韓国政府は、今春、製薬メーカーが生産する医療用医薬品のすべてに電子タグの貼付流通を義務化し、製薬、流通、使用、回収までの行程を一気通貫のシステムにすることを決定した。2010年末までに6000万個の医薬品に電子タグの貼付を実施し、2015年までに韓国内で流通するすべての医療用医薬品の50%の貼付達成を目指す。これは韓国政府が進める電子化政策の一助であり、その成果が注目される。
この決定は、政府の知識経済部、保健福祉部、教育科学技術部、食品医薬品安全庁から構成される危機管理対策会議で発表された「製薬プラスIT融合発展戦略」に基づいている。医薬品開発分野と生産分野にIT技術を用いることを念頭において実施される。
韓国ハンミ(韓美)薬品が2009年秋、世界で初めて自社医薬品に電子タグを実装した。生産と物流システムを構築し、市場における適正在庫の維持や返品率の減少等によって約106億ウォン以上の費用削減という大きな効果を得た。
韓国政府は、このハンミ薬品の有効事例を医薬品業界全体に拡大させることを目的として、開発、製薬、流通、生産部門でIT技術を活用した仕組みづくりを促進している。そのため電子タグの貼付方法や運用方法を規定する「医薬品標準コード標準および管理要領」および薬事法施行規則を改訂中。
製薬メーカー、卸販売業、薬局、医療機関で利用できるようにするため「製薬産業RFID共通標準ガイドライン」を作成した。医薬品ごとの電子タグの貼付位置や形態などの標準化を推進し、服用後の副作用などの安全性情報を迅速に確認できるよう、携帯型の電子タグリーダーを活用することにした。
生産部門では医薬品原料や資材段階から電子タグを実装し読み取ることで、情報共有、原材料の発注、供給の全工程を自動化できる。これによって電子タグリーダーで読み込んだ輸入や生産のデータ実績はERP(統合情報管理)システムに入力され、製薬会社は政府食品医薬品安全庁にオンラインで報告できるようになる。
流通部門では製薬会社と卸売業、薬局、医療機関の間のそれぞれの製品発注、納品、決済に電子タグを基本とする電子商取引モデルを導入する。このシステムでは卸売業、医療機関、薬局が電子タグリーダーで在庫を把握でき、製薬会社への発注や入荷後の受け入れ可否についても簡単に実施できる。また卸売業が持つ在庫品データを医療機関や薬局が同時に確認できるようシステム利用を促進するとしている。
医療機関に対しては、医薬品安全投薬システムと処方の自動システムの構築のための事業を支援する。薬局の保険請求ソフト、POS(販売時点管理)精算システム、電子タグデータの3つを連携させ、処方・販売業務を効率化するシステム作りを実現させる。
このシステムの供給は現在、LGグループのLS産電が主導的に行っているが、民間リース会社の設立による利用層の拡大を検討する。
米国カリフォルニア州で電子履歴管理(=Eペディグリー)が立法化された事例はあるが、これは規制のみであり、電子タグに限定した医薬品関連のトータル業務システムは世界で初めて。韓国政府は「流通透明性を確保し、業務効率の最大化が既定できる。2015年までに生産誘発の効果は9100億ウォン、付加価値額は4100億ウォンの規模になる」と予測している。