ケンコーコム(株)(東京都港区、後藤玄利社長)とウェルネット(神奈川県横浜市、尾藤昌道社長)が医薬品のネット販売の権利確認請求、違憲・違法省令無効確認・取消を求めて提起した行政訴訟が2009年12月24日に東京地裁で行われた第四回口頭弁論をもって、結審した。判決は2010年3月30日に下される。
原告らはこの日、ドイツでの医薬品通信販売規制緩和の流れを記した準備書面などを提出した。ドイツでは1998年に現在の日本と同様の理由で全ての医薬品の通信販売が全面禁止された。ところが、2000年頃から職業選択の自由や規制の不合理性を理由に違憲判決が下されている。ドイツの事例を提示することで、原告側は今回の省令改正の不合理さを改めて浮き彫りにした。
弁論を終えたケンコーコム・後藤社長は「ドイツの事例は、(省令の改正問題等が議論された)検討会の直前に固まったもの。にもかかわらず、検討会ではドイツでは対面販売が必要、と誤って説明され、厚労省の誤った情報提供が行われた。議論を都合よく進めるための意図的なものすら感じる」と話した。原告訴訟代理人の阿部泰隆弁護士は、ドイツの事例は傍論、としながらも「海外での状況からみてもどうみたって違憲の判決を下さざる得ない」と力強く言い放った。
原告らはドイツの事例のほか、ケンコーコムがサイト上で展開する「ストップ・ザ厚労省」に寄せられた意見の一部も提出。「一般用医薬品がネット通販で買えなくなり困っている」「規制の意味が分からない」などの声を紹介し、改めて今回の改正省令を「改悪」と明言した。
同訴訟は、これまで問題なく行われてきた薬局・店舗による医薬品の郵便等販売について、それに起因する問題等が存在しないにもかかわらず、明確な理由のないままに一般用医薬品のインターネット販売そのものを禁止する規制は必要性も合理的根拠もなく、法律的にも明らかに行き過ぎで、営業の自由を保障した憲法に違反するものである、などとして、ケンコーコム、ウェルネットの2社が国を相手取って起こし、2009年7月14日に第一回口頭弁論が行われた。以降、計4度の口頭弁論が行われ、両者の主張、立証が尽くされたとしてこの日の結審となった。
ネットを主流とする通信販売の売上は、不況とは無関係に年々拡大。もはや特別なツールではなく、一般的なショッピング形態となりつつある。一方で、法整備が追いついていない、などの不備も指摘されている。そうした中で、国を相手取り、真っ向からネット販売がはらむ問題に踏み込んだ同訴訟の判決の行方は、今後のネット販売のあり方を占う意味でも注目される。