ライオンは、オーラルケア研究の一環として、同社包装技術研究所と日本大学松戸歯学部歯科矯正学講座との共同研究において、製品開発で活用している力学解析シミュレーション技術を応用し、噛み合わせの力が小児の上顎骨に与える影響を解析した。その結果、「食物をすり潰すようによく噛むこと」は上顎骨の成長を促し、歯が生えるスペースを確保することとなり、叢生(そうせい、歯並びが整っていないこと)の予防につながることが示唆された。
近年の研究において、「噛むこと」は下顎の成長や歯並びなど、成長期の口腔の発育に影響を与えていることが明らかになってきている。しかし、上顎の発達と咀嚼の関連性については、今まで十分な研究がされていなかった。そこで今回は、歯ブラシの設計や包装材料の強度解析などにおいて、力が加わる様子を分かりやすく可視化する三次元の力学解析シミュレーションを活用して歯科学へ応用し、日本大学松戸歯学部歯科矯正学講座・葛西一貴教授、林亮助助手との共同研究により、小児における咬合力が上顎骨の成長に与える影響について解析した。
今回の研究では、小児の上顎骨に咬合力がどのような影響を与えるのかを明らかにするため、噛みごたえのある「硬性ガム」を試料として用い、奥歯(第一大臼歯)で咀嚼する力学解析シミュレーションを行った。
その結果、上顎の骨が接する鼻腔側壁及び上顎正中口蓋縫合部に、咀嚼によって加わる力が集中していることがわかった。また、「柔らかいものなどを上下に噛み潰す咀嚼パターン」と、「硬いものなどをすり潰すように噛む顎の横の動きが加わった咀嚼パターン」を比較すると、「すり潰すように噛む咀嚼パターン」の方が上顎正中口蓋縫合部により大きな力が加わることが示された。
すなわち、噛むときに鼻腔側壁や上顎正中口蓋縫合部に繰り返し力が加わることが示唆され、咬合力が上顎骨の成長点に力の負荷をかけることで、口蓋部や鼻腔底幅の成長や形成に関与している可能性が示された。またその効果は、「すり潰すように噛む咀嚼パターン」の方がより大きいこと、「食物をすり潰すようによく噛むこと」で上顎骨の成長を促し、上顎の口蓋部の面積が大きくなって歯が生え並ぶスペースが確保されるため、叢生の予防につながることが示唆された。
犬の体表および犬用トイレの細菌汚染実態調査
ライオン分析技術センターおよびライオン商事は、犬の体表および犬用トイレの細菌汚染実態について調査を行った結果、犬の足裏には犬のおしり周りや犬用トイレ表面と同程度の細菌が付着していることを明らかにした。
近年、ペットを家族の一員としてとらえ、室内で飼育するオーナーが増えており、2009年のペットフード協会の調査では、犬を飼っている世帯のうち室内で飼育している世帯は7割を越えていた。室内飼育では、ペットが人間の生活スペースを自由に歩きまわったり、ペットと人とのスキンシップが増えたりすることから、ペットを介して汚れや細菌などに接触することが懸念される。そこでこのほど、室内飼育犬の細菌汚染実態について調査を行った。
犬を飼育している5家庭において、6頭の犬の体表(肉球、お腹、おしり周り)および5つの犬用トイレ(トレイ内周、横漏れ箇所、トイレシーツ上)を対象に34箇所で拭き取り調査を実施した結果、100平方センチメートルあたりに付着していた細菌数は、犬の体表では数千~数千万個、犬用トイレ表面では数百~数千万個であり、犬の違いによる差は大きいものの、測定部位間では細菌数に大きな違いがなく、おしり周りやトイレ表面と同様の菌数が肉球やお腹にも付着していることを確認した。
次に、拭き取り調査で採取した細菌について菌の種類の確認を行った結果、犬の体表からはグラム陽性菌が15菌株、グラム陰性菌が8菌株検出され、うち11菌株がブドウ球菌科の細菌(ブドウ球菌属細菌11菌株)であり、一方、犬用トイレはグラム陽性菌が8菌株、グラム陰性菌が14菌株検出され、うち11菌株が腸内細菌科の細菌(大腸菌3菌株、Klebsiella属細菌3菌株など)であった。
今回検出された、ブドウ球菌科の細菌や腸内細菌科の細菌は、いずれも環境中からは頻繁に検出されるものであり、特に強い毒性のあるものではなかったものの、「ペットとスキンシップを取る場合には、衛生面の観点から洗浄や除菌など適切なケアをすることが望ましい」(同社)としている。