タカラベルモント株式会社は、精油の香りを嗅ぐことによる自律神経系への影響が、その香りに対する嗜好性や自律神経状態の個人差によって異なること、そして香りの種類によって個人差の影響の仕方が異なることを発見しました。なお、今回の研究発表は、日本生理人類学会第82回大会(2021年10月29日~31日、オンライン開催)のポスターセッションにて発表しました。
個人の嗜好性の違いや自律神経状態の個人差が香り吸引時の効果に与える影響に着目精油には、心理的効果だけでなく生理学的効果があることが知られており、これまでも多くの研究が行われてきました。しかし、同一被験者に対して複数種類の精油それぞれの効果を検証した例は少ないのが現状です。また、香りの好みは人によって異なり、さらに自律神経の状態は同じ人でも常に一定ではないため、これらの違いが香りを吸引した際の効果に影響してくるのではないかと考えました。
そこで、20~50代の被験者を対象に、8種類の精油を吸引したときに起こる自律神経や心理状態の変化を測定しました。得られたデータを、香りの嗜好性や自律神経状態の個人差に基づいて解析した結果、香りの種類によって個人差の影響の仕方に違いがみられました。
例として、8種類の精油による実験の中から2種類(マジョラム・ゼラニウム)の香りに対する検証結果をご紹介します。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
■ マジョラム:香りに対する好みによりその効果に違い
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
マジョラム精油の香りを吸引した場合、副交感神経の活性指標であるCVIに注目すると、香りに対する嗜好性が高い被験者群(Like群)では増加し、香りに対する嗜好性が低い被験者群(Unlike群)では減少する傾向がみられました。また、嗜好性とCVIの変化量には相関関係がみられました。さらに、Like群では心理的指標において「安定度」の向上が見られました。つまり、マジョラムの香りへの嗜好性が高いほど副交感神経の活性化とリラックス効果が期待できます。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
■ ゼラニウム:香り吸引時の自律神経状態によりその効果に違い
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ゼラニウム精油の香りを吸引した場合、検証前の測定で副交感神経の指標となるCVIおよびCVR-Rの値が低かった被験者では吸引後にその値が増加し、高かった被験者では減少しました。また、交感神経の指標(CSI)においても同様の変化が確認されました。つまり、香りを吸引することで、自律神経の活性を高くしすぎず、また逆に低くもなりすぎないように調整する効果が期待できます。一方で、マジョラムのような、嗜好性による影響の違いはみられませんでした。
※補足資料:検証方法
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
■ 実験参加者
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
同研究に同意を得た20代~50代の健常者20名
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
■ 実験手順
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1:一定環境に調整した検証用の防音個室にて安静時間を5分間とり、検証前測定として(1)~(3)を実施しました。
2:(4)~(6)の計測機器を取り付け、数値が安定した後に5分間の計測、続いて精油を吸引している条件下で5分間の計測を実施しました。吸引は精油を滴下した、または何も滴下していないアロマシールをマスクに取り付けることで実施しました。
3:吸引終了後、検証後測定として(1)~(3)を再度実施し、精油の嗜好性について(7)の調査を実施しました。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
■ 使用した精油
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アロマテラピーはもちろん、化粧品や雑貨などにも広く用いられる香りとして、オレンジスイート、レモングラス、ゼラニウム、ラベンダー、ローズマリー、マジョラム、ペパーミント、イランイランの8種を使用しました。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・ タカラベルモント株式会社 2022年5月25日発表
・ タカラベルモント株式会社 公式サイト