アサヒビール (本社∥東京) は100%出資子会社アサヒフードアンドヘスルケア (同、 以下∥アサヒフード) から展開している化粧品事業に関し、 このほど自社通販専用と位置づけるオールインワンタイプのクリームを発売してラインナップを拡充、 卸とダイレクト販売の両チャネルに商品を配置することで同事業の展開を加速している。
この10月からインターネット通販に新規投入した新しい化粧品は 「アクアレイナ オールインワンジェル」 (45g4200円) で、 アサヒビールが酵母エキスの研究で素材開発に尽力したほか、 同社傘下の和光堂 (同) が商品開発に力を注ぐなど、 販売主体のアサヒフードを筆頭にしたグループ3社が企業力を結集した。 発売から3カ月間の販売目標は2000万円に設定した。
また、 発売にこの時期を選択した背景について、 同社企画本部の松井宏樹チーフプロデューサーは、 通販市場で人気となっている数社の “オールインワン”に追随を狙うかという本紙の問いを否定していない。
2009年2月、 薬用美白美容液 「マリアンナ パーフェクトリペアホワイト」 (医薬部外品、 20g3500円、 45g7000円) の卸展開によってスタートした同社の化粧品事業は、 内面美容として打ち出す食品アイテムも合わせ2012年までに売上高20億円を目標にしている。 このうち、 卸と通販の売上構成比は 「現在の進捗が続いたと仮定した場合、 50対50ほどになるのではないか」 (松井マネージャー) と見通している。
先に首都圏のドラッグストア約500店舗に配荷してテスト販売中の美容液は、 店頭の反響や来店客の関心が 「まずまずの状況」 (同) で、 今後は早い時期に初回購入した愛用者のリピート買いが本格化するものと見込んでいる。
一方、 卸を通じた店舗流通に乗せないB to C商品とした 「オールインワンジェル」 について、 同社はチャネル選定の理由を 「通販の既存商品に和光堂が開発した石けんがあることから、 開発ベースが共通する商品群は同一のチャネルで展開することとした」 と説明している。 今後もスキンケア製品を中心に、 売上高目標の達成に向けて新商品を発掘~投入していく。
同社は現在のところ通販事業の売上規模を公表していないが、 一つの指標として、 メールマガジンの配信を希望するサイト閲覧者が約30万人に達することを明らかにしているほか、 このなかで定期的な購入のあるアクティブ顧客の比率は 「決して少なくない」 として潜在購買力について説明している。
同社は1996年にアサヒビール薬品販売 (当時) から 「細々と参入した」 とする通信販売について、 現在までに明解な事業ノウハウは持ち合わせず 「試行錯誤を繰り返しながら、 ここ数カ年で少しずつ構築し始めている段階」 と自己評価を下している。
ただ一方で、 参入元年となった化粧品事業の先行きについては評価の色合いが一変する。 20億円をめざすうえでマンパワーの不足が予想される人員配置を2010年に増強するなか、 2002年にM&Aでポーラ (東京) から買収したポーラフーズのスタッフ40~50名を再結集し、 「現在はグループ内に散開している化粧品に通じた人材を集め、 再び活躍してもらうチャンスがないわけではない」 (同) としており、 急旋回の可能性を示唆している。