井田両国堂の前期(2010年11月期)は、目的別や用途別、季節やトレンドに合わせたテーマに基づいて商品群を構成する「プロジェクト陳列」などの提案力に磨きをかけ、さらにBBクリームやつけまつ毛などヒット商品を着実に育成したことから、売上高が前期比6・8%増の976億円となった。今上期は、震災の影響を受けながらも前年同期比で2・3%の増収を確保している。
今上期はクール商材やフェイシャルペーパー、UVスプレーなど夏物の売上げが非常に好調だったが、一方で外出機会の減少からメークアップ商材の動きが低調であったため、総括すると化粧品市場全体には逆風が吹いているとみている。このように先行きが不透明なため、化粧品市場が横ばい・微減で推移するなか着実に成長を遂げてきた同社でさえ下期・通期とも2%の増収と見込んでおり、「今年度中に大台の1000億円に到達できるかどうか」(井田隆雄社長)が現況だという。
前期の業態別構成比は、ドラッグストアが45%、百貨店・専門店(バラエティショップ等)が33%、量販店が18%、その他が4%となっており、「特に品揃えの充実ぶりから専門店さん(バラエティ業態)の売上げが伸びている。旬の商材を品切れさせないよう双方で努めたことも好結果につながっている。あとは業態にかかわらず消費者ニーズの変化に合わせ、従来型の売場展開からの脱却を進めている小売業さんが伸びている」(井田社長)という。
井田社長は、今上期の状況を振り返り化粧品アイテムの動向について、「UV関連では、スプレーがよく売れた。洗顔料では、お茶成分を配合した固形石けんの人気が高まっている。また節電意識の高まりから、クール商材やライトフレグランスも好調な売れ行きを示している」と語った。
今年度も、「店頭起点」をテーマに、「営業マンの小売店への『訪問頻度を増やす活動』の強化」と「トレンドを捉えた『ビューティソリューション販売』の強化」の2点に注力している。
「営業マンが月20回してきたことを30回に増やせば、その分だけソリューションの展開店舗が増え、売上げが上乗せされる。今売れている『UVスプレー』『お茶石鹸』『韓国コスメ』など旬な商材に周辺商材を絡めていくことを絶えず考えればソリューションは無限に広がる。このように市場環境が厳しい中で店頭活性化を図るには、いかに手数を多くし、いかにタイムリーにMD提案をしていくかに尽きるのではないか」(井田社長)
物流については、札幌営業所を札幌店に昇格、全国11店体制とし、拠点整備を完了。震災の影響を受けた仙台店もすでに完全復旧している。
国内化粧品市場は、少子高齢化が進展し、単価ダウン傾向が続くなど、決して先行きが明るいとは言えない状況だが、将来展望について井田社長は、「今後において店頭活性化を図るには、50代、60代以上の人々、すなわちシニアのマーケットに対応していくことが極めて重要だ。来年のドラッグストアショーから提案を開始できるよう現在準備を進めているが、この分野の開拓が成長のキーになってくる」と語った。
同社では今後、「エクセレントエイジング」という名称を用い、シニア対応の売場提案を推進していく。まだ概略が決まったばかりで「詳細は今後詰めていく」(井田社長)としているが、スキンケアや化粧用具などの品揃えを充実させつつ、メーク商材の比率を相対的に少なくするなど、50代、60代女性のニーズを最大限満たすような売場提案を想定している。