日清オイリオグループ(株)(社長:大込一男)は、CLA(共役リノール酸)による体重減少効果を日本人を対象とした試験で確認し、第57回日本栄養改善学会学術総会(2010年9月10日~12日 女子栄養大学坂戸キャンパス)で発表した。
CLAは、植物油に含まれる脂肪酸の一つであるリノール酸の一種で、乳製品などにも微量含まれる成分。脂肪の分解を活発にする働きがあると言われ、特に、欧米ではサプリメントや健康食品として広く利用されている。
これまでに同社は、従来の脂肪酸タイプのCLAよりも風味が改善された食用油タイプのCLAを開発するとともに、CLAの機能について、長年にわたり研究を続けている。また、CLAはサプリメントのみならず加工食品分野において機能性素材として提案している。
<発表内容>
【背景・概要】
肥満はメタボリックシンドロームに係わる重大な健康障害要因となっている。肥満の改善に対し、近年、CLAが注目されている。同研究では、BMI 23 kg/m2以上の過体重者や肥満者に対するCLA摂取の影響を検討した。
【方法】
・平均BMI 26.2 kg/m2の健常成人8名を対象に、二重盲検交差法にて21週間の比較検討
・普段の食事量より、エネルギー摂取量を約260 kcal減じる食事指導を行った上で、4名ずつ2つの試験群に割付け、8粒24 kcalのゼラチンカプセル(大豆・菜種調合油含有;LCT群およびCLA 1.8 g含有;CLA群)をそれぞれ7週間継続摂取、7週間のウオッシュアウト(試験食摂取や食事指導無し)の後、もう一方の試験食を7週間継続摂取
・一日の歩数および早朝空腹時の体重は、試験開始時と期間中、毎日測定、記録
・ 腹囲は、試験開始時、3、5、7週後の三日間、測定、記録
【結果】
LCT群では、体重、腹囲のいずれも経時変化に有意差を認められなかった(開始時→7週後、体重72.8 kg→72.9 kg、腹囲91.7 cm→91.3 cm)。一方、CLA群では、7週後の体重は試験開始時に比べて有意に低値を示し(開始時75.3 kg→7週後73.7 kg、p < 0.05)(図1)、腹囲は変化する傾向がみられた(開始時94.6 cm→7週後92.0 cm、p = 0.08)(図2)。なお、試験期間中の試験食摂取、食事指導の遵守、歩数に、試験群による有意差はなかった。
【考察】
この結果から、過体重または肥満の健常成人に対する、食事指導に伴うCLA摂取は、肥満の予防や改善に有効であり、また、海外の報告(CLA 3.4 g摂取)にみられるより低い摂取量で体重減少効果が認められる可能性が示された。
◇ 第57回日本栄養改善学会学術総会 発表概要
主催 特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
会期 9月10日(金)~12日(日)
会場 女子栄養大学 坂戸キャンパス
演題 「健常な過体重者、肥満者におけるCLA摂取の有用性」(発表番号:2-278)
発表日 9月11日(土)
発表者 日清オイリオグループ㈱ 野坂 直久
共同研究者 日清オイリオグループ㈱ 鈴木佳恵、佐藤明美、岩田敏夫、青山敏明、
お茶の水女子大学・生活環境教育研究センター 近藤和雄
「特定非営利活動法人 日本栄養改善学会」
日ごろの実践活動を中心とした研究成果を発表する場のみならず、栄養学、健康科学、食品科学等の最新情報を提供する学会として活動している。従来の栄養学は、動物実験や試験管内の研究が中心だったが、同学会の活動は人間を中心とした栄養学を重視する新分野となっている。いわゆる「学者」だけのための学会ではなく、1954年に東京YMCA講堂で第一回学術集会を開催して以来、実践活動を担う管理栄養士がその日ごろの業務の基盤となる科学を研究している。