森永乳業は、乳タンパク質の一種であるラクトフェリンを60年以上にわたり研究しております。
このたび、玉川大学(冨田信一農学部教授)と実施した臨床試験において、健常成人がラクトフェリンを摂取することにより、空気の乾燥した環境における口とのどの不快感を軽減することを確認しましたのでご報告いたします。また、本研究成果は、科学雑誌「Nutrients」に2023年9月18日に掲載されました(※2)。
1.研究背景
空気の乾燥は、人々の健康や生活の質に様々な影響を及ぼすことが知られています。
ラクトフェリンは唾液や粘膜に存在する成分と相互作用することにより、水分を保持する機能が高まる可能性が、試験管レベルの研究から示されています。ラクトフェリンは、牛乳から発見されたタンパク質の一種です。唾液や涙液にも含まれ、多彩な機能性を有しています。
そこで今回、健常成人がラクトフェリンを摂取することにより、空気の乾燥した環境における口とのどの主観的評価に及ぼす影響を臨床試験で検討しました。
2.研究方法
健常成人40名を無作為に2つのグループに分け、空気の乾燥していない部屋(室温20℃、相対湿度60%)で1時間過ごした後、ラクトフェリン100mgを溶かした水またはラクトフェリンを含まない水(プラセボ)のいずれかを1回摂取し、空気の乾燥した部屋(室温20℃、相対湿度20%)で2時間過ごしました。
また、摂取前後で口とのどの主観的評価を行いました。1週間後、前回とは逆の水を摂取し、再び同じ調査を行いました。2回の調査結果を集計し、空気の乾燥した環境における口とのどの主観的評価に対するラクトフェリンの効果を検討しました。
3.研究結果
①ラクトフェリンの摂取により、「口の不快感」と「のどの不快感」が軽減しました。
空気の乾燥した部屋で過ごすことにより、「口の不快感」と「のどの不快感」は経時的に上昇しました。これに対し、予めラクトフェリンを摂取することにより、プラセボの摂取と比較して、「口の不快感」「のどの不快感」は有意に軽減しました。(図1)。
【図1 口とのどの不快感】
②ラクトフェリンの摂取により、「のどの乾燥感」「口渇感」「飲み込みにくさ」が軽減しました。
より詳細な評価のため、口腔乾燥の調査に用いられる主観的評価も同時に行いました。その結果、「のどの乾燥感」「口渇感」「飲み込みにくさ」も、予めラクトフェリンを摂取することにより、プラセボの摂取と比較して有意に軽減しました。(図2)。
【図2のどの乾燥感、口渇感、飲み込みにくさ】
これらの結果から、健常成人がラクトフェリンを摂取することにより、空気の乾燥した環境における口とのどの不快感を軽減することが示されました。空気の乾燥する季節や室内において、ラクトフェリンが人々の健康や生活の質に貢献することを目指し、引き続き研究を進めてまいります。
<森永乳業とラクトフェリンの取り組み>
森永乳業は60年以上にわたり、ラクトフェリンの研究や製造、食品への応用を進めてまいりました。現在、世界各地の企業が、ラクトフェリンを様々な食品に配合しています。また、世界各地の研究者がラクトフェリンを様々な側面から精力的に研究しており、こうした研究者との連携を通じてラクトフェリンの研究をさらに推進し、人々の健康に貢献してまいります。
なお、当社は企業の中で、世界で最も多くラクトフェリンに関する研究論文を発表しています※3。
<参考>
※1 Absolute Reports 社 2022 年版 当社の子会社、MILEI GmbH(ミライ社)の製造量シェア
※2 「Effects of Lactoferrin on Oral and Throat Conditions under Low Humidity Environments: A
Randomized, Double-Blind, and Placebo-Controlled Crossover Trial.」 Shutaro Kubo, Hirotsugu Oda,
Miyuki Tanaka, Takashi Koikeda, and Shinichi Tomita.
Nutrients. 2023; 15(18):4033.
URL: https://www.mdpi.com/2072-6643/15/18/4033
※3 Elsevier 社が提供するデータベース「SCOPUS」にて”lactoferrin”で検索(2023 年 9 月時点)
【詳細は下記をご参照ください】