花王株式会社ヒューマンヘルスケア研究センター・ヘルスケア食品研究所は、愛知医科大学医学部生理学講座・岩瀬敏教授と共同で、夏場の熱中症対策の一つとして利用されている電解質を含むスポーツドリンクの有用性を調べました。その結果、暑熱環境において、茶カテキンを含有するハイポトニック飲料*1 の摂取が、ミネラルウォーターの摂取に比べて深部体温*2 の上昇を抑制することを初めて確認しました。
*1 ハイポトニック飲料
ヒトの体液(280~290mOsm/L)よりも低い浸透圧のスポーツドリンクで、体内への水分吸収に適しているといわれています。
*2 深部体温
環境の影響を受けにくい身体の深部の温度。通常37℃程度。
研究では、成人男性9名を対象として、夏場の屋外と同程度の暑熱環境(室温35℃、湿度75%)に設定した部屋で、「ミネラルウォーター」または「茶カテキン含有ハイポトニック飲料」のいずれかを、試験開始時、30分後、60分後に体重1kg当たり4mL(例;体重60kgのとき、240mLずつ3回、トータル720mL)、摂取した場合の発汗量および深部体温(鼓膜温)の変化を90分間連続的に測定し、以下の結果を得ました。
●茶カテキン含有ハイポトニック飲料摂取群では、90分後の発汗量において、ミネラルウォーター摂取群と比べて有意に高い値を示しました(資料:図1)。
●茶カテキン含有ハイポトニック飲料摂取群では、深部体温上昇の過程において早くから発汗が始まり、同一体温での発汗量がミネラルウォーター摂取群と比べて多いことが示されました(資料:図2)。
●深部体温は時間の経過とともに両群で上昇しましたが、茶カテキン含有ハイポトニック飲料摂取群ではミネラルウォーター摂取群と比べて低く抑えられました(資料:図3)。
◎図1~図3
http://www.kao.com/jp/corp_news/2012/pdf/20120803_001_01.pdf
これらのことから、夏の暑熱環境において、茶カテキンを含有するハイポトニック飲料の摂取は、水分および電解質を補給するとともに発汗を促進し、深部体温の上昇を効率よく抑制できることが示されました。
なお、本結果を含む研究成果は、第20回日本発汗学会総会(2012年8月24、25日・奈良女子大学)において発表予定です。今後、浸透圧と水分吸収との関係や茶カテキンの発汗に及ぼす作用などについて、より詳細に研究していく予定です。
暑さのピークを直前に控え、震災後の節電意識の高まりもあり、夏場の熱中症に対する注意が必要な季節を迎えています。熱中症は、気温や湿度が高いときに、汗で体水分や電解質が失われた場合に発症するほか、身体の体温調節機能が暑さにうまく対応できない場合でも起こります。総務省の発表資料によると、2010年の7~9月の3カ月間には全国で53,843名の方が熱中症で病院に搬送されており、この時期は特に警戒が必要です。また、熱中症は屋外でスポーツや仕事に従事する人はもちろんですが、屋内で過ごす人も注意する必要があります。
熱中症に対しては、こまめな水分補給が予防策の一つとして効果的で、特に汗をかくと、水分とともに体内の電解質も失われるため、これらを同時に補給できるスポーツドリンクの摂取が推奨されています。
■ 研究背景
花王では、従来から生活習慣病の予防を目的とした研究を続けており、これまでに茶カテキン540mgを含み、体脂肪が気になる方に適した飲料の開発を行なってきました。一方、スポーツドリンクは、ウォーキングやスポーツの時だけでなく、オフィスや屋内における日常生活など、さまざまなシーンで手軽に飲用されていることから、夏の暑さ対策の一つである水分補給に活用されています。
そこで、本研究では、茶カテキンを含有し電解質が添加されたハイポトニックのスポーツドリンクを試験飲料として、実際の暑熱環境における水分補給に用いたときに、発汗や体温調節にどのような影響を及ぼすかを検証しました。
【お問合せ】
花王株式会社 広報部
電話 03-3660-7041~7042
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【関連資料】
◎リリースURL/PDF
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◎花王株式会社 :公式サイト
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