(財)医療経済研究・社会保険福祉協会(東京都港区、幸田正孝理事長)は2009年12月3日、同協会が行った「食品機能と健康」に関するアンケートの結果をまとめ、報告した。同アンケートは、同協会が2008年9月に立ち上げた「食品機能と健康ビジョン研究会」の活動の一環として、今年5月から7月にかけ、機能性食品関連産業を対象に行い、約400社から回答を得た。
アンケート内容は、企業規模、事業内容、宣伝方法、研究実態、開発コスト、企業の責務、政府に望む役割…など、多岐に渡る。主な回答は以下。機能性食品の売上高は、5億円未満が約半数、いわゆる健康食品を販売している企業は三分の二、次いで栄養機能食品が約半数、特定保健用食品(トクホ)は3割だった。
機能性食品の製造を委託している企業は約7割、自社で製造している企業は約4割。機能性素材または最終製品を製造・販売しているのはそれぞれ約4割だった。最終製品を販売している企業の販売方法は、通信販売と薬局・薬店ドラッグストアが5割前後、次いでスーパーなど一般食品店、インターネット販売、いわゆる健康食品専門店が続いた。
宣伝方法はインターネットが45%で最も多く、次いで健康雑誌、テレビ、一般新聞、業界新聞が約2割で続いた。売上高に占める広告費の割合は、5%以下がもっとも多く7割を占めた。
研究開発を実施する企業が製品化した機能性の分野は「お腹の調子」、「血糖値」、「免疫・アレルギー」がトップ3。今後開発したい分野としては「免疫・アレルギー関連」、「老化」、「脳・精神関連、「美容」が上位4位を占めた。新規素材を開発する際、重視する点については「安全性」「有効性」がそれぞれ6割強、「新規性」が3割強で続いた。
開発費用についてはヒト試験にかけた費用は「2000万円未満」が4割で、6割以上の企業が4000万円以内だった。一方で「1億円以上」と回答した企業も1割強あった。ヒト以外の試験では「2000万円未満」が6割を超えた。
政府が果たすべき役割は「消費者に対する情報提供、普及啓発」を挙げた企業が四分の三以上と群を抜き、政府への要望としては「新たな機能性表示の制度化の検討」が最も多く、「粗悪品の取締り」が35%で続いた。公的資金により推進すべきテーマとしては「有効性・安全性データベースの構築」が67%でトップだった。
機能性食品の10年後の市場規模については「拡大する」が8割近くに達し、その規模については「2倍」の回答が3割で最多だった。発展のために業界がすべきことについては、有効性と安全性についての「自主基準の作成」がそれぞれ6割強となり、以下「研究開発の促進」、「業界の連携・強化」、「業界の浄化」と続いた。
「わが国はトクホと栄養機能食品を2本柱とする保健機能食品を世界に先駆け制度化してきたが、今後一層高齢化が進展する中で最新の科学的知見に基づき、国民の健康ニーズに対応した製品づくりが求められる。そのためには食品と機能と健康に関するビジョンを再構築する必要がある。研究会での専門家のヒアリングとともに今回のアンケートの結果などを踏まえ、来春には国家的なプロジェクトの提案などひとつの形としてまとめたい」と研究会座長で名古屋文理大学健康生活学部フードビジネス科教授、フレスコ・ジャパン社長の清水俊雄氏は展望を語った。
食品機能と健康ビジョン研究会は、社福協が昨年9月、国民の健康保持増進に寄与する機能性食品関連産業が、国際的制度とのハーモナイゼーションと科学的根拠を基本としつつ、将来にわたり健全に拡大発展するために食品機能と健康に関するビジョンを再構築する必要があると考え、産・学・官が参加する会として設立され、これまでに活発に活動を進めている。メンバーには、健康と食品懇話会相談役の太田明一氏、同会長の木村毅氏、社福協理事の斎場仁氏、元厚労省の玉川淳氏などが名を連ねる。