オリザ油化株式会社(愛知県一宮市)は、フコキサンチンについてサルコペニア肥満改善作用を有することについて特許を取得した(特許 7237204 号)。
フコキサンチンは、昆布・ひじき・ワカメなどの褐藻類のみに微量に含まれ、非プロビタミンA 類のカロテノイドの一種でキサントフィルに属する化合物である。フコキサンチンは、アレン構造、エポキシドおよびヒドロキシル基を有する。近年、カロテノイド類の健康食品としての機能性研究が盛んな中、フコキサンチンの機能性研究も進んでおり、これまでに抗肥満・抗糖尿病作用、抗がん作用、生体内抗酸化作用、血管新生抑制作用、及び抗炎症作用などが報告されている。
フコキサンチンは、白色脂肪組織中の UCP1 を発現させる唯一の食品成分として、世界中の注目を集めていることから、メタボリックシンドローム対応食品への応用に大きな期待が持たれている。
さらに、フコキサンチンには肥満気味の方のおなかの脂肪(内臓脂肪)や体重の減少をサポートし、高め BMI を低下させる機能が報告されており、2017 年にオリザ油化が外部臨床試験で体重、BMI および内臓脂肪面積、全体脂肪面積、皮下脂肪面積などの相対値がプラセボ群と比較して有意に減少することを確認し、これを訴求した機能性表示食品が受理されている。また、近年、日本は高齢化が進んでおり、超高齢化社会へ突入している。加齢に伴う骨格筋量の減少と筋力の低下(サルコペニア)は、安静時エネルギー消費量(直接的)や、身体活動量(間接的)を減少させる。その結果、体脂肪の増加(肥満)を誘発し、インスリン抵抗性や腫瘍壊死因子の増大を引き起こす。これらがさらにサルコペニアを助長し、サルコペニアと肥満の負の連鎖をもたらす。また、サルコペニアと肥満が合併した「サルコペニア肥満」は、生活習慣病のリスクをさらに増大させる。
そこで、オリザ油化は、立命館大学の橋本健志教授との共同研究の結果、フコキサンチンについて、内臓脂肪を減少させ、且つ骨格筋細胞において筋萎縮を抑制することによりサルコペニア肥満予防改善作用を有する旨を見出し、これについて特許を取得した。即ち、ICR マウス(5 週齢)を、(1)コントロール群(Control 群:n=7)(2)筋萎縮誘導群(デキサメタゾン(DEX 群)n=7)(3)筋萎縮誘導(デキサメタゾン)+フコキサンチン投与群(FX-DEX 群 n=8)の 3 条件にわけて飼育した。ここで、予備飼育期間を 12 週間、フコキサンチン(FX)0.2%含むオイルの投与を 2 週間、筋萎縮誘導期間を 13 日間とした(図 1 参照)。そして、体重および前脛骨筋湿重量・内臓脂肪量を測定することにより、筋萎縮の抑制に及ぼす影響を評価した(図 2)。
その結果、体重に関して、 DEX 群、FX-DEX 群では Control 群と比較して有意な減少が認められた。一方、前脛骨筋湿重量は、Control 群と比較して DEX 群では有意に減少していたが(p<0.01)、FX-DEX 群では有意な差は認められなかった。これにより、フコキサンチンは脛骨筋量の減少を抑制することが確認された。また、内臓脂肪の重量に関して、FXDEX 群は Control 群と比較して、有意に低い値を示した(p<0.01)。これにより、フコキサンチンは内臓脂肪を減少させることが確認された。これらの結果から、フコキサンチン(FX)の投与は内臓脂肪を減少させることができ、かつ前脛骨筋湿重量の減少を抑制することができるため、デキサメタゾン(DEX)由来の筋萎縮の程度を和らげることが確認された。これらの結果により、フコキサンチンは内臓脂肪を減少させ、前脛骨筋湿重量の減少を抑制することができるため、フコキサンチンはサルコペニア肥満予防改善剤として有用であることが確認された。
今まで、フコキサンチンは抗肥満作用を有することが主として知られていたが、オリザ油化はこの特許取得によりサルコペニア肥満、筋委縮により運動機能が低下した人向けに対しても積極的にその機能をアピールし、かつこれらの分野において機能性表示食品の受理を目指す方針である。
【詳細は下記URLをご参照ください】
・オリザ油化株式会社 2023年4月6日【PDF】発表
・オリザ油化株式会社 公式サイト