします。

<研究の概要> 

研究の経緯

ファンケルでは、アンチエイジング研究の一環として、しわ抑制効果をもつ天然成分の探索、研究を進め、2002年、マリアアザミ種子から抽出したシリビンに、アンチエイジング化粧品素材として一般的に使用されているレチノイン酸※4と同様の、高いアンチエイジング効果があることを発見しました。 2)シリビンは、表皮角化細胞の増殖を促進させ、ターンオーバーを整えるという有効性を持ちながら、レチノイン酸よりも皮膚刺激性が非常に低いことから、安全性と有効性を兼ね備えた天然由来のアンチエイジング成分として、2005年に同成分を配合した総合美容液を発売し、以来多くのお客様から支持をいただいております。

しかし、シリビンは水にも油にも溶けにくく、製剤化が大変難しい成分のため、美容液の開発にあたっては、シリビンを大豆リン脂質と複合体化させ、分散性を高めて配合する技術を応用しました(成分名:シリビンフィトソーム)。そこで同社では、シリビンの水への溶解性を高め、幅広い製剤開発が行えるよう、シリビンの化学修飾法※5について研究を進めてまいりました。 

2) Kitajima S, Yamaguchi K. J. Clin. Bioche. Nutr., 45 (2): 178-184 (2009)

アンチエイジング効果と高い親水性を持つ、シリビンマルトシドを開発

一般に難溶性成分の溶解性向上には、水溶性成分(糖、アミノ基など)や、油溶性成分(ポリエチレングリコール、脂肪酸など)の付加、リポソーム化 ※6など゙様々な方法があります。同社では、シリビンを幅広く化粧品へ応用するためには水溶性の向上が必要であると考え、安全性や使用性を考慮した上で、シリビンの配糖体化の研究を開始しました。配糖体化の技術を保有する株式会社サイトパスファインダーと共同し、シリビンの化学修飾法を検討した結果、シリビンを効率よく配糖体化させる技術開発に成功。シリビン骨格に二糖であるマルトースを結合させたシリビンマルトシドを合成することができました。

シリビンのアンチエイジング効果はそのままに、親水性は 1000倍!

シリビンの水への溶解性はわずかに 0.016mMであり、シリビンフィトソームでは、シリビンに比べて、水への溶解性を 10倍増加していますが、今回新たに合成したシリビンマルトシドは、12.7 mMと約 1000倍も水溶性を高めることに成功しました。

配糖体として付加した二糖であるマルトース部分が、皮膚中では、皮膚中の酵素によって、単糖であるグルコースに変換され「シリビングルコシド」になりますが、シリビンマルトシドはシリビングルコシドに比べて水溶性が高く、一方、シリビングルコシドは油溶性が高いことが確認されました。

また、このように配糖体化されたシリビン類が、いずれも、シリビンの持つ抗酸化作用や、皮膚の弾力に影響する I 型コラーゲンや基底膜タンパクであるラミニン 5 ※8の産生促進作用、また、ラミニン 5の受容体タンパクであるインテグリン β4※9の産生促進作用などのアンチエイジング効果において、シリビンと同等の高い有効性を発揮することも確認されました。 

シリビンマルトシドの皮膚浸透性

有効成分を皮膚中で効果的に発揮させるためには、成分をターゲット部位に届けることが重要となります。そこで、水溶性が向上したシリビンマルトシドがどのように皮膚に浸透するかを評価しました。

シリビンマルトシドを配合した乳化物と、シリビンフィトソームを配合した乳化物について、角層、表皮、真皮それぞれへの皮膚浸透量を測定しました。皮膚中でシリビンマルトシドはシリビングルコシドに50%程度分解されますが、皮膚でのアンチエイジング効果は同じであることから、シリビンマルトシド、シリビングルコシドの総量として、シリビンの浸透量を計算し、塗布2時間後から24時間後までの経時変化について確認しました。

