「第5回 健康食品の表示に関する検討会」が2010年2月19日、消費者庁で行われた。今回は、消費者相談の現状、景品表示法の運用実態などをテーマに分析リポートがなされ、消費者サイドや関連法規の側面から議論が交わされた。
(独)国民生活センター商品テスト部の宗林さおり氏は、同センターに寄せられる消費者の苦情相談情報が毎年約100万件にのぼり、その内の3割が商品に関するものと報告。食料品はその内のさらに7.7%でその半分以上が健康食品であるとのデータを公開した(2004年~2008年度合計)。
相談の詳細については、年代では60歳以上が約5割で契約購入金額は10万円以上が34.1%にのぼることなどを解説した。その上で、特徴的な相談事例として「糖尿病に効くという健康食品を飲み続けていたが、逆に血糖値が上がった」、「血圧が下がるとといわれ高麗人参を買ったが、血圧が上がった」などを示した。
宗林氏はさらに関与成分の表示量と、テストによる実際の含有量を比較したデータを公開し、概ね表示量の2割程度しか含有していないことなどを指摘した。そうしたことなどを踏まえ「あいまいな表記がなされていることで消費者が過剰に期待する結果が、健康食品への苦情の多さともいえる。そうした表記がなされないよう何らかの整備が必要」との見解を述べた。
(社)日本通信販売協会副会長の宮島和美氏は、同協会が開設する消費者相談「通販110番」における健康食品に関する相談の現状を報告。相談内容については、返品や交換についてものが多く、健康食品の表示に関する相談は少なめであると明かした。その理由について「メーカー、消費者センターなどへ問い合わせ、最後の最後に相談に来る事例が多いため」と解説した。
日本生活共同組合連合会組織推進本部安全政策推進室の鬼武一夫氏は、同連合会に寄せられる問い合わせなどから消費者意識を分析。暮らしに関する考え方の調査として、同組合員ではサプリメントは利用しない、と考える層が比較的多い傾向にあることなどを報告した。また、サプリメントは利用しない層にその理由を聞いたアンケート結果では「栄養は食事でとるようにする」「価格が高い」「安全性に不安がる」などが上位にあった。
消費者庁表示対策課長笠原宏氏は健康食品に関する景品表示法の運用について説明。改めて、同法の規制の枠組み、規制の特徴などについて解説し、健康食品で物議を醸した「合理的根拠」についても言及。「たとえデータに合理的根拠があっても表示に対し、合理的でなければ意味がない。企業の方にもそのあたりを気をつけて欲しい」と要望した。
今回の個別テーマの分析で昨年11月から5回にわたり行われてきた検討会は一区切り。次回第6回でこれまでの議論や報告データなどから論点整理へ向けた絞りこみの議論を行い、3月中旬の最終第7回で論点整理を行う。
この日の消費者サイドからの視点では、健康食品の位置付けのあいまいさが、消費者への過剰な期待を生み、結果的に健康被害をもたらす事例が報告された。もはや、この状況を放置できないことは明白といえる。前回第4回の海外の取り組みの分析レポートでは国内の健康商品を取り巻く環境の不全さが浮き彫りとなった。消費者にとって、表示は製品選別の重要な情報入手手段であり、最終的にどういった形で同検討会の論点整理がなされるのか、注目される。