井田両国堂の前期 (2009年11月期) は、 目的別や用途別、 季節やトレンドに合わせたテーマに基づいて商品群を構成する 「プロジェクト陳列」 などの提案力に磨きをかけ、 さらにBBクリームやつけまつ毛などヒット商品を着実に育成したことから、 売上高が前期比4・2%増の913億円となり、 期初に目標として掲げていた900億円を大きく上回った。 今上期 (09年12月~10年5月) も前年同期比で6・0%の増収と伸び率がさらに高まるなど好調をキープしている。
前期の業態別構成比は、 ドラッグストアが45%、 百貨店・専門店 (バラエティショップ等) が30%、 量販店が20%、 その他が5%となっており、 「新規出店や新業態開発など前向きな動きが業態を問わず見られたため、 1P程度の増減はあるものの構成比はさほど変わっていない」 (井田隆雄社長) という。
専門店では、 品揃えの多さが支持され前年をクリアしたほか、 百貨店では、 既存店がほぼ前年並みで推移するなか新規出店分がプラスオンしており、 また、 量販店でも 「美のガーデン」 (セブン&アイHD) や 「R. O. U」 (イオン) などビューティ特化型の新業態が相次いで開発されたことがプラス要因となった。
井田社長は、 今期のこれまでの状況を振り返り化粧品アイテムの動向について、 「今夏は猛暑が続いており、 外出頻度の低下からくるメイク関連の落ち込みが一部で見られるものの、 つけまつ毛が好調を維持し、 さらに簡便ニーズに対応した 『UVスプレー』 などのサンケア剤、 クールタイプの 『フェイシャルペーパー』 をはじめとする制汗剤関連が前年同期と比べ倍増以上の数値を示しており、 全般的には昨年よりもやや改善傾向が見られる」 と説明する。
実際に、 バラエティショップでクール商材を集積したプロジェクト陳列を提案したところ、 フェイシャルペーパーはもちろんのこと、 はじける泡が特徴のボディ関連のローションやジェルの売れ行きが好調だったという。
今年度は、 「売れる品揃え」 をテーマに、 営業マンの小売店への訪問頻度を増やす活動をより一層強化し、 「プロジェクト陳列」 の実施店を増やすことに取り組んでいる。
1件でも多く定番棚以外での 「プロジェクト陳列」 を仕掛けて 「ついで買い」 を誘うことができれば、 実施店の売上増に直結するのはもちろんのこと、 その後のMD提案の精度向上にもつながるためだ。
「実際、 つけまつ毛がヒットした時にその品揃えを厚くするだけでなく、 他の目周りアイテムも併せて提案したところ、 マスカラやアイライナーがよく売れた。 個別アイテムごとではなく、 トータルでソリューションとして提案することで買上点数増、 客単価アップにつながる」 (井田社長)
最近では、 多様化する消費者ニーズに対応するため品目数が増加傾向にあるが、 同社では15年前に取り決めた“ある基準”を遵守することにより、 商品の鮮度を高い水準で維持しつつ、 適正な在庫管理につなげている。
「約2万3000種の取扱品目のうち、 売上上位98%から漏れた下位2%の数千アイテムについては原則、 半年に一度見直ししている。 庫内作業は我々卸売業にとって次なる成長に向けた生命線なので、 各営業所内の倉庫には専任スタッフを配置し万全な体制を敷いている」 (井田社長)
中長期の経営ビジョンについては、 「化粧品以外を扱うことは全く考えておらず、 いかに化粧品の分野で唯一無二の品揃えを、 常に鮮度を高く保っていくかに尽きる」 (井田社長) としている。