シリビンフィトソームでは、2時間後から24時間までの経皮浸透性に大きな変化がないのに対し、シリビンマルトシドでは、角層への浸透量が著しく高く、経時的に増加することがわかりました。また、表皮、真皮への浸透量も経時的に増加することがわかりました。

すなわち、シリビンマルトシドは、水溶性を大きく向上させたことで、角層への浸透性が大きく向上し、その結果、角層から表皮への、さらには、真皮への浸透性が高まったと考えられます。

また、皮膚中では、より脂溶性の高いシリビングルコシドに分解されることで、さらに、シリビンの表皮や真皮への浸透性が向上する結果を得たものと考えられます。

研究発表と今後の展開

本研究成果は、2010年 9月 20日~23日にアルゼンチン・ブエノスアイレスにおいて開催された第 26回 IFSCC Congressに「Silybin maltoside , the novel cosmetic ingredient for anti- wrinkling」として発表いたしました。また、2010年12月1日に開催される IFSCCの国内研究発表会においても発表する予定です。

また、同社では今後、皮膚浸透性と安全性が向上したアンチエイジング素材、シリビンマルトシドを製品開発に応用してまいります。

研究者のコメント

ファンケルでは、安心・安全はもちろんのこと、高い機能性を持つ製品の開発を目指し、日々研究に取り組んでおります。本研究では、シリビンが本来持つアンチエイジング効果を維持したまま、安全性の高い原料の開発に成功し、皮膚浸透性が高まることが明らかとなりました。高い安全性と機能性を兼ね備えたシリビンマルトシドを配合した製品を多くのお客様に使用していただき、ぜひ効果を実感していただきたいと思います。

Profile 中川麻穂(なかがわ まほ)

株式会社ファンケル総合研究所安全性品質研究センター分析化学グループ2002年横浜国立大学物質工学科卒業。2004年株式会社ファンケルに入社。化粧品、サプリメントの分析、経皮吸収研究など、製品の安定性・安全性に携わる。

【用語解説 】

※1 : シリビン

マリアアザミの主に種子由来の成分で、抗酸化力が高く、ヨーロッパでは伝統的に医療用植物として広く用いられています。特に、肝機能改善に効果があることから、サプリメント成分として世界的に広く用いられています。

※2:配糖体

糖の水酸基が、炭化水素やアルコールなどの非糖質化合物と結合してできる化合物の総称。植物に含まれる天然化合物の多くは、配糖体として存在し、物質を安定かつ無毒化しています。

※3 : IFSCC Congress

日本化粧品技術者会の母体組織である国際化粧品技術者連盟( The InternationalFederation of Societies of Cosmetic Chemists、略して IFSCC)は世界各国の化粧品技術者会の連合組織。 IFSCCは化粧品開発のための諸活動を国際規模で行っており、この行事のうち、最大なものは各国の化粧品技術者が一同に介して、研究成果を発表し、討論することを目的として開催される学術大会です。この学術大会には西暦偶数年に開催される Congressと西暦奇数年に開催される Conferenceに分けられ、同社は本研究に関し、2010年の Congressにて発表しました。 

※4 :レチノイン酸

ビタミン Aの一種で、しわ、しみ、にきびに効果があることが知られています。

※5:化学修飾法

ある物質に、化学反応によって新しい原子団などを結合させること。

※6:リポソーム化

レシチンなど、リン脂質による小胞体に成分を内包することで、溶解性の向上や、皮膚浸透性の向上が期待できます。 

※7 : n-オクタノール

脂肪族アルコールであり、 n-オクタノールの溶解性は、薬学などの分野で物質の親油性の指標として利用されています。

※8:ラミニン5

皮膚基底膜の構成成分の一種です。表皮と真皮の結合を担い、正常な皮膚構造を維持します。

※9:インテグリン β4 

表皮基底細胞の基底膜側に存在し、ラミニン 5の受容体として、表皮と真皮の間の結合を担い、正常な皮膚構造を維持します。

2010年10月22日 17:35

関連記事