フラーレンの開発・販売を手掛けるビタミンC60バイオリサーチは、20110年6月9、10両日に開催された日本香粧品学会において、ポスター発表と口頭発表を行った。
9日のポスター発表では、二酸化チタンとフラーレンの併用効果について発表した。二酸化チタン(TiO2)は、一般的に有用な紫外線遮蔽剤として広く使用されているが、その一方で光触媒効果によって活性酸素を発生させる。すると細胞膜の酸化が進み、シワやシミの要因となる。そこで今回の研究では、ヒト皮膚角化細胞及び3次元ヒト皮膚組織モデルを用いて紫外線照射(UVA,UVB)を行い、細胞膜脂質の過酸化、細胞内活性酸素発生がフラーレンの投与によって抑制されるか検証した。
ヒト皮膚角化細胞における細胞膜脂質の過酸化は、DPPP法を用いた実験結果から、TiO2が紫外線による細胞膜脂質の過酸化を促進しており、同社製品RadicalSponge(RS)がその過酸化を有意に抑制していることを確認した。
同じく、細胞内活性酸素についてはNBT還元法を用いた実験結果から、推奨濃度(1~5%)よりも低い0・4%でも一定限の抑制効果があることが導き出された。また、3次元ヒト皮膚組織モデルを用いたNBT還元法の結果、紫外線照射によって酸化チタンが発生させた活性酸素をRSと姉妹製品LipoFullerene(LF)が抑制していることも確認した。
これらの検証結果から、フラーレンは、紫外線照射で増加した細胞内の活性酸素と細胞膜脂質の過酸化を抑制することが示された。そのため、日やけ止めなどのサンケア剤にフラーレンを配合することで、TiO2の弱点を補い、もともとフラーレンが保持している活性酸素消去能との併用効果で、紫外線防御機能を大幅に向上させる可能性が期待できるという。
学会では、シワに関する口頭発表も目立ち、シワが重要なカテゴリーになってくると予測できる。同社では、既にフラーレンの抗シワ効果のメカニズムまで解明済みで、2006年に学会が設定した抗シワ成分評価ガイドラインにのっとり、NEDO(新エネルギー・産業技術開発機構)の助成を受けて臨床試験を実施している。
試験ではシワが比較的浅いグレード2~3の成人女性23名に、1%のLF配合クリームとプラセボクリームをそれぞれ左右の半顔に塗布し、8週間の経過を観察した。
シワグレードが浅く、短期間で差を測ることは困難とされていたが、結果的に8週間後のシワの面積率はLFクリーム塗布面で減少した。学会で抗シワが注目されていることは、抗シワを訴求したフラーレンにとって朗報である。
「抗シワに関する臨床試験は当社が自信を持って発表できるデータで、説得力を持ってお伝えできる」(山名修一社長)
同社はサロン・エステ用化粧品メーカーがサロン技術者向けに開く勉強会などに研究員を派遣することにも対応しており、直接研究員が説明することで、参加者のフラーレンの機能に対する理解を深めている。