ケンコーコム(株)(東京都港区、後藤玄利社長)とウェルネット(神奈川県横浜市、尾藤昌道社長)が、医薬品のネット販売の権利確認請求、違憲・違法省令無効確認・取消を求めて提起した行政訴訟の判決で、東京地裁は2010年3月30日、いずれの請求も棄却した。原告側は、判決を不服とし、控訴する方針。
「まさに結論ありきの判決。新しい業界の台頭を司法まで妨げるとは、いつからこういう日本になったんですか!」。判決後に行われた会見で、原告側の後藤社長は机を拳で叩きつけ、敗訴の怒りを爆発させた。
今回の訴訟において大きなポイントひとつに、「対面販売の有無」があった。その点において今回の判決文では「インターネットでは対面に比べ、購入者側の属性・状態等を的確に判断することにおいて相当の有意な差異があるといわざるえず、実効性に乏しい」との理由が盛り込まれた。これは、省令改正へ至る事前の検討会などで、ネット販売が規制される要因となった点だが、「法の番人たる」司法の場でも同様にそれに則っていたことで、後藤社長も思わず冷静さを失った。
原告代理人の関葉子弁護士は「意外な判決。経験上ある程度想定はできるものだが、あれだけ論破してこの結果とは…」と半ばあきれぎみに敗訴の判決の印象を語った。その上で「我々が主張した点に踏み込むことなく、これまでの国の主張に沿っただけの判決でガッカリしました。極めて不合理」と話し、今後も裁判を続けていく意志を明かした。
同訴訟は、“同社とウェルネットら原告側が、これまで問題なく行われてきた薬局・店舗による医薬品の郵便等販売について、それに起因した問題や事件が存在しないにもかかわらず、明確な理由なきままに一般用医薬品のインターネット「販売そのもの」を禁止するような規制は過度の規制であり、営業の自由にも違反するもの”などと主張し、提起。昨年5月25日の第一回口頭弁論からこれまでに4回にわたる口頭弁論を重ねてきた。
原告側、はあくまでインターネットによる医薬品の販売実現を目指す意思に代わりはなく「今日この場で再開できると思っていただけに残念。ただし、あくまで第一審が終わったに過ぎない。一刻も早く再開できるよう徹底して戦っていく」(後藤社長)と、決意も新たに控訴する方針を明らかにした。「悪法も法は法」と改正省令を遵守する同社およびウェルネットは、年間で計5億円超の営業損失を被っている。
なお、170ページ近い判決文には、付言として「将来において医薬品の副作用及び、情報通信技術等をめぐる本邦の状況に応じた規制内容の見直し(郵便等販売に関する経過措置の追加を含む。)が図られることが新薬事法の趣旨にも合致するものと解されるところであり、本件規制の憲法適合性(改正省令中の本件改正規定の合憲性)に関する上記の判断は、本件規制の内容を将来の状況の変化の有無にかかわらず恒久的に固定化されるべき規制措置として位置付ける趣旨のものではない」と記されている。