保冷材専業大手のトライカンパニー(静岡県沼津市)は、おそらく国内では初となる保冷材(*)の内容物であるゲル状の吸水ポリマーをマテリアルリサイクル(以下MR)の手法で再商品化するという事業を本格的に立ち上げる。その第一弾が芳香剤で、リサイクル材料でありながら保冷材より付加価値の高い商品に“変身”させ、“再デビュー”させる。実際の商品は2010年5月から上市する予定。
市中で流通している保冷材の多くは、水を含ませた吸水ポリマーを軟包装で包んだワンウェイタイプがほとんど。使用後の保冷材の一部は家庭内の冷凍庫内にあるといわれているが、その多くは廃棄物として処分。しかし、消費者からメーカー側に、分別廃棄する場合、保冷材は生ゴミなのか、廃プラなのかといった、問い合わせがあるという。
行政側でも2007年に、東京都町田市が「保冷剤回収箱」を設置して保冷材の回収を実施、同社は保冷材メーカーとしてただ1社、保冷材回収の取り組みに参加した。しかし、汚れのひどいものが多く、MRには不向きということで、回収保冷材の再商品化には至らなかった。
実はこの年の3月、トライカンパニーは新本社工場の竣工、これに併せて国内では唯一となる成形された保冷材をフィルムとゲルに分別する装置システムを設置した。工場内で出る保冷材のNG品の分別廃棄やリサイクルに活用しているが、将来的には町田市のような行政回収への支援や、店頭回収といった独自ルートによる回収も検討していく。
また同社は08年に保冷材を再利用した芳香剤・消臭剤等の開発という経営革新計画が静岡県の承認を得たこともあって、保冷材の再商品化に向けたプロジェクトも加速させた。保冷材の成形は、水と粉末状の吸水ポリマーを別々に充填するので自動包装が可能だが、回収したゲル状のポリマー充填についても同社独自の工夫でクリアしたという。芳香剤の香りの成分もほぼ選定を終え、どの程度含浸させるかの段階まできている。ゲルを充填するフィルム袋も、協和商事(北海道小樽市)の特許品である特殊な製袋品(多孔フィルムとチャック袋との組合せ品)を採用。そのパッケージデザインについては、日本を代表するジオラマアーティスト、田村映二氏がデザインした。
保冷材の吸水ポリマーをMRするという再商品化事業そのものも国内初であると同時に、もともとの保冷材より付加価値が高い芳香剤に“変身”させて“再デビュー”させるというのは、MR手法ではこれまでにない画期的なことであることは間違いない。
(*「保冷剤」という表記が一般化しつつあるが、トライカンパニーでは「保冷材」としている)