株式会社ファンケルは、京都大学と静岡大学との共同研究を通じ、コレステロールの取込みを阻害する新しい化合物「fomiroid A」を発見しました。
この化合物は、キノコの一種「クロサルノコシカケ」の抽出物から活性化合物の一つとして発見したもので、小腸からのコレステロール吸収の中心的役割を担うタンパク質Niemann-Pick C1-Like 1(以下:NPC1L1)の機能を阻害します。
同社は今後、特定保健用食品や機能性表示食品への応用などを検討しています。
なお、本研究の成果は本年3 月26 日から29 日に岡山県で行われる「日本農芸化学会2015 年度大会」で口頭発表します。
以下に研究の概要および結果をお知らせします。
・研究の概要
【研究の背景・目的】
高コレステロール血症は、我が国において死因の上位を占める心筋梗塞や脳梗塞を誘発する動脈硬化症の危険因子であり、血中コレステロール濃度の適切な調節がこれら疾患の予防において重要です。近年、「NPC1L1」を標的としたコレステロール吸収阻害剤の医薬品が開発され、高コレステロール血症の改善に有効であることが示されました。しかし、その効果には個人差があり、既存の医薬品とは作用機序の異なる新たな阻害剤の出現が望まれていました。
そこで本研究では植物やキノコの抽出物から「NPC1L1」の機能を阻害する天然物由来の化合物を明らかにすることを目的としました。
【研究の手法】
約2000 種類の植物やキノコを対象に「NPC1L1」と特異的に結合する抽出物を探索した結果、クロサルノコシカケ(Fomitopsis nigra)に強い活性を見出しました。モデル動物においてクロサルノコシカケ抽出物の血中コレステロール低下作用が認められたため、活性化合物の単離および構造決定を試みたところ、新規化合物である「fomiroid A」を発見しました。
【研究の波及効果】
今回の研究で発見された「fomiroid A」の骨格をベースとして、さらに効果の優れた類似化合物の探索が可能となり、高コレステロール血症改善の健康食品などに応用できる可能性があります。また、不明な点の多い「NPC1L1」を介したコレステロール吸収メカニズムの解析ツールとして、利用できる可能性があります。
【研究発表と今後の展開】
ファンケル総合研究所では、本研究の成果を本年3 月26 日から29 日に岡山県で行われる日本農芸化学会2015 年度大会において、3 月27 日午後に「NPC1L1依存的なコレステロール取込みを阻害するクロサルノコシカケ由来新規天然物fomiroid A の同定」の演題で口頭発表する予定です。
なお、本研究の成果は米科学誌PLoS One にも掲載されています(PLoS One. 9(12): e116162(2014))。同社では今後も、機能性を科学的に実証した健康食品の開発に取り組んでまいります。
【研究者のコメント】
コレステロールの小腸からの吸収が「NPC1L1」というタンパク質によって媒介されることが明らかにされて以来、多くの研 究者が関心を抱き研究に取り組んできました。
しかし、薬理学的に非常に重要なタンパク質であるにも関わらず、その分子メカニズムはほとんど理解されていません。
このような背景から私たちの研究も困難を極め、今回の研究成果に至るまでにおよそ6年の歳月を費やしました。
試行錯誤を繰り返しながら成果の出ない日々が続きましたが、新たな情報が論文より報告された幸運も重なり、 「NPC1L1」の機能を阻害するクロサルノコシカケ由来新規化合物の「fomiroid A」を見出すことができました。
今後は特定保健用食品や機能性表示食品の製品開発を視野に入れ、素材原料の工業化に力を注いでいきたいと考え ています。そして、脂質異常症に悩む人々の健康維持に本研究の成果が少しでもお役に立てられればと思います。
※詳細は下記URLをご参照ください。
◎株式会社ファンケル 2015年3月12日発表
http://www.fancl.jp/news/pdf/2015.03.12_cholesterolsogaishinkagoubutsuhakken.pdf
◎株式会社ファンケル 公式サイト
http://www.fancl.jp/index.html