ファッションアパレル通販を展開しているスタイライフ (本社∥東京、 大証ヘラクレス上場) は、 中長期計画のなかで衣料に次ぐ第2の柱へと育成を目論む化粧品事業に関し、 前期 (2010年3月期) の売上高を大幅増とするなど着実な成長ステップで今期にいっそうの拡大を見込んでいる。
同社の前期連結決算における総売上高76億6500万円 (対前年比109・4%) のうち、 セグメント 「コスメ」 の売上高は10億9600万円 (同224%) だった。
ただ、 これは一足飛びで化粧品事業の基盤を得たい経営判断により、 08年8月に8億8000万円を投じて連結子会社化した化粧品通販会社ハイマックス (福岡県筑紫郡) が初めて通期業績に寄与したもの。 商号 「豆腐の盛田屋」 を運営するハイマックスの売上数字が連結対象として前期に反映したことから、 スタイライフの化粧品事業はかたちのうえで2倍超の急激な成長を果たした格好となっている。 期の後半からハイマックスの数字を計上した前々期 (09年3月期) におけるスタイライフの化粧品売上高は4億8900万円だった。
一方で、 連結化する以前の対比でハイマックス単体の業績推移を求めた場合、 「決算期変更があって算出しづらい」 (スタイライフ経営企画グループ) のが実状となっている。 概ねで、 子会社化する前のハイマックスは広告宣伝を抑えてアウトバンドコールを主体にした既存顧客の囲い込みに徹していたことから、 「新規顧客を積極的に獲らず、 売上高の増大よりも利益の確保を重視していたと掌握している」 (同) というもの。
これに対し、 スタイライフに傘下入りした後のハイマックスは、 衣料品の購入者に向けた同梱チラシや新聞折り込み広告を使って新規ユーザーの獲得を活性化した結果、 「2009年8月以降は顧客数が増加に転じた」 ことから、 前期のスタイライフの化粧品事業は 「純増」 として成長を果たしたと見てよさそうだ。
また、 2009年3月には東京の麻布十番に化粧品ブランド名を冠した飲食とコスメ提案の融合店 「SOYS CAFE by 豆腐の盛田屋」 をオープンし、 リアル店舗も取り込んだブランド認知戦略が奏功して 「顧客の増員、 売上増とも成果があった」 (同) という。
こうして実質的なM&A効果が見え始めた化粧品事業は、 ホップ・ステップという意味で 「今期からいっそう本格的に売上高を伸ばしていく」 という位置づけのもと、 少なくとも 「10%増をめざす」 (同) という方針を明らかにしている。
具体的な方策の第1弾として、 女優の紺野美沙子を起用したTVCMのオンエアで新しい新商品の拡販を進める。 放映は九州や西日本エリアから開始し、 費用対効果で分析を重ねながら都市部への拡大を検討していく。 さらに、 顧客の増員や受注件数の増加に対応するため、 基幹システムの強化など大規模な設備投資も検討している。
現在までのところ、 スタイライフの衣料品顧客へ化粧品を提案する政策が動いている一方で、 化粧品の愛用者へファッションを訴求する試みは行っていない。 これは両アイテムのコアユーザー間を年代の溝が隔てていることが理由で、 2010年3月時点で96万人だったスタイライフの顧客数の中心が20~30歳代であるのに対し、 総数を公表していない 「盛田屋」 の顧客は40~50歳代がコアで双方に10歳前後の世代格差がある。
近い将来にかけ、 Webサイトの稼働アップが影響して顧客年齢層が下がっている化粧品と、 反対に平均が上がっているというアパレルユーザーの年齢軸が合致した際、 同社はクロスセルの本格的な実施で“M&A第2章”といった形の展開を始める。
また、 同社は09年9月にKDDIなどと共同でファッションECサイト 「au one Brand Garden」 を開設して3000万人超という売り先を得た。 同サイトにおいても化粧品展開を将来的に視野に入れるなど、 先々に向けたプラス要因がある。
ただ一方で、 もともとスタイライフが踏み出した化粧品事業の第1歩として07年6月に買収したカサ デ ロミカ (09年6月にハイマックスが吸収) による化粧品卸は、 「その後も振るっていない」 (同) といい、 今後は卸よりもB to C事業をフル加速していく方針を示している。