月桂冠株式会社月桂冠総合研究所は、酒粕のたんぱく質を分解処理して生じたペプチドに、冷え性の血流改善効果があることを確認しました。血管内皮の培養細胞への「酒粕分解ペプチド」添加により産生する一酸化窒素の血管拡張により、血流を改善させることも確認しました。この研究成果を、2015年度の「日本農芸化学会大会」において3月29日に発表します。
冷え性は、女性にとって深刻な悩みであり、男性よりも2倍以上有訴者がいるといわれ、若い世代にも男女を問わず、冷え性を訴える方が増えていると言われています(厚生労働省「平成22年度 国民生活基礎調査の概況」より)。酒粕は、粕汁や甘酒に用いられることも多く、体を温めるイメージがありますが、食事として酒粕を摂取することで冷え性を改善するという学術研究は行われていませんでした。そこで、酒粕の中でも、酒粕のたんぱく質を酵素分解により低分子化した、「酒粕分解ペプチド」による冷え性改善効果を検証しました。その結果、「酒粕分解ペプチド」は血管を拡張する効果を持ち、血管を拡張することで身体の末端まで温められることがわかりました。
◆培養細胞試験
冷え性の血流改善効果のメカニズムを明らかにするため、血管内皮細胞に、酒粕分解ペプチドを添加して、培養液中に産生された一酸化窒素量を経時的に測定しました。酒粕分解ペプチド無添加の細胞に比べて、添加10分後に、酒粕分解ペプチド250ppmの区分で19%、500ppmで22%、1000ppmで31%、一酸化窒素産生量が有意に増加しました。酒粕分解ペプチドが、血管内皮の一酸化窒素を産生を活発化させ血管を拡張、指血流を改善することが示唆されました。
◆ヒトへの効果の確認
冷え性が顕著な方(男女各4名、計8名)に、酒粕分解ペプチド(たんぱく質分解酵素で処理した酒粕)を10 g摂取してもらい、40分後、15℃の冷水に手を1分間漬けることで冷却、5分毎に、指先5本の平均表面温度をサーモグラフィーカメラで測定しました。指先の血流についても血流測定装置で測定しました。酒粕分解ペプチドを摂取した場合は、対照被検食(米粉)と比較して、冷却負荷30分後の指先平均表面温度が顕著に上昇し、平均で5.6度高くなりました。血流も冷却負荷20分後で32%、30分後で41%、上昇することを確認しました。
月桂冠では、1990年代から清酒醸造の副産物である酒粕の有効性に関する研究を積み重ねており、酒粕研究では国内有数の研究開発を行っています。1992年には、酒粕分解ペプチドがアンギオテンシン変換酵素の働きを阻害することでヒトの血圧を降下させることを論文発表し、2010年には酒粕分解ペプチドが肝障害予防効果を有することをマウスで確認しています。また、月桂冠では、酒粕の有効な摂取方法を知り、その効用を身近に体感していただこうと考え、酒粕の料理レシピを掲載した『月桂冠社員の酒粕レシピ』(定価:1,260円・税込、株式会社KADOKAWA メディアファクトリーBC発行、2012年)を監修しました。
◆学会での発表
学会名 日本農芸化学会大会 2015年度 発表日時 2015年3月29日 (日) 10:16 会場 岡山大学 津島キャンパス(岡山市北区津島中)、F37会場 演題 「酒粕の体を温める効果」(演題番号:4F37a07) 研究・発表者 【月桂冠総合研究所】 ○村上 直之、入江 元子、大浦 新、堤 浩子、秦 洋二 (○印は演者)
◆月桂冠総合研究所について
1909(明治42)年、11代目の当主・大倉恒吉が、酒造りに科学技術を導入する必要性から設立した「大倉酒造研究所」が前身。1990(平成2)年、名称を「月桂冠総合研究所」とし、現在では、酒造り全般にわたる基礎研究を行うと共に、バイオテクノロジーによる新規技術の開発、製品開発まで幅広い研究に取り組んでいます。 (所長=秦 洋二、所在地=〒612-8385 京都市伏見区下鳥羽小柳町101番地)
詳細は下記URLをご参照下さい
◎月桂冠株式会社2015年3月25日発表
http://www.gekkeikan.co.jp/company/news/201503_05.html
◎月桂冠株式会社
http://www.gekkeikan.co.jp/